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自筆と公正証書、どちらの遺言にするか決める3つの基準

この記事の監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)

最終更新日:2026年8月16日 ※本記事は更新日現在の法令・実務に基づき内容を確認しています。

遺言を書いておこうと思い立って調べると、まず自筆証書遺言と公正証書遺言という2つが出てきます。

費用を見比べると、自分で書くほうが安く済みます。ただ、安いほうを選んで後から困る形が決まっているので、そこを先にお伝えします。

判断の基準は3つです。順番に説明します。

この記事のポイント

  • 相続人どうしの関係が良好で、分け方にも異論が出そうにないなら自筆でも実務は回ります
  • 財産が多い、疎遠な相続人がいる、長文を書くのがつらい場合は公正証書をおすすめします
  • 費用の差は数万円から十数万円。争いが起きたときの費用と手間と比べて判断してください

どちらが向いているかすぐに知りたい方は、まず無料相談でご状況をお伺いします。→ 無料相談の詳細を見る

結論:まず「その遺言が使われる場面」を想像する

遺言とは、自分の財産を誰にどう残すかを、法律の定める形式で書き残しておく書類です。書く方法は大きく2つあり、自分の手で書く自筆証書遺言と、公証役場で公証人に作ってもらう公正証書遺言があります。

遺言が読まれるのは、書いた本人がもういないときです。書き間違いがあっても直せませんし、意図を説明することもできません。

だから選ぶ基準は「作るのが楽かどうか」ではなく、「そのとき問題なく通るかどうか」になります。この視点で見ると、判断はかなりはっきりします。

「誰にどの財産を残すか」だけでなく、「特定の相続人には渡さない」という意思を書き残す場合にも、遺言は使われます。相続人以外に財産を渡したい場合や、特定の相続人の取り分を減らしたい場合ほど、あとで問題なく実現できる形を選ぶことが重要になります。

基準1:相続人どうしの関係はどうか

いちばん重い基準がこれです。

相続人の仲がよく、分け方にも異論が出そうにないなら、自筆でも実務は回ります。一方、疎遠な相続人がいる、前の結婚のお子さんがいる、特定の子に多く残したい。こうした事情があるときは公正証書をおすすめします。

自筆の遺言は、後から「本人の字ではない」「書かされたのではないか」と争われることがあります。公正証書は、公証人が本人の意思を直接確かめたうえで作り、原本が公証役場に残ります。争いになりにくい形です。

なお2025年10月1日から、公正証書の作成手続きがデジタル化されました。原本が電子データで作られ、条件が合えばウェブ会議を使って作ることもできます。公証役場へ足を運ぶのが難しい方には、選択肢が増えています。ただし、公証人が関与する点や証人2人が必要な点は変わりません。

「体調を崩してから急に書いた」「特定の相続人だけに有利な内容になっている」。こうした事情が重なると、自筆の遺言は無効を主張されるきっかけになりやすくなります。争いを避けたい事情があるほど、公正証書の価値が増します。

無効を主張されるリスクを避けたい場合は、遺言の内容そのものからご相談いただけます。→ 遺言・生前対策のページを見る

基準2:財産が多いか

財産が多いご家庭ほど、公正証書遺言をおすすめしています。理由は金額そのものではなく、争いになったとき・無効を主張されたときに関わる影響の大きさです。

財産が多いと、相続人ごとの取り分の差も大きくなりやすく、分け方への不満が出るきっかけも増えます。自筆の遺言が無効と判断されると、遺言はなかったものとして扱われ、相続人全員で財産の分け方を話し合う遺産分割協議からやり直すことになります。財産が多いほど、この手戻りにかかる時間と手間も大きくなります。

公正証書は、公証人が本人の意思を直接確かめたうえで作り、その記録が公証役場に残ります。実現させたい内容が確実に通ることの重みは、財産が多いご家庭ほど増します。

目安は、財産の額そのものより「争いになったら困る人がいるか」です。「無効になったら取り返しがつかない内容か」で考えると、判断がつきやすくなります。

基準3:ご本人が長い文章を書けるか

自筆証書遺言は、全文を自分の手で書く必要があります。パソコンで打った本文は無効です。財産の一覧部分だけはパソコンや通帳のコピーで作れますが、本文は手書きです。

手が震える、長時間机に向かうのがつらい。そういう状態で無理に書くと、読み取りにくい文字が争いの種になります。公正証書なら、口頭で伝えた内容を公証人がまとめます。

自筆証書遺言には、日付・氏名を自書し、押印することも必要です。「令和7年10月吉日」のような、日を特定できない書き方は無効になるとされています。書き上げたあとに、日付の書き方だけでも確認しておくと安心です。

どちらが向いているか 自筆証書遺言が向く人公正証書遺言が向く人 相続人の関係が良好 財産が少ない 長文を書ける 疎遠な相続人がいる 財産が多い 長文がつらい 迷ったら、それぞれの基準を確かめてください
自筆証書遺言と公正証書遺言、それぞれどんな人に向いているかをまとめた図

ここまでの3つの基準で判断がつかない場合は、財産や家族関係の状況をお伺いしながら整理できます。→ 相談の予約はこちら

費用の差はどれくらいか

自筆は、書くだけなら費用がかかりません。法務局に預ける制度を使う場合に手数料がかかります。

公正証書は、公証人へ支払う手数料が財産の額に応じてかかります。証人も2人必要です。

この証人でつまずく方がいます。財産を受け取る予定の方や、その配偶者・親子は証人になれません。気心の知れた家族に頼みたくなるところですが、そこを間違えると遺言そのものが無効になります。当事務所でお手伝いする場合は、こちらで証人を用意します。

比べる項目 自筆証書遺言 公正証書遺言
作成方法 全文を自分の手で書く(財産目録は例外) 公証人が聞き取って作成(2025年10月からウェブ会議も可)
証人 不要 2人必要(相続人・受遺者等は不可)
原本の保管 自分で保管、または法務局の保管制度を利用 公証役場に原本が残る
家庭裁判所の検認 原則必要(法務局保管制度を使えば不要) 不要
費用 当事務所のサポート70,000円(税込77,000円)〜。保管制度利用時は別途手数料 当事務所のサポート100,000円(税込110,000円)〜(証人2名分の費用を含む)+公証人手数料

当事務所の報酬は、自筆証書遺言のサポートが70,000円(税込77,000円)からです。公正証書遺言のサポートは100,000円(税込110,000円)からで、証人2名分の費用を含みます。公証人手数料は別途かかります。

数万円から十数万円の差、と考えていただくとおおむね合っています。この差を、争いが起きたときの費用と手間と比べて判断してください。

公証人手数料は、財産の価額に応じた基本手数料に、遺言の加算額などが加わって決まります。具体的な金額はご家庭ごとに異なるため、相談の際に概算をお出ししています。

司法書士報酬と公証人手数料の全体像は、料金ページでご確認いただけます。

迷ったときの目安

この3つの基準に加えて、費用をどこまでかけられるか、家族関係の複雑さをどこまで気にするかも判断材料になります。次の一覧で、大まかな目安を確認してください。

  • 相続人が配偶者と子だけで、分け方にも異論が出そうにない → 自筆でも実務は回る
  • 財産が多い、疎遠な相続人がいる、前の結婚のお子さんがいる → 公正証書
  • ご本人が長文を書くのがつらい、または外出が難しい → 公正証書(ウェブ会議での作成も検討)

よくある質問

Q. 自筆証書遺言を書いたあと、法務局に預けなくてもいいですか?

A. 預けなくても遺言としては有効です。ただし自宅で保管すると、紛失や書き換えの心配、家庭裁判所での検認の手間が残ります。法務局に預ける制度を使えば、これらの心配が減ります。

Q. 公正証書遺言を作るのに、証人が見つからない場合はどうすればいいですか?

A. 証人には推定相続人やその配偶者・直系血族はなれないという制限があります。適当な証人が見つからない場合は、公証役場や司法書士事務所で証人を手配してもらう方法があります。当事務所にご依頼いただく場合は、証人2名分の費用を含めて100,000円(税込110,000円)から承っています。公証人手数料は別途かかります。

Q. 一度作った公正証書遺言は、あとから書き直せますか?

A. 書き直せます。新しい遺言を作れば、内容が抵触する部分について前の遺言は撤回したものとして扱われます。

Q. ウェブ会議で公正証書遺言を作る場合、公証役場に一度も行かなくていいですか?

A. 条件を満たせば、公証役場に出向かずに作成できる場合があります。ただし利用できる条件や運用は公証役場によって異なるため、事前の確認をおすすめします。

Q. 遺言執行者は、家族以外にお願いすることもできますか?

A. できます。司法書士などの専門家を指定することも可能です。相続人どうしの関係が複雑な場合や、名義変更の手続きに不慣れな家族しかいない場合は、専門家を指定しておくと手続きがスムーズに進みます。

まとめ

  • 遺言は、書いた本人がいない場面で使われる。だから「作りやすさ」ではなく「そのとき通るかどうか」で選ぶ
  • 相続人の関係・財産の多さ・本人が長文を書けるかの3つが判断基準になる
  • 費用の差は数万円から十数万円。争いを防げる効果と比べて判断する
  • 2025年10月から公正証書の作成手続きがデジタル化され、ウェブ会議での作成も選択肢に加わった

迷ったら、まず何を誰に残したいかだけ書き出してみてください。それが決まっていれば、形式はあとから選べます。専門家に相談すれば、その場で自筆と公正証書のどちらが向いているかも含めて助言を受けられます。

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財産に不動産が含まれる場合は、遺言をもとにした名義変更(相続登記)も関わってきます。

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