この記事の監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)
最終更新日:2026年9月18日 ※本記事は更新日現在の法令・実務に基づき内容を確認しています。
任意後見契約を結んだあと、「効力が生じたら、毎月いくらかかるのか」と不安になっていませんか。
契約時に一度だけ支払う費用とは別に、任意後見が始まったあとは任意後見監督人への報酬を見込む必要があります。報酬は自動的な月額請求ではなく、監督人の申立てを受けた家庭裁判所が審判で決め、本人の財産から支払われます。大阪家庭裁判所が2025年に公表した資料では、月額換算1万円〜3万円が目安として示されています。決まり方と、誰が払うのか、法定後見との違いを順番に説明します。
この記事のポイント
- 任意後見監督人への報酬は、監督人の申立てを受けた家庭裁判所が個別に決め、本人の財産から支払われます
- 大阪家庭裁判所の2025年公表資料では、月額換算1万円〜3万円が目安ですが、松江家庭裁判所の金額を示すものではありません
- 任意後見人自身の報酬は契約で決めるもので、監督人への報酬とは別の仕組みです
契約時の費用と、効力発生後に見込む費用を分けて整理したい方はご相談ください。→ 無料相談の詳細を見る
1. 結論:契約時の費用とは別に、監督人報酬を見込む必要があります
この章でわかること 費用は契約時と効力発生後の2段階に分かれること
任意後見にかかる費用は、契約を結ぶときの費用と、効力が生じたあとに続く費用の、2段階に分かれます。契約時には、公正証書の作成費用や司法書士報酬がかかります。
効力が生じたあと、つまり判断力が下がって任意後見人が実際に動き始める段階では、任意後見監督人という第三者が家庭裁判所に選ばれます。監督人が報酬を受け取るには、家庭裁判所へ報酬付与を申し立て、審判を受ける必要があります。固定額が毎月自動的に引き落とされる仕組みではありませんが、監督が続く間の継続費用として見込んでおく必要があります。
金額を一律に示すことはできませんが、家庭裁判所が公表している資料から、目安をつかむことはできます。次の章から、順番に説明します。
おおまかなイメージとしては、契約時に司法書士報酬などで10万円台から、効力発生後は家庭裁判所の審判で決まる監督人報酬を別に見込む、という2段構えです。
こんな方は、この記事が参考になります
- ✓任意後見契約はすでに結んだが、効力発生後の費用がまだ分からない
- ✓「任意後見監督人」という言葉を最近知った
- ✓判断力が下がったあとの毎月の負担を、いまのうちに把握しておきたい
- ✓法定後見との費用の違いも知りたい
- ✓任意後見人自身の報酬と、監督人への報酬の違いが分からない
2. 任意後見監督人とは何か、なぜ必要なのか
この章でわかること 監督人は家庭裁判所が選び、任意後見人の事務を見守る役目を持つこと
任意後見契約を結ぶには、決まった方式があります。私文書ではなく、公証役場で作る公正証書によらなければならないと、法律で定められています。
任意後見契約に関する法律第3条
任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならない。
この公正証書を結んだだけでは、まだ効力が生じません。判断力が下がったときに、家庭裁判所が任意後見監督人を選んで初めて、任意後見人は代理人として動き始めます。
任意後見契約に関する法律第4条第1項(本文)
任意後見契約が登記されている場合において、精神上の障害により本人の事理を弁識する能力が不十分な状況にあるときは、
家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後見受任者の請求により、任意後見監督人を選任する。
契約の相手は、この時点では「任意後見受任者」と呼ばれます。任意後見監督人が選ばれて効力が生じると、呼び名が「任意後見人」に変わります。
任意後見監督人は、任意後見人が契約どおりに事務を行っているかを見守り、家庭裁判所に定期的に報告する役目を持ちます。本人に代わって財産を管理する任意後見人を、第三者の目でさらに見守る仕組みです。
任意後見監督人の主な職務は次の3つです。このほか、任意後見人と本人の利益が相反する行為について本人を代表する役目もあります(7条1項4号)。任意後見人の事務を監督すること、その内容を家庭裁判所に定期的に報告すること、急な事情があるときに任意後見人の代理権の範囲内で必要な対応をとることです。根拠は、任意後見契約に関する法律7条1項1号から3号です。
この監督の仕組みを支えているのが、次の章で説明する準用の規定です。判断力が下がった本人を守るための制度である以上、監督人の存在は任意後見契約の効力発生に欠かせません。
任意後見は、契約の相手を本人が自由に選べる分、選び方が適切だったかを、あとから確認できる仕組みが必要です。任意後見監督人は、その確認を担う役目です。
任意後見監督人選任の申立てには、申立書のほか、診断書や本人情報シートなどが必要です。具体的な必要書類と申立先は、裁判所の案内で確認してください。
契約を結ぶ前の段階で使われることが多い、見守り契約との関係は見守り契約とは何かを説明した記事で確認できます。
3. 監督人報酬はいくらか。誰が払うか、いつから発生するか
この章でわかること 報酬額の根拠になる条文、公表されている金額の目安、支払いの仕組み
任意後見監督人への報酬は、法律で金額そのものが決まっているわけではありません。根拠になるのは、次の準用の規定です。
任意後見契約に関する法律第7条第4項
民法第六百四十四条、第六百五十四条、第六百五十五条、第八百四十三条第四項、第八百四十四条、
第八百四十六条、第八百四十七条、第八百五十九条の二、第八百六十一条第二項及び第八百六十二条の規定は、
任意後見監督人について準用する。
この規定により、任意後見監督人の報酬は、民法862条の後見人の報酬に関する規定を読み替えて適用されます。862条の原文は次のとおりです。
民法第862条
家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる。
条文の「後見人」を「任意後見監督人」に、「被後見人」を「本人」に読み替えます。家庭裁判所が、任意後見監督人と本人の資力その他の事情によって、本人の財産の中から相当な報酬を任意後見監督人に与えることができる、という意味になります。金額の基準は法律に定めがなく、事案ごとに裁判官が判断します。
目安として、一部の家庭裁判所が「成年後見人等の報酬額のめやす」を公表しています。大阪家庭裁判所が2025年4月に公表した資料では、任意後見監督人にも次の目安が示されています。
| 本人の管理財産額 | 監督人の報酬の目安(月額) |
|---|---|
| 5,000万円以下 | 10,000円〜20,000円程度 |
| 5,000万円を超える場合 | 25,000円〜30,000円程度 |
参考:大阪家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」(2025年4月)
ここでいう財産管理額は、預貯金・有価証券などの流動資産の合計額です。土地や建物を含む財産全体の評価額を、そのまま表に当てはめるものではありません。
たとえば、本人の預貯金や有価証券の合計が2,000万円程度であれば、同資料では月額10,000円〜20,000円程度が目安です。5,000万円を超える場合は、月額25,000円〜30,000円程度とされています。
報酬額は表だけで機械的に決まるものではありません。同資料では、対象期間中の事務内容や、管理する財産の内容などを総合的に考慮して、裁判官が事案ごとに算定すると説明されています。特に労力を要する事務があった場合は、付加報酬が加わることもあります。
後見人等が複数の場合には報酬を分け合うことがあると同じ資料に示されており、監督人にも同じ考え方が及ぶと考えられます。
これは大阪家庭裁判所が公表した目安であり、松江家庭裁判所が同じ金額を採用すると決まっているわけではありません。実際の金額は、申立て後の個別の審判で決まります。
報酬は、本人自身の財産から支払われます。ご家族へ直接請求される仕組みではありません。任意後見監督人が選任される前、つまり契約を結んだだけの段階では、監督人報酬は生じません。
報酬を受け取るには、任意後見監督人が家庭裁判所へ報酬付与を申し立て、審判を受ける必要があります。この手続きを経ずに、本人の財産から報酬相当額を引き出すことはできません。審判では対象期間中の事務内容などが考慮されるため、将来の報酬額が最初から固定されるわけではありません。
申立てにかかる費用は、収入印紙800円分と、裁判所ごとに異なる郵便切手代です。申立人になるのは、任意後見監督人自身です。
4. 任意後見人自身の報酬は、別の仕組みで決まる
この章でわかること 任意後見人自身の報酬は契約で決めるもので、無報酬にもできること
任意後見人自身の報酬と、任意後見監督人への報酬は、決め方がまったく違います。任意後見監督人の報酬は家庭裁判所が決めますが、任意後見人自身の報酬は、契約を結ぶときに当事者どうしで決められます。
子など家族が任意後見人になる場合、無報酬とする契約も珍しくありません。一方、司法書士など専門職が任意後見人になる場合は、月額いくらという形で報酬を定めるのが一般的です。
| 任意後見人になる人 | 報酬の考え方 |
|---|---|
| 子など家族・親族 | 無報酬とする契約も多い |
| 司法書士など専門職 | 月額いくらという形で契約時に定めるのが一般的 |
任意後見人自身に報酬を支払う場合は、金額や計算方法を契約内容として明確にしておきます。あとから変更できるかは契約内容によって異なるため、当初の設計段階で想定される負担を確認しておくことが大切です。
つまり、効力が生じたあとに見込む負担は、次の2つに分かれます。
- 任意後見人自身の報酬(契約で決めた額。無報酬の場合もある)
- 任意後見監督人への報酬(監督人の申立てを受け、家庭裁判所が審判で決める額)
当事務所で契約時の設計・公正証書作成のサポートをお引き受けする場合の司法書士報酬は、110,000円(税込)〜です。この報酬は契約時に一度だけ発生するもので、効力発生後の監督人報酬とは支払うタイミングが異なります。あらかじめ分けて考えておくと、見通しが立てやすくなります。
契約時の費用も含めた全体像は料金のご案内で確認できます。
5. 本人の財産が少ないときの考え方
この章でわかること 財産が少なくても自動的に免除されるわけではないこと
「本人の財産が少なくなってきたら、監督人報酬は払わなくてよいのか」という疑問を持つ方もいます。
本人の財産が少ないことだけで、報酬が自動的に免除される制度ではありません。家庭裁判所は、対象期間中の監督事務の内容、本人の財産の内容などを総合的に考慮して、報酬を付与するか、いくらにするかを個別に判断します。
公表されている月額はあくまで目安であり、個別の審判結果を保証する金額ではありません。
財産の減少が心配な場合は、任意後見人自身の報酬、生活費や施設費なども含め、継続的な支出全体を確認する必要があります。
契約前に継続費用まで確認しておくことが大切です
任意後見人自身の報酬や生活費も含めて、効力発生後の支出を整理したい方はご相談ください。→ 任意後見の契約内容と継続費用を相談する
6. 法定後見と比べるとどう違うか
この章でわかること 始まり方・選ぶ人・取消権・費用の違い
後見にはもう一つ、法定後見という制度があります。任意後見と法定後見は、始まり方も費用の構造も異なります。
始まり方の違いは、判断力が下がる前に自分で決められるかどうかに直結します。法定後見は、判断力が下がったあとでなければ手続きを始められません。
後見人を選ぶ人が違う点にも注目してください。任意後見は本人が信頼する相手を指名できますが、法定後見では家庭裁判所の判断に委ねられます。
監督人が選ばれるかどうかも違います。任意後見では、監督人の選任が効力発生の条件そのものです。法定後見では、財産の内容や事案の複雑さによって、監督人を置くかどうかが個別に判断されます。
| 比べる点 | 任意後見 | 法定後見 |
|---|---|---|
| 始まり方 | 判断力があるうちに契約を結ぶ | 判断力が下がったあと家庭裁判所が審判する |
| 後見人を選ぶ人 | 本人が契約であらかじめ決める | 家庭裁判所が選ぶ |
| 監督人 | 家庭裁判所が任意後見監督人を選ぶ | 事案により成年後見監督人が選ばれることがある |
| 本人の不利な契約を取り消す権限 | 認められていない | 後見類型では認められる(民法9条。保佐・補助は範囲が異なる) |
| 効力発生後に見込む費用 | 監督人報酬+任意後見人自身の報酬(契約で決める) | 後見人等への報酬(家庭裁判所が決める) |
特に大きな違いは、任意後見人には、法定後見の後見人にある「取消権」が認められていない点です。訪問販売などで本人が不利な契約を結んでしまっても、任意後見人はその契約を代わりに取り消すことができません。先ほどの任意後見契約に関する法律7条4項が準用する条文の一覧に、取消権の根拠になる民法9条は含まれていません。
※成年後見制度は、令和8年法律第45号(2026年6月24日公布)で後見・保佐を補助に一元化するなど、任意後見を含む見直しが決まっています。2026年9月18日現在は施行前で、この記事は現行制度を説明しています。成年後見制度の見直しは、公布から2年6か月以内に政令で定める日に施行されます。
費用の面でも、法定後見の後見人報酬は、任意後見監督人と同じように家庭裁判所が決めます。大阪家庭裁判所の2025年公表資料では、成年後見人が通常の後見事務を行う場合の基本報酬は月額20,000円が目安です。管理財産額が1,000万円を超える場合は、別の目安が示されています。
任意後見の契約を結べる状態でないときは
任意後見契約は、契約の内容を理解できる判断力が本人にあることが前提です。すでに判断力が大きく下がっている場合は、任意後見契約を新しく結ぶことができません。
この場合は、法定後見を利用することになります。家庭裁判所が、本人の状態に応じて後見・保佐・補助のいずれかを判断し、後見人等を選びます。
「今は元気だが将来が心配」という段階であれば任意後見、「すでに判断力が下がっている」という段階であれば法定後見、という分かれ目になります。迷う場合は、早めに専門家へ相談し、まだ契約を結べる段階かどうかを確認することをおすすめします。
どちらの制度が向いているかは、判断力の状態や、誰に任せたいかによって変わります。生前対策全体の中でどちらを選ぶかを整理したい方は生前対策のご相談ページもご覧ください。
7. よくある質問
この章でわかること 監督人・金額の不服・法定後見への切り替えについての疑問
Q. 監督人報酬は、置かずに済ませられませんか
A. できません。任意後見監督人が選ばれた時点から効力が生じる仕組みのため、監督人を置かずに任意後見の効力を生じさせることはできません。選任以降の期間が報酬の対象になります(金額は家庭裁判所の審判で決まります)。監督人を置かずに済ませたい場合は、任意後見契約以外の方法を検討することになります。
Q. 監督人報酬はいつまで続きますか
A. 任意後見監督人が選任され、監督事務を行う期間について、報酬付与の審判が行われます。本人の死亡、契約の解除、任意後見人の解任、法定後見の開始などにより任意後見契約が終了する場合があります。終了時期や最後の報酬対象期間は、個別に確認が必要です。
Q. 任意後見監督人には誰が選ばれますか
A. 家庭裁判所が選びます。任意後見人の配偶者や近い親族は選ばれません(任意後見契約に関する法律5条)。具体的に誰が選ばれるかは事案によって異なるため、断定はできません。本人の財産の規模や、親族間の関係によっても、家庭裁判所の判断は変わります。
Q. 監督人報酬の金額に納得できないときはどうしますか
A. 任意後見監督人の報酬を定める審判について、即時抗告の規定はありません。家庭裁判所は提出された報告書や財産目録などを踏まえて判断します。公表資料の金額は目安であり、希望する金額を指定できるものではありません。
Q. 法定後見に切り替えれば、監督人報酬はなくなりますか
A. なくなるとは限りません。法定後見でも、事案によっては成年後見監督人が選ばれ、同じように報酬が発生することがあります。任意後見をやめて法定後見に一本化するかどうかは、本人の判断力の状態や財産の内容によって検討します。
8. まとめ
- 任意後見の費用は、契約時と効力発生後の2段階に分かれます
- 監督人が報酬を受け取るには、家庭裁判所へ申し立て、報酬付与の審判を受ける必要があります
- 大阪家庭裁判所の2025年公表資料では月額換算1万円〜3万円が目安ですが、松江家庭裁判所の金額を示すものではありません
- 任意後見人自身の報酬は契約で決めるもので、監督人への報酬とは別の仕組みです
- 法定後見でも、事案によっては同様の監督人報酬が発生することがあります
まずは、契約時の費用と、効力発生後に続く費用を分けて確認するところから始めてください。
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判断に迷ったときは
「任意後見を始めたあとの費用が整理できていない」という状態のままで構いません。契約時の費用と、効力発生後に見込む継続費用を分けて確認します。
相談だけで終わっても構いません。準備するものは、特にありません。契約書や通帳など、お手元にある資料があれば、より具体的なお話ができます。
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