この記事の監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)
最終更新日:2026年8月25日 ※本記事は更新日現在の法令・実務に基づき内容を確認しています。
配偶者や子どもがいない、頼れる親族が遠方にしかいない——そんな状況で、自分が亡くなったあとの手続きを誰がやってくれるのか、考えたことはありませんか。
葬儀の手配や入院費の精算、住まいの片づけといった「手続き」は、遺言があっても自動的には進みません。死後事務委任契約が何を解決してくれる契約なのか、頼めること・頼めないこと、費用の考え方まで説明します。
この記事のポイント
- 死後事務委任契約は、法律に定められた「制度」ではなく、民法の委任契約を根拠にした契約です
- 頼めるのは「亡くなったあとの手続き」だけです。「誰に財産を渡すか」を決めるのは遺言の役割です
- 費用は契約報酬・預託金・サポート報酬に分かれており、預託金の余りは相続財産に戻ります
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1. 結論:家族がやるはずのことを、代わりにやってもらう契約です
この章でわかること 遺言執行者がいても、葬儀や片づけは担当が空いたままになります
人が亡くなると、そのあと誰かが動かなければならないことが、次々と出てきます。病院や施設からの連絡を受ける。葬儀を手配する。入院費や施設の利用料を精算する。住まいを片づけて明け渡す。電気・ガス・水道や携帯電話を解約する。役所へ届出を出す。
これらは普通、家族がやります。家族がいない、遠方にしかいない、頼みづらい。そうした場合に、動く人がいないまま止まってしまいます。死後事務委任契約は、この「家族がやるはずのこと」を、あらかじめ決めておいた人に代わりにやってもらう契約です。
「遺言執行者がいれば足りるのでは?」と思ったら
遺言を書いて遺言執行者を決めておけば、その人が亡くなったあとに動いてくれます。では、それで足りるのでしょうか。足りません。遺言執行者の仕事は、遺言に書かれた内容を実現することに限られているからです。
民法第1012条第1項
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
条文にあるとおり、遺言執行者が動く範囲は「遺言の内容を実現するため」に必要なことです。そして、遺言に書いて法的な効力を持たせられる事柄は、法律で決められています。財産を誰に渡すか、遺言執行者を誰にするか、といった事柄です。
葬儀をどう手配するか、入院費を誰が払うか、住まいをいつ片づけるかは、そこに入っていません。そのため、遺言執行者を決めてあっても、この部分は空いたままになります。財産の行き先は遺言と遺言執行者が、亡くなったあとの手続きは死後事務委任契約の受任者が担当する。役割がそう分かれていると考えてください。
こんな方は、特に考えておく価値があります
- ✓配偶者や子どもがいない
- ✓子どもはいるが、遠方に住んでいて頼りづらい
- ✓疎遠になっている親族に、亡くなったあとの手続きで迷惑をかけたくない
- ✓葬儀や遺品の扱いについて、自分の希望どおりに進めてほしい
2. 死後事務委任契約とは——「制度」ではなく契約であること
この章でわかること 法律にある制度ではなく、民法の委任契約を使った契約です
死後事務委任契約という名前を聞くと、法律で定められた特別な制度のように思うかもしれません。しかし、そうではありません。死後事務委任契約は、法律にその名前が書かれた制度ではなく、民法の委任契約(第643条以下)を根拠にした、実務上の契約です。
民法第643条
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
この委任契約には、契約の当事者どちらかが亡くなると終了するという原則があります。
民法第653条第1号
委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一 委任者又は受任者の死亡
この原則どおりだと、契約した本人が亡くなった時点で、死後の事務を頼む契約も終わってしまうことになります。しかし、最高裁判所の判例は、この点について別の判断を示しています。
自分が亡くなったあとの事務まで含めて委任する契約は、本人が亡くなっても契約を終了させない合意を含んでいると解される、という判断です。
この判断により、死後事務委任契約は、当事者どうしの合意があれば有効に成立し、本人が亡くなったあとも効力を持ち続けると考えられています。
「死後事務委任契約」という名前の制度が別にあるわけではありません。委任契約の仕組みを使って、亡くなったあとの事務まで頼めるようにした契約だと理解しておくと分かりやすくなります。
もし、この契約も遺言もないまま、身寄りのない方が亡くなった場合はどうなるのでしょうか。埋葬・火葬について、法律は次のように定めています。
墓地、埋葬等に関する法律第9条第1項
死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。
つまり、葬儀や埋葬を担う人が誰もいなければ、最終的には亡くなった場所の市区町村が代わりに火葬・埋葬を行います。ただし、これはあくまで最低限の対応です。
葬儀の形式や納骨先について、自分の希望が反映されるわけではありません。財産の扱いも、家庭裁判所が選ぶ管理人が事務的に進めることになり、本人の意思とは関係なく手続きが進んでいきます。
誰に何を頼みたいか、自分の意思をあらかじめ形にしておかなければ、手続きは最低限のところで止まってしまいます。
元気なうちに死後事務委任契約を結んでおけば、誰に何を頼むか、費用はどこから出すかを、自分の意思で決めておくことができます。
「誰に何を頼めるのか」が分かれば、漠然とした不安を、具体的に備えられる形に変えていくことができます。次の章では、この契約で実際に頼める内容と、頼めない内容を分けて説明します。
3. 死後事務委任契約で頼めること・頼めないこと
この章でわかること 頼めるのは手続きだけ。財産の行き先は遺言で決めます
死後事務委任契約で頼める内容と、頼めない内容を分けて整理します。ここを混同したまま契約すると、あとで「思っていたことと違った」という食い違いが起きます。
頼めることの具体例
頼めるのは、亡くなったあとに発生する事務的な「手続き」です。本人がいなくなったあとに残される事務を、次のように分野ごとに整理しておくと、契約のときに何を頼むか決めやすくなります。
| 分野 | 依頼できる内容の例 |
|---|---|
| 医療・介護 | 入院費・施設利用料の精算、医療機関や施設への支払い |
| 葬儀・供養 | 葬儀・火葬の手配、菩提寺への連絡、納骨に関する手続き |
| 住まい・家財 | 家財・遺品の整理、賃貸住まいの解約・明け渡し |
| 行政・契約 | 電気・ガス・水道・携帯電話などの解約手続き |
| その他 | ペットの引取先の手配、パソコン・スマートフォンのデータ整理 |
どこまで頼めるかは契約の内容次第です。契約書に書いていない事務は、頼んだつもりでも実行してもらえません。「頼みたいこと」を思いつく限り洗い出し、契約書に具体的に書き込んでおくことが大切です。
たとえば、葬儀は近くの葬儀社で家族葬にしたい、家財は処分業者にまとめて頼みたい、身の回りの品だけ知人に渡したい、といった具体的な希望があるとします。
一つひとつの希望を契約書に書き込んでおけば、実際に亡くなったときも、その内容に沿って進めてもらえます。何も書いていなければ、受任者が本人の希望を推測して動くことはできません。
住まいについては、賃貸か持ち家かで切れ目の位置が変わります。賃貸なら、家財を片づけて部屋を明け渡すところまでが死後事務です。持ち家の場合、片づけまでは死後事務ですが、その先の名義変更や売却は相続人が行う相続の手続きになります。ここは分かれ目になりやすいので、契約の前に確認しておいてください。
頼めないこと
一方で、遺産を誰に渡すかを決めることは、死後事務委任契約には頼めません。不動産や預貯金といった財産を誰が受け取るかは、遺言でなければ法的に指定できません。死後事務委任契約だけを結んで満足してしまうと、財産の行き先が決まらないまま残ってしまいます。
そのため、死後事務委任契約を考える方には、あわせて遺言も書いておくことをおすすめしています。財産の行き先を決める遺言と、手続きを実行する死後事務委任契約。この2つがそろって、はじめて全体がつながります。自筆と公正証書のどちらを選ぶかで迷っている場合は、判断の基準を別の記事にまとめてあります。
「身寄りがない」と思っていても、戸籍をたどると血縁上の相続人が見つかることは珍しくありません。持ち家が残っていれば、その方が相続登記をすることになります。遠い親族に負担をかけたくないと考えるなら、なおさら遺言で行き先を決めておく意味があります。
頼めないことは、別の契約でカバーできます
死後事務委任契約1つでできないだけで、これらに備える方法がないわけではありません。当事務所では次のように組み合わせてご用意しています。
| この契約では頼めないこと | これで備えます |
|---|---|
| 存命中の財産管理・身の回りのこと | 見守り契約・財産管理委任契約 |
| 入院や施設入居のときの身元保証 | 身元保証サービス |
| 判断力が下がったあとの財産管理 | 任意後見契約 |
| 財産を誰に渡すか | 遺言(公正証書遺言など) |
これらは、まとめて当事務所にご相談いただけます。→ 終活支援のご案内を見る
4. 遺言・任意後見との役割分担
この章でわかること 生前・判断力低下後・死後で、効く契約が入れ替わります
死後事務委任契約は、遺言や任意後見契約と役割が違います。生前・判断力が低下したとき・亡くなったあと、それぞれの場面で分けて整理すると、次のようになります。
| 生前(元気なとき) | 判断力が低下したとき | 亡くなったあと | |
|---|---|---|---|
| 遺言 | 作成しておくだけで、生きている間は効力が生じません | 効力は生じません | 財産を誰に渡すかを法的に指定します |
| 任意後見契約 | 契約を結んでおきます(まだ効力は生じません) | 家庭裁判所が監督人を選任すると効力が生じ、財産管理や契約を代わりに行います | 本人の死亡で契約は終了します |
| 死後事務委任契約 | 契約を結んでおきます(まだ効力は生じません) | 効力は生じません(財産管理委任契約や見守り契約など、別の契約で備えます) | 葬儀・行政手続き・遺品整理などの「手続き」を実行します |
生前・判断力が低下した期間・亡くなったあと、それぞれの場面で頼れる契約が変わります。死後事務委任契約1つだけでは、判断力が低下した期間の生活は支えられません。
その期間を支えるのは、財産管理委任契約や任意後見契約です。3つの契約を組み合わせて初めて、生前から亡くなったあとまで、途切れなく備えることができます。
判断力が低下した期間の財産管理は、財産管理委任契約や見守り契約という別の契約でカバーします。これらは死後事務委任契約と同じく、民法の委任契約を根拠にした契約で、判断力があるうちから、通帳の管理や生活費の支払いを代わりに担ってもらう仕組みです。
死後事務委任契約とあわせて、同じ受任者に頼んでおくと、生前から亡くなったあとまで、担当者が変わらずに済みます。
組み合わせ方の全体像は、こちらのページでも案内しています。→ 生前対策について詳しく見る
5. 契約までの流れと、誰に頼めるか
この章でわかること 相談から契約まで5段階。専門職や法人も受任者になれます
相談に行くと何が起きるか
死後事務委任契約を考え始めても、最初の相談ですぐに契約を求められることは、通常ありません。今の状況と、亡くなったあとに何を頼みたいかを聞き取ってもらう場だと考えておくと、気持ちが楽になります。
持ち物も特に必要ありません。頼みたいことを思いつく範囲でメモしておくと、話がスムーズに進みます。費用は、契約する内容とプランが決まった段階で確定するのが一般的です。相談の時点で金額が決まるわけではないので、まずは話を聞いてみるところから始めても構いません。
岩田司法書士事務所では、初回60分のご相談を無料でお受けしています。何を頼めるか整理するところからお手伝いしますので、無料相談のご予約からお気軽にお声がけください。
契約までの流れ
死後事務委任契約は、次のような流れで結びます。特別な資格や条件はなく、判断力があれば誰でも始められます。
- 頼みたいことを洗い出す —— 葬儀の形式、納骨先、家財の扱いなど、亡くなったあとに希望することを具体的に書き出します。
- 受任者を決める —— 誰に頼むかを決めます。家族がいない場合は、専門職や法人に依頼することになります。
- 契約内容を整理し、公正証書で契約書を作成します。
- 必要に応じて、預託金を預けます。
- 本人が亡くなったあと、受任者が契約書に沿って事務を実行します。
契約書は公正証書で作成しておくのが安心です。本人の意思で契約したことが明確になり、受任者が金融機関や役所とやり取りする際にも、契約の内容をそのまま示せます。契約書を自分で書くこともできますが、財産の処分方法や、複数の事務を組み合わせる場合は、専門家に相談しながら作成すると、書き漏らしを防げます。
家族がいない場合、誰に頼めるか
受任者になれるのは、家族や友人に限りません。司法書士・行政書士・弁護士といった専門職や、法人が受任者になることもできます。身寄りがない方の場合、むしろ専門職や法人に頼むほうが、確実に実行してもらえる場合があります。
受任者を個人1人に決めてしまうと、その人が先に亡くなったり、引き受けられなくなったりしたときに、契約の実行者がいなくなってしまいます。法人を受任者にしておくと、担当者個人の生死にかかわらず契約が存続するため、このリスクを抑えられます。
複数の専門職が在籍する事務所に頼む場合も、担当者に何かあれば他の所属者が引き継げる体制かどうかを確認しておくと安心です。
もう一つの備え方が、予備の受任者を決めておくことです。契約書に「最初の受任者が事務を行えないときは、次の受任者が引き継ぐ」という条項を入れておけば、想定外の事態にも備えられます。
受任者の側からも、この契約はいつでも解除できるのが原則です。
民法第651条第1項
委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
受任者が廃業したり、事務所の方針が変わったりして、契約を続けられなくなる可能性は、法律上ゼロではありません。予備の受任者を決めておくことや、個人ではなく法人を受任者にしておくことは、こうした場合への備えにもなります。
6. 頼れる相談先——社会福祉協議会と専門家の違い
この章でわかること 社協も死後事務を行っています。違うのは使える人の条件です
身寄りがない方の相談先として、社会福祉協議会(社協)があります。松江市社会福祉協議会の「高齢者あんしんサポート事業」は、入院や施設入居のときの身元保証を中心に、見守りから亡くなったあとの葬儀・埋葬までを一つにまとめた事業です。
「社協は生きている間だけ、死後は専門職」ではありません。社協も死後事務を行っています。比べるなら、死後事務委任契約1本とではなく、当事務所の契約を組み合わせた形と並べるのが正しい見方です。
社協のパッケージと、当事務所の組み合わせを並べてみる
社協の事業は生前から死後までをひとまとめにした「パッケージ」です。当事務所の場合は、見守り契約・財産管理委任契約・任意後見契約・死後事務委任契約・身元保証サービスを組み合わせて、同じ範囲をつくります。
| 松江市社協 高齢者あんしんサポート事業 |
当事務所 (契約の組み合わせ) |
|
|---|---|---|
| 見守り | 月1回の電話と、半年に1回の訪問 | 見守り契約 |
| 入院・施設入居 のときの保証 |
預託金の範囲で、保証人に準じた支援。契約や医療説明のときの同席 | 身元保証サービス |
| 日々の財産管理 | 入院などで手続きできないときの預貯金の払戻しや、市役所手続きの代行 | 財産管理委任契約 |
| 判断力が 下がったあと |
サービスは続けられません。後見の申立ての手伝いを受けられます | 任意後見契約。同じ担当者のまま続けられます |
| 葬儀・埋葬 | 公正証書遺言と遺言執行者を決めておき、遺言執行者の要請により支援 | 死後事務委任契約 |
| 家財の整理・ 各種の解約 |
ページに記載はありません | 死後事務委任契約。契約書に書けば対応できます |
| 使える人 | 条件があります。松江市に住む65歳以上。身寄りがない方。生活保護を受けていない方。不動産収入がなく、住宅ローン以外の負債がない方 | 条件はありません |
| 費用 | 基本サービス 年間6,000円。あんしん1回1,200円。生活支援1時間1,200円。書類預かり1か月1,000円。ほかに預託金。別途、公正証書遺言の費用と遺言執行者への報酬 | 契約報酬・預託金・サポート報酬。詳しくは次の章 |
参考:松江市社会福祉協議会「高齢者あんしんサポート事業」(2026年8月時点)
いちばん大きな違いは「使える人の条件」
表の下から2番目をもう一度見てください。社協の事業には、はっきりした条件があります。次の4つを全部満たす必要があります。
- 松江市に住む65歳以上の方
- 身寄りがない方(親族がいない方)
- 生活保護を受けていない方
- 不動産収入がなく、住宅ローン以外の負債がない方
ここで多くの方が外れます。「子どもはいるが遠方で頼りづらい」という方は、親族がいるので対象になりません。64歳以下の方、安来市や出雲市にお住まいの方、アパートなどの不動産をお持ちの方も同じです。
条件に当てはまるなら、まず社協に相談してください。基本サービスが年間6,000円という利用料は、専門職に頼む場合とは比べものになりません。当事務所も、条件に当てはまる方には社協をご案内します。
当事務所の契約に条件はありません。だからこそ、社協の条件から外れた方の受け皿になります。
もう一つの違いは、判断力が下がったあと
社協の事業は、判断能力が低下した状態ではサービスを続けられません。その場合は後見の申立てを手伝ってもらう形になり、そこから先は家庭裁判所が選んだ後見人が担当します。誰が担当するかは、選んでみないと分かりません。
死後事務委任契約を任意後見契約とセットで結んでおくと、判断力が下がったあとも同じ相手が続けて担当できます。生前から亡くなったあとまで、担当者が代わらずに済むということです。
どのルートでも、公正証書遺言はどこかで作ることになります
社協の事業で死後事務の支援を受けるには、あらかじめ公正証書遺言を作り、遺言執行者と遺贈先を決めておく必要があります。社協はそのために専門職と連携し、遺言執行者を決める支援を行う形です。遺言執行者への報酬は、相続財産から支払われます。
つまり、年間6,000円の利用料だけで全部が済むわけではありません。公正証書遺言の作成費用と、遺言執行者への報酬は別にかかります。ここは社協に頼んでも専門職に頼んでも変わらない部分です。
社協の事業は、必要最低限を確実に押さえる設計になっています。見守り、入院時の支援、葬儀・埋葬。そこが要るという方には、費用を抑えられる良い選択肢です。
当事務所のような専門職は、頼める範囲を広く取れます。家財の整理や各種の解約、ペットの引取先の手配、パソコン・スマートフォンのデータ整理といった個別の希望まで契約書に書き込めます。見守り契約・財産管理委任契約・任意後見契約と組み合わせて、生前から亡くなったあとまで同じ担当者でつなぐこともできます。
どのルートを選んでも、公正証書遺言の作成にはどこかで専門職が関わります。それなら最初から1か所にまとめる、という選び方もあります。窓口が1つで済み、遺言と死後事務の引き継ぎもそのままつながります。
頼む前に確かめること
社協に問い合わせるときは、条件に当てはまるかどうかを最初に確認してください。当てはまらない場合も、他の制度を紹介してもらえます。
専門職や民間の身元保証サービス事業者に頼む場合は、預託金の管理方法を確認しておきましょう。他の資金と分けて管理しているかを確かめておくと、事業者の経営状況に左右されるリスクを減らせます。
司法書士・行政書士・弁護士といった専門職や、民間の身元保証サービス事業者も、死後事務委任契約の受任者になることができます。死後事務は司法書士の独占業務ではありません。誰に頼むかを選ぶときは、費用の内訳が明確か、預託金の管理方法が分かるか、契約書の内容を事前に確認できるかを見ておくと安心です。
遺言の作成と死後事務委任契約を、それぞれ別の相手に頼むこともできますが、同じ専門家にまとめて頼んでおくと、窓口が1つで済みます。財産の行き先を決める遺言執行と、亡くなったあとの手続きを担う死後事務が別々の担当者になると、実際に亡くなったときの連携がうまくいかないことがあります。
専門職に頼む場合も、報酬と預託金の内訳を書面でもらい、契約前に納得できるまで確認しておくことをおすすめします。
士業は、法律の知識をもとに契約書を作成し、必要であれば遺言や任意後見契約とあわせて設計できる点が強みです。民間の身元保証サービス事業者は、入院時の身元保証と死後事務をセットで提供している場合が多く、複数の心配ごとを一度に相談できることがあります。
どちらが向いているかは、頼みたい内容の範囲によって変わるため、両方の話を聞いたうえで決めても遅くはありません。
どちらを選ぶかで迷ったときの目安を整理すると、次のようになります。
- 社協が向く場合 —— 利用の条件に当てはまる場合。松江市に住む65歳以上で、親族がおらず、不動産収入も負債もない方。費用を抑えられます
- 専門職が向く場合 —— 条件から外れる場合。親族はいるが頼れない、64歳以下、松江市外にお住まい、不動産をお持ちといった場合です。葬儀の形式や家財の扱いまで細かく指定したい場合、任意後見とあわせて判断力が下がったあとも同じ体制で続けたい場合も、こちらになります
7. 費用の内訳と預託金の仕組み
この章でわかること 契約報酬・預託金・サポート報酬の3つに分かれます
死後事務委任契約の費用は、大きく3つに分かれます。契約を結ぶときにかかる契約報酬、実費や当面の費用にあてる預託金、そして亡くなったあとに事務を実行したときのサポート報酬です。
当事務所の料金(エンディングサポート)
下の表は、岩田司法書士事務所にご依頼いただく場合の料金です。相場の目安ではなく、当事務所の金額をそのまま載せています。
| スタンダードプラン | シンプルプラン | |
|---|---|---|
| 契約報酬(契約時) | 300,000円(税込330,000円) | 300,000円(税込330,000円) |
| 預託金(契約時・実費分を含む) | 400,000円(税込440,000円)+実費分 | 300,000円(税込330,000円)+実費分 |
| サポート報酬(死後に発生) | 400,000円(税込440,000円) | 300,000円(税込330,000円) |
公正証書で契約書を作成する場合は、別途、公証人手数料がかかります。2025年10月の手数料改定で、死後事務委任契約のように、亡くなったあとの事務を委任する契約には専用の手数料区分が新設されました。
受任者への報酬額を契約書に定めない場合は6,500円です。報酬額を定める場合は、その金額をもとに手数料が変わります。
参考:日本公証人連合会「2025年10月1日から公正証書の手数料が変わります」
実費は、かかった分だけ全額を負担します。預託金が余った場合は、相続財産に持ち戻されます。なお、ここでいう実費は死後事務にかかる費用で、相続人が行う相続登記の費用は別です。混ざりやすいところなので、分けて考えてください。
海洋散骨やペットの引取先の手配、パソコン・スマートフォンのデータ消去といった、個別の希望に対応するオプションも用意されています。海洋散骨手続きは50,000円(税込55,000円)から、ペット引渡手続きも50,000円(税込55,000円)からです。
アカウント削除手続きやデータ消去破棄は応相談です。基本のプランに含まれない希望がある場合は、契約前にオプションの範囲を確認しておくと安心です。
スタンダードプランとシンプルプランの違いは、預託金とサポート報酬の金額です。頼みたい事務の分量や、財産の状況によって、どちらが合っているかは変わります。契約の際に、実際の希望を伝えながら相談して決めることができます。
預託金の管理をめぐっては、トラブルが起きることもあります。契約前に、預託金がどのように管理されるか、余った場合にどう精算されるかを、書面で確認しておくことが大切です。
当事務所では、お預かりした預託金を事務所の資金と分けて管理しています。使った分は記録として残し、余った分は相続財産にお戻しします。
預託金の扱いや費用の内訳について、契約前にご確認いただけます。→ 相談を予約する
詳しい料金の内訳は、料金のご案内ともあわせてご確認ください。
8. よくある質問
この章でわかること 家族の有無、費用の支払い時期、途中解約について答えます
Q. 死後事務委任契約は、家族がいなくても結べますか?
A. はい。家族の有無にかかわらず、判断力があれば誰でも結ぶことができます。むしろ、身寄りがない方や、頼れる親族が遠方にしかいない方にとって、必要性の高い契約です。すでに家族と疎遠になっている方が、あらためて手続きを頼み直す必要もありません。
Q. 疎遠な親族に、相続の負担がいくことはありませんか?
A. 死後事務委任契約で手続きを済ませても、財産そのものは相続人へ引き継がれます。引き継ぎたくないと考える方は相続放棄を選ぶこともできますが、これには期限があります。親族に判断の時間を残す意味でも、遺言で財産の行き先をあらかじめ決めておくと、負担を小さくできます。
Q. 遺言があれば、死後事務委任契約は不要ですか?
A. いいえ。遺言は財産を誰に渡すかを決める書類で、葬儀の手配や行政手続きといった「手続き」までは指定できません。遺言だけを用意していても、実際に亡くなったときに、それを実行に移す人が別に必要です。両方を組み合わせておくことで、財産の行き先と、亡くなったあとの手続きの両方に備えられます。
Q. 費用はいつ支払うのですか?
A. 契約を結ぶときに、契約報酬と預託金をお支払いいただきます。サポート報酬は、亡くなったあとに事務を行ったときに発生します。預託金は実費にあてるお金なので、余った分は相続財産に戻ります。契約時にまとまった金額が必要になるため、早めに準備しておくと安心です。
Q. 社会福祉協議会に頼むのと、どう違いますか?
A. 松江市社協にも、亡くなったあとの葬儀・埋葬まで支援する事業があります。違うのは使える人の条件です。松江市に住む65歳以上で、親族がおらず、不動産収入も負債もない方が対象になります。
条件に当てはまるなら費用を抑えられるので、まず社協にご相談ください。条件から外れる方や、判断力が下がったあとも同じ体制で続けたい方は、専門職との契約が向きます。
Q. 契約したあと、途中でやめることはできますか?
A. 委任契約は、原則としてどちらからでも解除することができるとされています。ただし解約の時期や方法によって扱いが変わる場合があるため、契約前に条件を確認しておくと安心です。
Q. スマートフォンやパソコンのデータ、SNSのアカウントも頼めますか?
A. はい。契約書に書いておけば、パソコン・スマートフォンのデータ整理や、各種アカウントの解約手続きも依頼できます。写真や連絡先など、家族に見られたくないデータがある場合は、扱いの希望を具体的に伝えておくとよいでしょう。
9. まとめ
この章でわかること この記事の要点を5つにまとめています
- 死後事務委任契約は、法律に定められた制度ではなく、民法の委任契約を根拠にした実務上の契約
- 頼めるのは亡くなったあとの「手続き」。財産を誰に渡すかを決めるのは遺言の役割
- 判断力が低下した期間は、財産管理委任契約や任意後見契約で備える
- 費用は契約報酬・預託金・サポート報酬に分かれ、預託金の余りは相続財産に戻る
- 松江市社協にも死後事務まで支援する事業がある。条件に当てはまるなら、そちらのほうが費用を抑えられる
まずは、亡くなったあとに何を頼みたいかを、書き出すところから始めてください。
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判断に迷ったときは
死後事務委任契約を結ぶかどうか、今すぐ決めなくても構いません。
岩田司法書士事務所では、初回60分のご相談を無料でお受けしています。エンディングサポート(死後事務委任契約)は、契約報酬300,000円(税込330,000円)からご案内しています。
預託金は300,000円(税込330,000円)からです。詳しい内容は終活支援のご案内や料金のご案内とあわせて、ご相談の中でお伝えします。
松江市・安来市・出雲市・米子市を中心に、島根県・鳥取県全域に対応。オンライン相談で全国からのご依頼も承ります。
お電話:0852-28-0336(平日9:00〜18:00/土日も事前予約により対応可能)
参考にした公的資料
- e-Gov法令検索「民法」(第643条・第651条・第653条・第1012条)
- e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律」(第9条)
- 日本公証人連合会「2025年10月1日から公正証書の手数料が変わります」
- 松江市社会福祉協議会「高齢者あんしんサポート事業」



