この記事の監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)
最終更新日:2026年8月22日 ※本記事は更新日現在の法令・実務に基づき内容を確認しています。
終活を始めた方が、まず手に取るのがエンディングノートです。書店にも並んでいて、書きやすく作られています。
ここで気をつけたいのが、これを書いたことで「遺言も済ませた」と思ってしまうことです。
この記事のポイント
- エンディングノートは形式が自由なぶん、財産の分け方を書いても法的な効力は生じません
- ただし全文を自分の手で書き、日付と氏名、押印がそろえば、表題がノートでも遺言として扱われることがあります
- 財産の分け方は遺言書に、財産の在りかや葬儀の希望はエンディングノートに、と書き分けるのが確実です
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結論:エンディングノートに法的な力はない
エンディングノートは、決まった形式のない自由な書きものです。財産の分け方を書いても、そのとおりにする義務は誰にも生じません。
「自宅は長女に」と書いてあっても、相続人全員で話し合いをやり直すことになります。故人の希望として尊重はされますが、それ以上の効き目はありません。
一方、遺言書は形式が法律で決められています。そのかわり、書かれたとおりに財産を動かす力があります。
ただし、表題が「エンディングノート」でも遺言になることがある
ここは正確にお伝えしておきます。遺言かどうかを決めるのは、表紙に書かれた名前ではありません。
全文を自分の手で書き、日付を入れ、氏名を書いて押印する。この4つが整っていれば、そのページは自筆証書遺言として扱われる可能性があります。
ここで効いてくるのが「全文を自分の手で」という条件です。市販のエンディングノートの多くは、質問や項目があらかじめ印刷されていて、空欄を埋める形になっています。この形だと全文を自書したことにならず、遺言としては認められません。形式の不備で遺言が無効になる典型例は遺言が無効になる書き方とは? 自筆でやりがちな間違いにまとめています。
一方、何も印刷されていない白いページに、自分の字で最初から最後まで書いたのであれば話は別です。軽い気持ちで「自宅は長女に」と書いたつもりが、遺言として効いてしまうこともありえます。
手書きで財産の分け方を書くときは、遺言にするのかしないのかを意識してください。ご家族がノートを見つけたときも、その場で判断せず、いちど専門家に見せることをおすすめします。きちんと遺言として残したい場合は、自筆と公正証書、どちらの遺言にするか決める3つの基準を先に読んでおくと迷いが減ります。
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それでもエンディングノートには価値がある
力がないから不要、ということではありません。むしろ、遺言書には書けないことを引き受けてくれます。
遺言書に書けるのは、財産の分け方や身分に関することなど、法律で決められた事項に限られます。それ以外を書いても効力は生じません。
実際に残された家族が困るのは、多くの場合そこではありません。契約している保険がどこか。ネット銀行の口座はあるのか。加入している定期購読は。葬儀はどうしてほしいのか。こうした情報のほうが、直後の手続きでは切実です。
書き分けの目安
- 遺言書に書く — 不動産や預貯金を誰に渡すか、誰に手続きを任せるか。特定の相続人にだけ多く残す場合は、遺留分とは? 遺言があっても渡さざるをえない取り分もあわせて確認してください
- エンディングノートに書く — 財産の在りか、契約先の一覧、葬儀や連絡先の希望、伝えたい言葉
この2つがそろうと、残された方の負担がかなり減ります。どちらか一方では片手落ちになります。財産の分け方の希望に加えて、日々の見守りや生活の支援まで決めておきたい場合は、見守り契約とは? 財産管理委任契約・任意後見との違いも選択肢になります。
財産の一覧だけでも先に作ってください
遺言を書くかどうか決めかねているなら、まず財産の一覧だけ作るのをおすすめします。遺言作成サポートのページでは、当事務所がお手伝いできる範囲もご案内しています。
どこにどんな財産があるかが分かるだけで、残された方の手間は大きく変わります。分からないまま探すことになると、通帳や権利証を家じゅう探すところから始まります。
そして一覧ができると、遺言に書くべき内容も自然と見えてきます。遺言は一度書いたあとでも、何度でも書き直せます。詳しい手順は遺言は書き直せる。撤回と作り直しの正しい手順で説明していますので、まず書いてみることをためらう必要はありません。
まとめ
エンディングノートは伝えるための道具、遺言書は動かすための道具です。目的が違うので、両方あるのがいちばん強い形になります。
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