この記事の監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)
最終更新日:2026年8月18日 ※本記事は更新日現在の法令・実務に基づき内容を確認しています。
「長男には自宅を、二男には預金を多めに」——そう考えて遺言を書いても、思いどおりにならない部分があります。
それが遺留分です。特定の相続人には、遺言があっても最低限受け取れる取り分が法律で保障されています。
遺留分がいくらになるのか、どんな場合に問題になるのか、遺言を書くときにどう配慮すればよいかを、順番に説明します。
この記事のポイント
- 遺留分とは、特定の相続人に法律上保障された最低限の取り分です。兄弟姉妹にはありません
- 割合は財産全体の2分の1(直系尊属のみが相続人の場合は3分の1)に、各自の法定相続分を掛けて求めます
- 2019年の法改正で、遺留分は土地そのものではなく金銭で請求する仕組みに変わりました
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結論:遺留分とは、遺言があっても最低限受け取れる取り分
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に法律で保障された、最低限受け取れる遺産の取り分のことです(民法1042条)。
遺言に「長男にすべて相続させる」と書いても、他の子や配偶者がこの遺留分を主張すれば、その分だけは金銭で受け取る権利が残ります。特定の子に多く残したい場合、遺留分を無視した遺言は、あとで争いの火種になります。
遺留分がいくらになるかを知り、遺言の書き方であらかじめ配慮しておくことが、争いを避ける近道です。
遺留分があるのは誰か(兄弟姉妹にはない)
遺留分が認められるのは、配偶者・子(またはその代襲者)・直系尊属(父母や祖父母)です。兄弟姉妹には遺留分がありません。
ここは実務でよく誤解される点です。子どもがおらず、兄弟姉妹に財産が渡ることを避けたい場合、配偶者にすべて相続させる遺言を書けば、兄弟姉妹から遺留分を請求される心配はありません。
一方、特定の「子」に多く残したいケースでは事情が異なります。子は遺留分の対象になるため、他の子に配慮しない遺言は、その子から遺留分侵害額を請求される可能性が残ります。
遺留分の割合はどう決まるか
遺留分の割合は、2段階で決まります(民法1042条)。
まず全体の割合です。相続人が直系尊属のみの場合は財産全体の3分の1、それ以外の場合は2分の1になります。次に、この全体の割合に、各相続人の法定相続分を掛けて、その人個人の遺留分割合を求めます。
| 相続人の組み合わせ | 遺留分の全体割合 |
|---|---|
| 直系尊属のみが相続人の場合 | 財産全体の3分の1 |
| それ以外の場合(配偶者・子を含む場合など) | 財産全体の2分の1 |
具体例で確認します。相続人が子2人(長男・二男)だけで、遺言に「長男にすべて相続させる」と書いた場合を考えます。財産は4,000万円とします。
相続人に直系尊属は含まれないため、遺留分の全体割合は2分の1です。二男の法定相続分は、子2人で均等に分けるため2分の1になります。二男個人の遺留分割合は、2分の1に2分の1を掛けた4分の1です。財産4,000万円に4分の1を掛けると、二男の遺留分は1,000万円になります。
長男は残り3,000万円分を多く受け取れますが、二男から1,000万円分の請求を受ける可能性がある。これが、この遺言の実際の姿です。
特定の子にいくらまでなら多く残せるか、ご自身のケースで確認したい場合は、財産の内容をお伺いしながら試算できます。→ 相談を予約する
2019年の法改正で「お金の請求」に変わった
以前は、遺留分を侵害された相続人が「遺留分減殺請求」を行うと、贈与や遺贈を受けた財産そのもの(土地の共有持分など)を取り戻す仕組みでした。
2019年7月1日に施行された改正民法により、この制度は「遺留分侵害額請求」に変わりました。請求できるのは金銭に限られ、土地や自宅そのものを取り返される心配はなくなりました(民法1046条)。
長男が自宅の名義を保ったまま、二男へは金銭で遺留分相当額を支払う。この形で解決できるようになったのが、この改正の実務上の意味です。
まとまった金銭をすぐに用意できない場合もあります。裁判所に支払期限の猶予を申し立てる制度もありますが(民法1047条5項)、事前に金融資産の準備や生命保険の活用を検討しておくほうが、実際の負担は軽くなります。
遺留分侵害額請求には時効がある
遺留分侵害額請求権には期限があります。相続の開始と、遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことの両方を知った時から1年、相続開始の時から10年で消滅します(民法1048条)。
「知った時から1年」が実務上の勘所です。遺言の内容を知らされないまま何年も過ぎていた、という事情があれば、1年の期限はまだ進行していないことになります。
期限が過ぎれば請求はできなくなります。ただし、それまでの間は請求される可能性が残るため、遺言を書く側としては、期限が来るのを待つのではなく、最初から遺留分に配慮しておくほうが確実です。
遺言を書くときに遺留分へどう配慮するか
遺留分をゼロにすることはできません。ですが、争いになりにくい書き方はあります。
ひとつは付言事項です。書いたとおりに従わせる強制力はありませんが、なぜこの分け方にしたのかという理由を遺言の最後に書き添えることで、遺留分を受け取る側の納得感が変わります。
もうひとつは、元気なうちに事情を伝えておくことです。遺言の内容を生前に一切知らせず、亡くなってから初めて分かるという形は、感情的な対立を招きやすくなります。
生命保険を使う方法もあります。受取人を指定した生命保険金は、原則として遺留分を算定するための財産には含まれません。多く残したい子を受取人にしておくことで、遺留分に食い込まれにくい形で財産を厚めに渡せます。ただし保険料の負担や税務上の扱いによって結論が変わることがあります。当事務所には提携する専門家がいますので、税務や保険の設計が必要な場合も、当事務所が窓口となってまとめてお引き受けします。
なお判例は、生命保険金を受け取った相続人とそれ以外の相続人との間に著しい不公平が生じる場合には、特別受益に準じて持ち戻しの対象になると判断しています(最高裁平成16年10月29日第二小法廷決定)。保険金が財産全体に占める割合が大きいときは、この点も踏まえて設計します。
公正証書遺言で付言事項を残す場合、当事務所が窓口となり、松江公証役場(松江市母衣町)での手続きを進めることができます。
当事務所での遺言作成サポートは、公正証書遺言が100,000円(税込110,000円)からです。証人2名分の費用を含みます。自筆証書遺言は70,000円(税込77,000円)からで、公証人手数料は別途かかります。
特定の子に多く残す内容ほど、付言事項の書き方や資料の準備に手間がかかるため、早めのご相談をおすすめします。
| 形式 | 当事務所のサポート費用 |
|---|---|
| 自筆証書遺言 | 70,000円(税込77,000円)〜 |
| 公正証書遺言 | 100,000円(税込110,000円)〜(公証人手数料は別途) |
遺留分をめぐって実際に相手と交渉したり、裁判で争ったりすることは、弁護士の業務範囲です。当事務所がお手伝いできるのは、争いになる前の段階で、遺留分に配慮した遺言を設計することです。すでに対立が生じている場合は、提携する弁護士をご紹介します。ご相談の窓口は当事務所のままで構いません。
よくある質問
Q. 兄弟姉妹に遺言内容を伝えたくないのですが、遺留分の心配は本当にありませんか?
A. 兄弟姉妹やその代襲者である甥・姪には、遺留分が認められていません。特定の相続人にすべて相続させる遺言があれば、法律上、兄弟姉妹から遺留分を請求される場面自体が生じません。ただし遺言そのものの有効性が争われないよう、形式には注意が必要です。
Q. 生前に贈与した財産も、遺留分の計算に入りますか?
A. 相続人への生前贈与のうち、婚姻や生計の資本として受けたものは、原則として相続開始前10年以内のものが遺留分算定の対象に含まれます。相続人以外への贈与は、原則として相続開始前1年以内のものが対象です(民法1044条)。
Q. 遺留分を請求されたら、一括で支払わなければなりませんか?
A. 金銭での支払いが原則ですが、すぐに用意できない事情がある場合、裁判所に支払期限の猶予を申し立てることができます(民法1047条5項)。あらかじめ金融資産や生命保険で準備しておくと、実際の負担は軽くなります。
Q. 遺留分でもめそうな場合、司法書士に相談できますか?
A. 争いになる前の段階で、遺留分に配慮した遺言の設計や付言事項の書き方についてはご相談いただけます。すでに相手方との交渉や裁判での代理が必要な段階になっている場合、その代理は弁護士の業務になりますので、提携する弁護士をご紹介します。
Q. 生命保険は遺留分対策になりますか?
A. 受取人を指定した生命保険金は、原則として遺留分を算定するための財産には含まれません。多く残したい相続人を受取人にしておく方法がありますが、財産全体に占める保険金の割合が極端に大きい場合は、例外的に遺留分の対象と扱われることがあります。税務の取り扱いもあわせて確認が必要になりますので、提携する専門家とともに当事務所がお受けします。
まとめ
- 遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に保障された最低限の取り分(民法1042条)
- 割合は財産全体の2分の1(直系尊属のみの場合は3分の1)に、各自の法定相続分を掛けて求める
- 2019年の法改正で、遺留分は金銭で請求する「遺留分侵害額請求」に一本化された(民法1046条)
- 請求できる期限は、知った時から1年、相続開始から10年(民法1048条)
- 特定の子に多く残したい場合は、付言事項・生前の話し合い・生命保険の活用などであらかじめ配慮しておくと、争いを避けやすい
遺留分を無視した遺言も、法律上は有効です。ただ、残された家族が金銭のやり取りで対立する形は、できれば避けたいところです。
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