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親の通帳を家族が管理するとき、あとで困らない記録の残し方【司法書士が解説】

親の通帳を家族が管理するときの記録方法を解説する記事のアイキャッチ

この記事の監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)

最終更新日:2026年9月21日 ※本記事は更新日現在の法令・実務に基づき内容を確認しています。

親が足腰を悪くして銀行へ行けなくなり、子どもが代わりに通帳を管理し始める。そんな場面は珍しくありません。

契約書を作らないまま始めることも多く、本人の依頼に基づく管理が直ちに違法になるわけではありません。ただし、金融機関の手続きを確認せず、記録も残さないまま続けると、相続が始まったときに、ほかの相続人から使い込みを疑われることがあります。

法的な位置づけから記録の残し方、契約書を作る選択肢まで、順番に説明します。

この記事のポイント

  • 本人の依頼に基づく管理でも、金融機関所定の代理人手続を先に確認します
  • 記録を残していないと、相続が始まったときに使い込みを疑われることがあります
  • いつ・いくら・何に使ったかを書き留め、レシートを残すことが重要な備えです

記録の付け方や金融機関への届け出で迷っている方、すでに使い込みを疑われて困っている方は、無料相談をご利用いただけます。→ 無料相談の詳細を見る

相続人どうしの争いになっている場合は、当事務所が窓口となり、提携する弁護士をご紹介します。

1. 結論:契約書がなくても管理はできる。家族を守るのは記録です

この章でわかること 契約書がなくても管理はできるが、記録がないとあとで疑われること

本人の依頼に基づいて家族が通帳を管理することが、直ちに違法になるわけではありません。ただし、本人名義のキャッシュカードや暗証番号の取り扱いは、金融機関の規定に従う必要があります。

銀行や口座の種類によって、代理人届、代理人カード、委任状など必要な手続きが異なります。本人のカードを家族がそのまま使うのではなく、取引先の金融機関に事前に確認してください。

ただし、あとになって困る場面があります。親が亡くなり相続が始まったとき、ほかの相続人から、その引き出しの使いみちを聞かれることがあります。

記録が残っていなければ、実際に何に使ったかを、あとから証明する手立てがなくなります。

「家族の仲がよいから大丈夫」と思っていても、記録がなければ、その安心を証明する手立てがないのは同じです。仲がよいときほど、記録を残す手間を惜しんでしまいがちです。

親が足腰を悪くしても、判断力そのものは十分に保たれている。そういう時期は、誰の身にも訪れます。

この時期は、契約書を交わすかどうかを冷静に検討できる、数少ない期間でもあります。判断力が下がってからでは、あとで説明する財産管理委任契約も結べなくなるためです。

この記事で説明するのは、財産管理委任契約そのものの仕組みではありません。契約の有無にかかわらず、家族が親の通帳を管理するときに、実務として守っておきたい点に絞って説明します。

財産管理委任契約の仕組みは、見守り契約とは? 財産管理委任契約・任意後見との違いで説明しています。あわせてご覧ください。

2. 契約書を作らずに親の通帳を管理する場合の法的な位置づけ

この章でわかること 口約束の管理も、法律上は委任に近い関係とみなせること

親から通帳を預かり、必要なときに支払いをしてほしいと頼まれ、子どもが引き受ける。このような家族間の依頼に特別な資格が必要になるわけではありません。一方、預金の引き出しには、金融機関所定の代理人手続が必要になる場合があります。

法律上、この関係に最も近いのは委任です。民法は、委任を次のように定義しています。

民法第643条
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

参考:e-Gov法令検索「民法」第643条

家族による通帳管理には、法律行為を頼む委任と、事実上の事務を頼む準委任の要素が含まれることがあります。どちらに当たるかは、頼まれた内容や実際の管理方法によって異なります。準委任には、委任の規定が準用されます(民法656条)。

似た言葉に「使者」があります。使者は、本人が決めた内容をそのまま伝えるだけの役割で、自分の判断は入りません。

一方、通帳の管理を任され、いつ・いくら引き出すかを自分で判断している場合は、使者ではなく委任に近い関係です。日常的に判断をともなう管理をしているなら、委任の考え方で整理しておくほうが安全です。

委任に近い関係だからこそ、受け取った権限には、それに見合った責任も伴います。

委任の関係にある人は、頼んだ人(委任者)に対して、受け取った金銭や物を引き渡す義務を負います(民法646条1項)。通帳を預かって管理する場合も、この考え方があてはまります。

委任には、頼まれた範囲を超えて判断してはいけないという原則もあります。生活費の引き出しを頼まれただけなのに、大きな金額を動かす場合は、あらかじめ確認を取っておくほうが安全です。

ここまでは法律の建前です。実際の暮らしでは、この義務を果たしていることを、どう示すかが問題になります。次の章で、記録を残す具体的な方法を説明します。

3. 記録を残すべき理由と、疑われた場合に起こりうること

この章でわかること 記録がないと、相続開始後に使い込みを疑われることがあること

こんな方は、特に記録を残す価値があります

  • 相続人が自分のほかにもいる
  • 兄弟姉妹と離れて暮らしていて、日ごろの連絡が少ない
  • 親の生活費以外に、まとまった金額を引き出す予定がある
  • 過去に相続や財産のことで家族間の意見が分かれたことがある

何を記録すればよいか迷う方のために、代表的な項目を表にまとめました。

記録する項目 記載例 残しておく理由
引き出した日付 2026年9月2日 いつの出金かを、あとで特定できるようにするため
引き出した金額 50,000円 金額の食い違いが起きないようにするため
使いみち 介護施設の利用料の支払い 親のために使ったことを示すため
領収書・レシート 施設からの請求書の控え 金額と使いみちを裏づける証拠にするため
残高の確認 通帳記帳の写し 引き出し以外の入出金も含めて全体を把握するため

すべてをそろえる必要はありません。日付・金額・使いみちの3点だけでも、書き留めておく値打ちがあります。

委任の関係にある人には、頼んだ人から求められれば、いつでも事務の状況を報告する義務があります。委任が終わったあとは、すぐに経過と結果を報告する義務もあります。

民法第645条
受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。

参考:e-Gov法令検索「民法」第645条

親が亡くなると、委任は原則として終了します(民法653条1号)。その後は、管理していた財産の引き渡しや精算、管理状況の説明が問題になることがあります。

記録がなくても説明自体はできますが、生活費や医療費に使ったことを裏づけにくくなり、相続人の納得を得られないことがあります。

日付・金額・使いみちと資料がそろっているほど、管理状況を説明しやすくなります。

使い込みを疑う相続人も、最初から悪意を持っているとは限りません。財産の全体像が見えないまま、金額の大きさだけが目につくと、不安から疑いに変わることがあります。

疑いは、悪意ではなく情報不足から生まれることもあります。記録を先に示せる状態にしておけば、疑念が生じにくくなります。

記録がないまま相続が始まり、疑いが解消しない場合、話し合いが平行線をたどることがあります。全員の合意があれば遺産分割の話し合いや調停の中で整理できることもありますが、生前の無断引き出しは、原則として遺産分割とは別の民事手続で解決を求める問題です。

本人の了承なく引き出したお金について返還を求める場合、法的な根拠のひとつとなるのが、不当利得の規定です。

民法第703条
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

参考:e-Gov法令検索「民法」第703条

親の了承なく、管理していた子ども自身のために使われたと認められる場合、この規定にもとづいて返還を求められる可能性があります。

大切なのは、悪気がなくても、記録がなければ親のために使ったことを示せない点です。使い込みの意図がなくても、証明できなければ疑いは晴れません。

どの手続を選ぶかは、引き出しの時期、本人の了承の有無、相続人全員の合意の有無などで異なります。相続人どうしで争いになっている場合は、弁護士への相談が必要です。

  1. 家族間の話し合い:まず相続人どうしで、使いみちと資料を確認します。
  2. 合意がある場合:相続人全員が同意すれば、遺産分割の話し合いや調停の中で整理できることがあります。
  3. 争いが残る場合:生前の無断引き出しは、原則として返還請求などの民事手続で解決を求めます。

ここまでの流れを避けるための選択肢が、次の章で説明する、財産管理委任契約という形で契約書を作っておく方法です。

記録が心配な方は、通帳履歴、領収書、請求書などの客観的な資料を基に、分かる範囲から整理できます。分からない項目は推測で埋めず、「不明」と記録してください。

今の状況を整理できていない段階でもご相談いただけます。→ 今の状況を相談する

4. きちんと契約書を作る場合:財産管理委任契約のメリット

この章でわかること 契約書があると、任せる範囲と報告のルールをあらかじめ決められること

財産管理委任契約は、法律に名前のある制度ではありません。民法の委任(643条以下)を土台にした、当事者どうしの契約です。

口約束で管理する場合との違いは、内容を最初に書面で決めておける点です。

  • 何を任せるか(引き出し・支払い・不動産の管理など、範囲を一つずつ決められます)
  • 誰に、どのくらいの頻度で報告するか(本人の同意を得て、本人が指定した家族へ共有する形にできます)
  • 領収書や記録の保管方法(あらかじめ決めておけば、あとで揉めにくくなります)

民法上の委任でも報告義務はありますが、内容は請求があったときに応じる受け身の形です。契約書にしておけば、請求がなくても定期的に報告する仕組みを、先に作っておけます。

契約書は当事者どうしで作ることもできますが、公正証書にすると原本が公証役場に保管されるため、作成後に内容を書き換えたと疑われにくくなります。

公正証書があっても、それだけで金融機関の代理人手続ができるとは限りません。金融機関所定の届出や書類が別途必要になる場合があるため、よく使う窓口へ事前に確認してください。

費用は個別のお見積りになります。詳しい仕組みは見守り契約とは? 財産管理委任契約・任意後見との違いで説明しています。

ご家族の状況に合わせてどこまで契約書に盛り込むかは、生前対策のご相談ページからご相談いただけます。

5. 判断力が下がったら:成年後見制度との違い

この章でわかること 財産管理委任契約と成年後見制度は、判断力の状態で使い分けが変わること

ここまでの話は、親の判断力がまだ十分にあることを前提にしています。判断力が下がった場合は、扱いが変わります。

財産管理委任契約も、口約束の管理も、頼む本人に契約の内容を理解できる判断力があることが前提です。判断力が下がったあとに新しく結ぶことは、難しくなります。

判断力が不十分になった本人を支援する制度が、成年後見制度です。現在の法定後見には後見・保佐・補助の3類型があり、本人の判断力の程度に応じて家庭裁判所が支援者を選びます。

成年後見制度は、判断力が下がった本人を保護するための仕組みです。いったん始まると、本人の判断力が回復しない限り、途中でやめることは原則としてできません。

※成年後見制度は、令和8年法律第45号(2026年6月24日公布)で後見・保佐を補助に一元化するなど、任意後見を含む見直しが決まっています。施行日は公布から2年6か月以内に政令で定められます。施行までは現在の3類型が続き、施行後にこの記事の内容も更新します。

後見人が専門職の場合、家庭裁判所が事案ごとに報酬を決め、本人の財産から支払われます。財産管理委任契約のように、当事者どうしで自由に報酬を決める形とは異なります。

成年後見が始まると、通帳の管理は後見人に引き継がれます。それまで子どもが担っていた管理は、そこで一区切りとなります。

引き継ぎの際に、それまでの記録が整理されていると、後見人への説明もスムーズになります。なお、財産管理委任契約と任意後見契約をあわせて結んでおき、判断力が下がった時点で任意後見に切り替える進め方は、実務では移行型と呼ばれています。

民法第7条

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、

家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、

後見開始の審判をすることができる。

参考:e-Gov法令検索「民法」第7条

財産管理委任契約と成年後見制度は、似ているようで前提が異なります。表で比べます。

財産管理委任契約 成年後見制度(法定後見)
いつ使えるか 契約内容を理解できるうちから 判断力が不十分になったとき
誰が管理者を決めるか 本人が自分で選ぶ 家庭裁判所が選ぶ
監督する人 裁判所による監督はない(契約で報告先や確認方法を決められる) 家庭裁判所が監督し、必要に応じて監督人が選ばれる
本人が亡くなったら 契約は終了する 後見も終了する
根拠 民法の委任 家庭裁判所の審判(民法7条ほか)

財産管理委任契約は本人が亡くなると終了します(民法653条1号)。判断力が下がったあとの財産管理も、亡くなったあとの手続きも、この契約だけでは担えません。

判断力が下がる前から備える選択肢として、任意後見契約もあります。任意後見と財産管理委任契約を組み合わせる考え方は見守り契約とは? 財産管理委任契約・任意後見との違いで詳しく説明しています。

生前対策全体の中で、どの手段をいつ検討すればよいかは生前対策は何から始めればいいか? 目的と手段を整理するにまとめています。

6. 家族でもめないための実務のコツ

この章でわかること 通帳と印鑑の分離管理、定期報告など、今日からできる工夫があること

契約書を作るかどうかにかかわらず、今日から始められる工夫もあります。

  • 通帳・キャッシュカード・印鑑は、可能であれば別々の人が保管する
  • 引き出しのたびに、日付・金額・使いみちを1行でメモする
  • レシートや領収書は、月ごとに封筒やノートにまとめておく
  • 本人の同意を得て、本人が指定した家族へ決めた頻度で共有する
もめないための3つの工夫 STEP 1STEP 2STEP 3 分けて管理記録をつける定期的に共有 通帳と印鑑を別の人が保管する日付・金額・使いみちを1行でメモする半年に1回など決めた頻度で共有する 今日からでも、記録は整え直せます
通帳と印鑑を分けて管理し、記録をつけ、定期的に共有することで、疑いが生まれにくくなります

通帳と印鑑を管理する人を分けておくと、一人だけで管理するよりも確認しやすくなります。

同じ人がすべてを管理していると、記録が正しくても本人にしか確認できない状態になりがちです。管理と保管を分けておくだけで、確認できる人が増えます。

管理状況を家族へ共有する場合も、本人の同意が前提です。本人が共有先を指定し、半年に1回など頻度を決めておけば、本人のプライバシーに配慮しながら確認できる人を増やせます。

ここで紹介した工夫は法律の手続きではなく、実務上の心がけです。専門家に相談する前の、最初の一歩として役立ちます。

相続が始まったあとの名義変更や手続き全般は、相続のご相談ページで説明しています。

日常の生活費と、まとまった支出を分けて考える

もめる原因になりやすいのは、金額の大小よりも「事前の合意があったかどうか」です。食費や医療費、日用品といった日常の生活費は、金額も小さく用途もはっきりしているため、後から問題になることは少ないです。

問題になりやすいのは、リフォーム費用、施設への入居一時金、まとまった贈与といった大きな支出です。まず本人の具体的な指示や同意を記録し、本人が希望する場合は、指定された家族にも事前に共有しておくと説明しやすくなります。

親自身の意思がはっきりしているうちに、大きな支出については本人の口から家族へ伝えてもらう、という形も有効です。管理する人が一人で決めたのではなく、親の意向であることが分かれば、疑いは生まれにくくなります。

7. よくある質問

この章でわかること 記録の付け方や、家族に切り出しにくいときの考え方

Q. どのくらい細かく記録すればいいですか?

A. 日付・金額・使いみちの3点を、1行でよいので書き残すことをおすすめします。レシートがあれば、月ごとにまとめて保管しておくと、あとで確認しやすくなります。

Q. 兄弟姉妹に管理の状況を伝えるのが気まずいです。

A. まず本人に、誰へどこまで共有してよいかを確認してください。本人の同意が得られたら、疑いへの対策ではなく、本人の財産を適切に管理するための情報共有として伝えると切り出しやすくなります。

Q. 財産管理委任契約を結ばないと、法的に問題がありますか?

A. 契約書がないこと自体は問題ではありません。ただし、記録がないまま長期間管理を続けると、あとで説明が難しくなります。契約書を作るかどうかは、記録の残しやすさやご家族の状況に合わせてご検討ください。

Q. 契約書を作る場合、公正証書にしないといけませんか?

A. 財産管理委任契約に、公正証書にする法律上の決まりはありません。ただし、原本を公証役場で保管でき、あとから内容を書き換えたと疑われにくくなるため、公正証書にしておく方も多くいらっしゃいます。

Q. 通帳を管理している自分が、先に体調を崩したらどうなりますか?

A. 誰が引き継ぐかを、あらかじめ決めておくと安心です。家族の中でもう一人候補を決めておく、または専門職に相談しておく方法があります。決めないままだと、管理が空白になる期間が生まれます。

8. まとめ

  • 本人の依頼に基づく管理が直ちに違法になるわけではないが、金融機関の代理人手続を確認する
  • ただし記録がないと、相続開始後にほかの相続人から使い込みを疑われることがある
  • いつ・いくら・何に使ったかの記録とレシートの保管が、重要な備えになる
  • 財産管理委任契約という形で契約書を作れば、任せる範囲と報告のルールを先に決められる
  • 判断力が下がったあとは、成年後見制度という別の仕組みに移る

難しく考えず、まずは今日の引き出しから、日付・金額・使いみちをメモすることから始めてみてください。

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