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不動産の生前贈与|登記の必要書類・費用と注意点【司法書士が解説】

この記事の監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)

最終更新日:2026年9月6日 ※本記事は更新日現在の法令・実務に基づき内容を確認しています。

親から実家や土地を生前にもらう話が出ると、贈与契約書さえ作れば手続きは終わると思いがちです。所有権が移ることと、登記簿の名義が変わることは別です。贈与の合意に加え、法務局で登記名義を変更する手続きも進めましょう。

贈与ならではの必要書類や、登録免許税の税率、抵当権・農地・共有名義の落とし穴まで、司法書士が順番に説明します。

この記事のポイント

  • 生前贈与で不動産の名義を変えるには、贈与契約書の作成に加えて、法務局への所有権移転登記が必要です
  • 登録免許税は、贈与が不動産の価額の2.0%、相続が0.4%です(2026年4月1日現在の国税庁の税額表による)
  • 抵当権付き・農地・共有名義の不動産は、贈与の前に確認しておきたい落とし穴があります

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1. 結論:所有権の移転と、登記名義の変更は別

この章でわかること 贈与契約と登記は別の手続きだという全体像

生前に不動産を贈与するとき、多くの方が意識するのは「誰に」「何を」贈るかです。所有権は原則として当事者の合意によって移りますが、登記簿の名義を変えるには所有権移転登記が必要です。

贈与は、口約束でも成立する契約です。

民法第549条
贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

参考:e-Gov法令検索「民法」第549条

所有権が移る時期は契約内容によって異なり、農地の許可などが必要な場合もあります。登記をしなければ、原則として第三者に所有権の取得を主張できません(民法176条・177条)。登記簿に記載された所有者を変えるには、契約とは別に登記申請が必要です。この登記を後回しにすると、贈与した実家や土地の名義が、亡くなった祖父母や親のままになっている状態が長引くことがあります。名義がそのままだと、次に不動産を売ったり、担保に入れたりするときに、あらためて過去の贈与を証明する必要が出てくることもあります。

判断力の低下や、相続でのトラブルを避けたいという理由から、生前のうちに不動産の名義を動かしておきたいというご相談があります。

ここから、贈与契約から登記までの流れ、必要書類、登録免許税の税率、見落とされがちな落とし穴、遺言や家族信託との使い分けまで、順番に説明します。

贈与の話は、他の相続人となる家族との関係にも影響します。誰にどの財産を渡すかは、後の章で説明する遺留分の考え方とあわせて検討してください。

2. 生前贈与で不動産の名義を変えるときの流れ

この章でわかること 契約前の確認から登記の完了までの4つの段階

生前贈与で不動産の名義を変えるときの流れは、次のようになります。

  1. 不動産と税負担を事前に確認する —— 名義・住所・抵当権・評価額・農地かどうかを確認します。必要に応じて金融機関や農業委員会に相談し、税務上の負担も確認します。
  2. 贈与契約書を作成する —— 誰が誰に、どの不動産を、いつ贈るのかを書面にします。必要な許可の取得時期も確認します。
  3. 必要書類をそろえる —— 贈る人・もらう人の双方で、次の項目の書類を準備します。
  4. 法務局へ登記を申請する —— 不動産の所在地を管轄する法務局へ申請し、完了すると登記事項証明書に新しい名義が記載されます。

登記が完了すると、新しい登記識別情報(権利証にあたる書類)が発行されます。固定資産税は、原則として毎年1月1日に登記簿等に所有者として記録されている人に、その年度分が課税されます。年度途中に贈与しても、その年度の納税義務者は切り替わりません。

登録免許税や必要書類の取得費用は、実務上もらう人が負担することが多いですが、法律で決まっているわけではありません。誰がいくら負担するかは、贈与契約書の中で決めておくと、あとで話がこじれにくくなります。

契約書に署名した日と登記申請日が異なること自体は、直ちに問題となるわけではありません。ただし間隔が空くほど、印鑑証明書などの書類の有効期限が切れてしまうことがあるため、なるべく早めに申請することをおすすめします。

必要書類

登記の申請には、贈る人と受け取る人、それぞれの立場で必要な書類があります。贈与契約書のほか、贈る人は登記識別情報(権利証)と印鑑証明書を用意します。印鑑証明書は、発行から3か月以内のものが必要です(不動産登記令16条3項)。もらう人は住民票を、対象不動産については固定資産評価証明書を用意します。双方の本人確認書類も必要です。

贈る人の印鑑証明書は、贈与契約書や登記申請書に押す実印の確認に使います。もらう人の住民票は、登記簿に新しい住所を正しく記載するために必要です。書類ごとに取得できる窓口や有効期限が違うため、早めにそろえ始めると手続きがスムーズです。

贈る人の登記簿上の住所・氏名が現在と違う場合は、原則として先に住所・氏名の変更登記が必要です。住民票や戸籍の附票など、変更の経緯が分かる書類も確認します。

国内に住所がある個人が新たに所有者となる登記では、氏名の振り仮名や生年月日などの「検索用情報」も申請時に申し出ます。メールアドレスがない場合の扱いなどは、法務省の案内に沿って確認します。

贈与による登記は、贈る人(登記義務者)と受け取る人(登記権利者)が、共同で申請するのが原則です。

不動産登記法第60条
権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。

参考:e-Gov法令検索「不動産登記法」第60条

相続の登記は、相続人の単独申請で進められる場合があり、期限や過料の制度もあります。一方、贈与の登記は、原則として贈る人の協力がなければ進められません。贈る人の判断能力がしっかりしているうちに、手続きを済ませておく理由の一つがここにあります。詳しくは相続登記の3年ルールの記事で、相続との違いを確認してください。

共同申請が原則になっているのは、名義を失う人の意思を確認しないまま、名義が書き換わることを防ぐためです。贈る人が認知症などで判断能力を欠いた状態になると、この意思確認ができなくなり、贈与そのものが難しくなります。元気なうちに手続きを済ませておく必要があるのは、このためです。

3. 登録免許税は、贈与と相続で税率が違う

この章でわかること 登録免許税の税率は贈与2.0%・相続0.4%であること

登記を申請するときは、登録免許税という税金を国へ納めます。この税率は、贈与と相続で違います。

登記の原因 登録免許税の税率
贈与 不動産の価額の1000分の20(2.0%)
相続 不動産の価額の1000分の4(0.4%)

参考:国税庁 タックスアンサー No.7191「登録免許税の税額表」(2026年4月1日現在の法令等に基づく内容です)

登録免許税の計算に使う不動産の価額は、原則として固定資産課税台帳に登録された価格です。固定資産評価証明書などで確認できます。登録価格がない場合は、登記官が認定する価額を使います。評価額1,000万円の土地を贈与すると、登録免許税は20万円になります。同じ不動産を相続で名義変更する場合は4万円です。評価額3,000万円であれば、贈与は60万円、相続は12万円になり、金額が大きくなるほど差も開きます。この差は、相続登記の費用と比べるとよく分かります。詳しくは相続登記の費用相場はいくらかの記事で、登録免許税と実費の内訳を確認してください。

贈与では、登録免許税のほかに不動産取得税もかかります。相続による取得は原則として不動産取得税の対象になりませんが、贈与は対象になります。税率や軽減措置は不動産の種類や地域によって変わります。軽減の適用によって負担が変わるため、契約前に確認しましょう。

贈与税には、相続時精算課税制度という、課税方法を選べる制度もあります。どちらの方式が有利かは、財産の総額や今後の見通しによって変わります。制度の選択は、その後の課税にも関わるため、税務上の有利不利を確認してから判断します。

登録免許税の税率だけを見ても、贈与は負担が重く見えるかもしれません。ですが贈与税や相続税を含めた損得は、財産全体の状況によって変わります。当事務所では、登記手続きと登録免許税などの実費、司法書士報酬をご案内します。贈与税・相続税の個別の試算は税理士が担当します。

登録免許税は、登記を申請するときに現金や収入印紙で用意しておく必要があります。贈与を決めたら早めに金額を確認し、準備しておくと当日慌てずに済みます。

税額の計算は、提携する税理士と連携してご案内します

登録免許税の実費や登記の手続きは司法書士が担当できますが、贈与税・相続税の試算や、贈与時期による税務上の有利不利は税理士が確認します。登記や本人の意思確認などは司法書士が担当します。ご相談時に、提携する税理士をご紹介します。生前対策のご相談ページを見る

司法書士へ依頼した場合の報酬は、料金のご案内で確認できます。

4. 見落とされがちな3つの落とし穴

この章でわかること 抵当権・農地・共有名義、事前に確認したい3つの点

不動産の贈与では、契約と登記の手順以外にも、事前に確認しておきたい点があります。

抵当権が付いている場合

住宅ローンの返済中で、不動産に抵当権が設定されたままの場合があります。多くの金融機関は、ローンの担保になっている不動産の名義を変えるときに、事前の相談を求めています。無断で名義を変えると、契約違反として一括返済を求められることもあります。将来の借入れに備えた根抵当権が付いている場合も、考え方は同じです。贈与を考える前に、まず借入先の金融機関へ確認してください。

農地が含まれる場合

実家と一緒に、田や畑を贈与する話が出ることがあります。農地を農地のまま贈与するときは、原則として農業委員会の許可が必要です(農地法3条1項)。この許可が必要な場合、許可を受けなければ所有権移転の効力が生じません。受け取る人が耕作などの許可要件を満たすかも確認します。住宅用地などへ転用して渡す場合は、農地法5条の許可・届出など、別の手続きを検討します。必要書類や審査日程は、所在地の農業委員会へ確認してください。実家の農地を含む贈与を考えている方は、早めに窓口へ確認しておくと、後戻りが少なくなります。

共有名義になっている場合

不動産が親ときょうだいなど複数人の共有になっている場合、贈与できるのは自分の持分だけです。共有者全員の同意がなくても、自分の持分を贈与すること自体はできますが、その後の管理や処分には共有者どうしの話し合いが必要になります。たとえば、実家の土地が親とそのきょうだいの共有になっているケースを考えてみます。親の持分だけを子へ贈与することはできますが、土地全体を将来どうするかという話し合いは、共有者全員で続ける必要があります。

3つの落とし穴のうち、1つでも当てはまる場合は、贈与契約を結ぶ前に確認しておくことをおすすめします。契約を結んだあとに判明すると、登記のやり直しや、金融機関との調整に時間がかかることがあります。

こんな方は、事前の確認をおすすめします

  • 贈与する不動産に、住宅ローンや抵当権が残っている
  • 実家と一緒に、田や畑も引き継ぐ話が出ている
  • 不動産の名義が、親ときょうだいなど複数人の共有になっている
  • 相続との違いがよく分からないまま、贈与の話だけが進んでいる

誰も住まなくなった実家の名義をどうするか迷っている方は、誰も住まない実家、名義変更と売却どちらが先かの記事もあわせてご覧ください。

5. 贈与と遺言・家族信託、何が違うのか

この章でわかること 贈与・遺言・家族信託では、所有と管理・利益の受け方が違うこと

財産の引継ぎを考える方法には、生前贈与のほか、遺言や家族信託があります。それぞれ、財産を引き継ぐ時期や、管理を任せる仕組みが違います。

家族信託では、信頼できる家族(受託者)に財産の管理を託します。不動産を信託する一般的な契約では、受託者へ所有権を移し、所有権移転と信託の登記を行います。親が家賃などの利益を受ける権利(受益権)を持ち続ける設計もでき、子への贈与とは異なります。将来その利益を誰が受けるかなども、法律の範囲内で定めます。

不動産だけを先に贈与して、預金や有価証券は将来の遺言に任せる、という判断をする方もいます。反対に、判断力の低下が心配な場合は、贈与よりも家族信託や任意後見を先に検討したほうがよい場面もあります。

比べる点 生前贈与 遺言 家族信託
所有と利益の引継ぎ 原則として当事者の合意に基づく時期に所有権が移る 原則として死亡時に効力が生じる 受託者へ所有権を移しても、利益を受ける人は別に定められる
不動産の登記 所有権移転登記を行う 死亡後に内容に応じた所有権移転登記を行う 不動産を家族へ信託する場合、所有権移転・信託登記を行う
向いている場面 特定の人に、生前に所有権を渡したい 渡す相手・割合を決めておきたいが、生前は財産を動かしたくない 認知症などに備え、管理と承継の両方を決めておきたい

相続人への生前贈与が「特別受益」に当たると、遺産分割で各人の相続分を計算するときに考慮されることがあります(民法903条)。これは、贈与した不動産が当然に遺産へ戻るという意味ではありません。

これとは別に、生前贈与によって他の相続人の遺留分を侵害すると、金銭の支払を請求されることがあります。詳しくは遺留分とは何かを説明した記事をご覧ください。

遺言でまとめて財産を渡す方法との違いが分からない方は、自筆と公正証書、どちらの遺言にするか決める3つの基準の記事もあわせてご覧ください。生前対策全体の中でどの手段を選ぶかを整理したい方は、先に生前対策は何から始めればいいかの記事をお読みいただくと、贈与の位置づけが分かりやすくなります。

贈与・遺言・家族信託は、どれか1つを選べば終わるとは限りません。不動産を生前贈与し、残る財産の引継ぎを遺言で定める、といった組み合わせも検討できます。どの組み合わせが合うかは、財産の種類や家族関係によって変わるため、無料相談で財産の状況を整理することをおすすめします。

6. 自分でできること・司法書士に相談したほうがよいこと

この章でわかること 自分で進められる範囲と、専門家に任せたほうがよい範囲の分かれ目

贈与契約書の作成や必要書類の収集は、ご自身で進めることもできます。契約内容に合った書類を作り、ご自身で登記を申請することも可能です。申請には窓口への持参のほか、郵送やオンラインの方法があります。

必要な期間は、書類の準備状況や許可の要否、法務局の処理状況によって異なります。不備の訂正に時間がかかることもあるため、管轄法務局の登記完了予定日を確認し、余裕を持って準備しましょう。平日の日中に問い合わせや訂正へ対応できるかも判断材料になります。

法務局のホームページでは、登記申請書の様式や記載例を確認できます。書き方に迷ったときは、法務局の登記手続案内という予約制の相談窓口もあります。ただしこの窓口は書類の書き方の確認にとどまり、贈与契約の内容や税金の相談には対応していません。

ただし、抵当権付き・農地・共有名義など、ここまでに説明した落とし穴に当てはまる場合は、事前の確認や別の手続きが必要になることがあります。司法書士は、登記に必要な確認や書類の作成、登記申請を支援できます。

当事務所が担当すること・他の専門家につなぐこと

登記の手続きと、税金の計算は担当が分かれています。

当事務所が担当すること 他の専門家につなぐこと
贈与契約書の作成 贈与税・相続税の計算
登記の申請 相続人どうしの交渉の代理
農地の許可と登記の手順・必要資料の確認 争いになった場合の訴訟対応

税金の計算は、提携する税理士をご紹介します。相続人どうしで争いになっている場合は、当事務所が窓口となり、提携する弁護士をご紹介します。

相談にいらっしゃる際は、対象不動産の登記事項証明書や、固定資産税の納税通知書をお持ちいただくと、その場で状況を把握しやすくなります。手元にない場合は、当日一緒に確認することもできますので、準備が整っていなくても構いません。

費用の全体像は、料金のご案内で確認できます。当事務所の所有権移転(贈与)登記の報酬は55,000円(税込)からです。見積りは無料です。

落とし穴に当てはまるかどうかも含めて、まずはご状況をお伺いします。→ 贈与か遺言か、まず相談する

7. よくある質問

この章でわかること 贈与税・住宅ローン・農地・登記の期限についてのよくある疑問

Q. 贈与税はいくらかかりますか

A. 贈与を受けた財産の総額や、他に受けた贈与の有無によって金額が変わるため、個別の金額はお示ししていません。当事務所では税額の計算は行っておらず、提携する税理士をご紹介しています。まずは無料相談で状況をお伺いし、必要に応じておつなぎします。

Q. 住宅ローンが残っている実家を贈与できますか

A. 契約自体はできますが、多くの金融機関はローンの担保になっている不動産の名義変更に、事前の相談を求めています。無断で進めると契約違反になることがあるため、贈与を考える前に金融機関へ確認してください。ローンを完済してから贈与するという順番を選ぶ方もいます。

Q. 農地を贈与する場合、届出だけで済みますか

A. 農地を農地のまま贈与する場合は、原則として農地法3条の許可が必要です。相続に伴う届出とは扱いが異なります。農業を継がない子へ渡す場合は、耕作などの許可要件を満たせるかを先に確認してください。転用を伴う場合は別の手続きとなるため、所在地の農業委員会へ相談しましょう。

Q. 贈与した不動産の登記に、相続登記のような期限はありますか

A. 贈与による所有権移転登記には、相続登記と同じ申請期限は設けられていません。ただし、登記前に事情が変わるリスクがあります。税負担や必要な許可、本人の意思を確認したうえで、契約と登記の時期を決めましょう。なお、住所・氏名の変更登記の義務は別の制度です。

Q. 贈与契約書を作ったあとで、やめたいと思ったらどうなりますか

A. 書面で結んだ贈与は、原則として一方的にやめることができません。口約束だけで書面を作っていない贈与であれば、まだ実行していない部分について、各当事者がやめることができます(民法550条)。登記まで済ませたあとの撤回は難しくなるため、契約前によく検討することをおすすめします。

8. まとめ

  • 生前贈与で不動産の名義を変えるには、贈与契約書の作成に加えて、法務局への所有権移転登記が必要です
  • 登記は原則として、贈る人と受け取る人が共同で申請します
  • 登録免許税は、贈与が不動産の価額の2.0%、相続が0.4%です(2026年4月1日現在の国税庁の税額表による)
  • 抵当権付き・農地・共有名義の不動産は、贈与の前に確認しておきたい落とし穴があります
  • 贈与税・相続税の計算や、贈与時期による税務上の有利不利は、提携する税理士と連携して確認します

まずは、贈与を考えている不動産の登記事項証明書と、固定資産評価証明書を確認するところから始めてください。

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