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後見を受けていた人の死亡|報告と引継ぎ【司法書士が解説】

後見を受けていた人の死亡|報告と引継ぎ(司法書士 岩田剛知の写真付きアイキャッチ)

監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)

ページ更新日:2026年10月19日 一般的な手続きの解説であり、個別の事情によって必要な対応は異なります。

成年後見を受けていた本人が亡くなると、後見は終了します。

ただし、死亡の報告、管理の計算、相続人等への引継ぎなどの事務が残ります。

法定の成年後見人が行う終了事務と、相続人として行う手続きを分けて確認しましょう。死亡後の支払いには、裁判所の許可が必要な行為もあります。

この記事のポイント

  • 死亡を家裁へ報告
  • 収支を計算して引継ぐ
  • 死後の権限を確認

家裁へ出す報告や、死亡後の支払いに迷った段階からご相談いただけます。死亡日と最後の財産目録をもとに、必要な書類と進める順番を整理します。

後見終了の報告と引継ぎを相談する

後見の説明は2026年10月19日時点の施行法によります。令和8年改正の成年後見制度の見直しは、この時点では施行前です。法務省の改正・施行案内

1. 本人が亡くなったら、後見の終了を報告する

この章でわかること 生前の代理権を、そのまま使い続けません。

成年後見は、判断能力が不十分な本人の生活と財産管理を支える制度です。本人の死亡によって後見が終了すると、生前と同じ代理権で手続きを続けることはできません。残った財産は、相続の関係を確認して引き継ぎます。

最初に、後見事件を扱っている家庭裁判所へ死亡を報告します。松江家庭裁判所は、死亡診断書の写し又は死亡の記載のある戸籍謄本を添え、連絡票ですみやかに報告するよう案内しています。後見監督人がいる場合は、その人も連絡先です。

家族や施設が裁判所へ連絡したと思い込まず、報告が済んだか確認してください。後見事件の番号、死亡日、連絡先を示します。裁判所の案内で、報告書と添付資料の作り方を確認します。

保佐、補助、任意後見では、本人死亡後の権限の根拠が同じではありません。ここでは法定の成年後見人を中心に説明します。何の後見を担当していたかを、審判書や契約書で確かめます。

死亡届を出したことと、後見事件で死亡を報告したことも別です。銀行や施設への連絡と並行して、後見の終了に必要な事務を一覧にします。家族の相続開始時の手続きと、後見人の終了事務を区別しましょう。

参考:松江家庭裁判所:後見終了時の報告

2. 原則2か月以内に、管理していた収支を計算する

この章でわかること 管理の計算と、遺産の分け方は別です。

本人が亡くなって成年後見人の任務が終了したら、原則として死亡から2か月以内に管理の計算を行います。管理の計算とは、担当期間中の収入、支出、現在の財産額を明らかにすることです。民法870条は、家庭裁判所がこの期間を伸長できると定めています。

民法第870条
後見人の任務が終了したときは、後見人又はその相続人は、二箇月以内にその管理の計算(以下「後見の計算」という。)をしなければならない。ただし、この期間は、家庭裁判所において伸長することができる。

参考:e-Gov法令検索:民法870条

これは管理の計算の期限であり、死亡の連絡を2か月待ってよいという意味ではありません。報告書の提出時期や添付資料は、事件を扱う家裁の案内を確認してください。

死亡日の残高と、その後の支出を分けて記録します。最後の定期報告からの入出金を、通帳や領収書と照合してください。立替金があれば、本人の費用と後見人自身の費用を分け、裏付けを残します。

財産目録には、預貯金だけでなく、不動産、有価証券、未収入金、債務なども確認して載せます。契約の解約や返金が進行中なら、それも記載する状況の一つです。まだ金額が決まっていない項目を、確認済みの残高へ混ぜないようにします。

後見監督人がいる場合は、後見の計算にその立会いが必要です。提出前に、監督人と計算内容や資料を確認します。裁判所への終了報告と、相続人等への管理計算の説明も、目的を分けて進めます。

計算が期限に間に合わない見込みなら、早めに裁判所へ事情を伝えます。遺産分割の話し合いが終わるまで何もしなくてよい、とは考えません。通帳の管理記録がそろっていると、残高と支払いの確認を進めやすくなります。

参考:e-Gov法令検索:民法870条・871条

項目 整理する資料 記録すること
収入と支出 通帳・領収書・定期報告 基準日と最後の報告後の動き
管理財産 財産目録・残高資料 現物・金額・未確定項目
立替金や債務 請求書・支払記録 誰の費用で何が未払いか
引継ぎ 受領書・通知の控え 相手・日付・内容

3. 相続人や遺言執行者を確認して、財産を引き継ぐ

この章でわかること 引継ぎの受領と、取得する権利を区別します。

財産の引継先は、相続人、遺言の内容、遺言執行者の有無を確認して決めます。連絡してきた家族がいるだけで、全てをその人のものとして渡すとは考えません。相続関係を示す資料と、受け取る立場を確認します。

遺言執行者とは、遺言の内容を実現する事務を行う人です。遺言が見つかった場合は、引継ぎの前に内容と執行者を確認します。検認が必要な遺言かも、保管方法に沿って確かめてください。

相続人の代表者へ管理財産を引き継ぐ場合でも、全遺産をその人が取得すると決まったわけではありません。通帳や鍵の受領と、遺産分割の合意を区別します。遺産分割協議書を作る話とは別に、管理の引継ぎを記録します。

松江家庭裁判所の終了報告書には、引継先と、相続人への通知の状況を記入する欄があります。財産の内容と引継ぎの終了などを、誰へ通知したか整理します。引継書も、現在の家裁の書式を確認してください。

後見人自身が相続人の場合も、計算や通知を省けるとは考えません。後見人としての管理と、相続人としての管理を区切ります。相続人が不明、放棄がある、連絡が取れない場合は、相続人と連絡が取れない場合も参考に、裁判所へ引継ぎの方法を相談します。

参考:松江家庭裁判所:後見等事務終了(相続財産引継)報告書

引継先が決まらない場合や死亡後の支払いに迷う場合は、財産目録と請求書から確認点を整理できます。生前対策と後見の相談内容もご覧ください。

死亡後の支払いと引継先を相談する

4. 死亡後にできる行為は、必要性と許可を確認する

この章でわかること 成年後見人の権限を、葬儀全体へ広げません。

民法873条の2は、成年後見人が死亡後にできる一定の行為を定めています。必要があり、相続人の意思に反することが明らかな場合ではないことが条件です。相続人が相続財産を管理できるようになるまでの範囲です。

その中には、特定の相続財産の保存行為と、支払期限が来た債務の弁済があります。例えば、本人の生前の医療費が未払いである場合も、債務の内容と期限を確認します。請求が届いたというだけで、関係する費用を全て払ってよいとは考えません。

火葬・埋葬に関する契約など、同条3号の行為には家庭裁判所の許可が必要です。債務を支払うための本人名義の預貯金の払戻しも、裁判所は許可が必要な例に挙げています。医療費を支払える場合でも、預金を自由に払い戻せるとは限りません。火葬・埋葬の契約と、葬儀全体の契約も区別してください。

この権限を、保佐人、補助人、任意後見人へそのまま当てはめません。裁判所の許可手続きの申立人も、成年後見人と案内されています。他の立場では、別の契約や緊急の事務の根拠を確認します。

成年後見人だった人が相続人でもある場合は、どの立場で行うかを区別します。相続人として行う行為は、この許可手続きの対象とは別ですが、他の相続人との関係や金融機関の手続きは確認が必要です。

死亡後の支払いは、権限・必要性・相続人の意向を確認します。事前に頼まれた死後の事務があるなら、死後事務委任契約の範囲も別に確認します。後見人だったことだけで、その契約も存在すると扱わないでください。

参考:e-Gov法令検索:民法873条の2

参考:裁判所:本人死亡後の行為の許可・預金払戻し等

5. 終了登記と、残っている相続手続きを確認する

この章でわかること 家裁への報告だけで、登記や相続を済ませません。

後見登記についても、本人の死亡による終了の登記を確認します。後見登記法8条は、登記されている後見人等が本人の死亡を知ったときは、終了登記を申請しなければならないと定めています。死亡届や家裁への報告とは、別の手続きとして確認してください。

死亡による後見の終了登記は、東京法務局後見登録課へ申請します。窓口又は書留郵便・信書便で提出できます。申請書と添付書類は、同課の死亡による終了登記の案内で確認してください。何を使うか整理する資料は、登記事項証明書や死亡を示す戸籍などです。東京法務局は、登記完了の連絡は行わないと案内しています。提出した資料の控えと送付の記録を保管し、必要に応じて完了の確認方法も確かめましょう。

相続の戸籍や遺言、名義変更も、後見の終了と別に進めます。後見人が不動産を管理していたとしても、その人へ家を相続させる登記にはなりません。法定相続情報一覧図を使えるかなど、相続関係の整理も確認してください。

賃貸の住まいがあった場合、死亡後の退去手続きも契約と権限を確かめます。預かった鍵を返すことと、賃貸契約を終えることは別です。未払い、敷金の精算、遺品の扱いを引継資料へ残します。

相談には、審判書、最後の財産目録、通帳、遺言、死亡を示す資料をお持ちください。未払費用や未完了の契約も、一緒に確認します。後見と生前対策の相談案内で、書類作成の支援と相続へ移る際の作業を整理できます。

参考:e-Gov法令検索:後見登記法8条

6. よくある質問

この章でわかること 判断に迷いやすい場面を確認します。

Q. 死亡後も後見人として預金を自由に払戻せますか?

生前と同じ代理権で自由に払い戻すことはできません。債務弁済のための本人名義の預貯金の払戻しは、家裁の許可が必要な行為として案内されています。相続人として手続きする場合とは区別し、目的と立場を確認してください。

Q. 2か月以内に遺産分割まで終える必要がありますか?

管理の計算と遺産分割は別です。成年後見人は原則2か月以内に管理の計算を行います。引継ぎや終了報告を進め、難しい事情があれば家裁へ早めに相談します。

Q. 家族の一人が通帳を受け取ると、その人の遺産ですか?

管理の引継ぎだけで取得する人が決まるわけではありません。相続人や遺言を確認し、受領の記録と遺産分割の合意を区別します。

7. まとめ

  • 本人の死亡による後見の終了を、家裁へ報告します。
  • 原則2か月以内に管理の計算を行い、監督人の立会いも確認します。
  • 相続人や遺言を確認し、財産の引継ぎと通知を記録します。
  • 死亡後の行為の権限と、終了登記を別に確認します。

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