監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)
ページ更新日:2026年10月22日 一般的な手続きの解説であり、個別の事情によって必要な対応は異なります。
任意後見契約を解除する方法は、監督人が選任される前か後かで違います。
選任前は公証人の認証を受けた書面、選任後は正当な事由と家庭裁判所の許可が必要です。
契約を終える手続きと、登記の整理、その後の支援の準備を合わせて確認します。
この記事のポイント
- 監督人の選任を確認
- 解除書面と許可を区別
- 登記と支援の引継ぎ
「頼む相手を変えたい」「どの手続きから始めるか分からない」という段階でもご相談いただけます。契約書と裁判所の書類から、解除方法と支援の引継ぎを整理します。
任意後見制度の改正では、公布日と施行日が異なります。解除の手続きは、手続き時点の制度と経過措置も確認してください。法務省の改正・施行案内
1. 解除の方法は、監督人が選任されたかで決まる
この章でわかること 契約した日と、任意後見が始まった日を区別します。
任意後見契約は、本人が将来の支援を受ける相手と、任せる範囲を決める契約です。任意後見契約は、公正証書で結ぶ必要があります。公正証書で契約しただけで、任意後見人としての代理権が使えるわけではありません。家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときから、その効力が生じます。
監督人が選任される前の相手を任意後見受任者、選任後の相手を任意後見人と呼びます。解除手続きを分ける基準は、この監督人の選任です。書面を作る前に、監督人が選任されたかを確認します。
契約書、後見の登記事項証明書、裁判所から届いた書類を確認してください。契約した時期が古いというだけで、選任済みとは判断できません。逆に、預金の手続きをまだしていなくても、選任されていれば選任後の扱いです。
見守りや財産管理を一緒に頼んでいる場合、既に支援を受けていることがあります。ただし、それが任意後見としての支援か、別の委任契約としての支援かを分けます。見守り契約と財産管理委任の違いも、何の契約を終えるか特定する際の参考です。
本人の希望が変わった、相手の健康状態が変わった、役割が合わなくなったなど、理由も整理します。家族が代わりの人を決めたというだけで、元の契約が消えるわけではありません。本人がどのような支援を希望するかを出発点にします。
| 確認点 | 選任前 | 選任後 |
|---|---|---|
| 相手の立場 | 任意後見受任者 | 任意後見人 |
| 解除の基本条件 | 公証人の認証を受けた書面 | 正当な事由と家裁の許可 |
| 合意だけで足りるか | 認証書面の手続きも確認 | 合意しても許可が必要 |
| 終えた後 | 終了登記と別契約を確認 | 終了登記と支援の引継ぎを確認 |
2. 選任前は、公証人の認証を受けた書面で解除する
この章でわかること 合意の有無と、通知の届いた記録を分けます。
監督人の選任前は、本人又は任意後見受任者が、公証人の認証を受けた書面で解除できます。認証とは、書面の署名などについて公証人の確認を受ける手続きです。電話でやめたいと話すことと、法定の方法で解除することを区別します。
双方で合意する場合は、合意解除の内容を記載した書面を準備します。東京法務局の現行案内では、公証人の認証を受けた書類の原本又は認証のある謄本を、登記の添付資料として示しています。自作の合意書へ押印しただけで足りるとは考えません。
一方から解除する場合は、公証人の認証を受けるだけで終えず、解除の意思表示を相手へ届けます。同案内は、認証を受けた配達証明付内容証明郵便の謄本と配達証明を示しています。単に普通郵便を出しただけで、解除と到達の証明がそろうとは考えないでください。
本人や相手が転居している場合、登記された住所と現在の住所のつながりも確認します。古い住所へ通知して終わりにしないことが大切です。契約番号、相手の氏名、通知先、作成する書面をそろえて相談します。
手続きの見通しがつくまで、預かっている通帳や資料の返し方も決めておきます。解除できることと、既に行った事務や費用の精算が終わることは別です。費用の条項を確認し、返却日と受領の記録を残しましょう。
参考:東京法務局:任意後見契約の解除の登記申請・選任前の添付書類
3. 選任後は、正当な事由と家庭裁判所の許可が必要
この章でわかること 本人の支援を途切れさせず、理由を示します。
監督人が選任された後は、本人又は任意後見人が、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て解除できます。本人と任意後見人が合意していても、許可を省けるわけではありません。選任前の認証書面だけで終える方法と区別します。
任意後見契約法第9条
第四条第一項の規定により任意後見監督人が選任される前においては、本人又は任意後見受任者は、いつでも、公証人の認証を受けた書面によって、任意後見契約を解除することができる。
2 第四条第一項の規定により任意後見監督人が選任された後においては、本人又は任意後見人は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て、任意後見契約を解除することができる。
正当な事由とは何かは、具体的な事情によって判断されます。病気で事務を続けにくい、連絡や支援に問題があるなどの事情を、資料で伝えます。この理由なら常に許可されるという一覧を、自分で作らないようにしてください。
相談時は、現在の代理権、本人の暮らし、継続している契約や支払いを示します。誰が家賃や施設費を支払うかも整理します。解除の理由だけでなく、その後の支援について説明できる準備が必要です。
任意後見人の不正などが問題なら、解除とは別に解任の手続きが関係することがあります。解任は、家庭裁判所が不適任な任意後見人を職務から外す手続きです。本人、親族、監督人などの申立てを、契約当事者による解除と混同しません。
本人が新しい契約の内容を理解できる状態かも確認します。元の契約を終えれば、家族だけで自由に財産管理へ切り替えられるとは考えません。必要に応じて法定後見などの制度も含め、信託と後見の選び方を参照して支援を整理します。
本人の希望、解除したい理由、現在の支援をお聞かせください。必要な書面と、支払いを途切れさせない引継ぎを整理できます。生前対策の相談内容もご覧ください。
4. 解除した後は、終了登記と預かり物を確認する
この章でわかること 契約の終了を、取引先にも示せる状態にします。
任意後見契約を終えたら、終了の登記を確認します。登記事項証明書には、契約や代理権の範囲などが記録されています。契約書を破棄しただけでは、登記が整理されたことになりません。
任意後見人の代理権の消滅は、登記をしなければ善意の第三者へ対抗できません。善意とは、この場面では代理権が消滅したことを知らないことです。相手との関係だけでなく、銀行などとの取引にも影響するため、登記まで確認します。
東京法務局は、解除の登記申請を、選任前の合意解除、一方的解除、選任後に分けて案内しています。選任後の案内には、解除の意思表示を記載した書面、家裁の許可の審判書などの謄本、確定証明書が示されています。終了登記の提出先は、全国分を扱う東京法務局後見登録課です。窓口又は書留郵便・信書便で提出できます。添付書類は、同課の任意後見契約の解除の登記案内で確認してください。
預かった財産、契約資料、未払の費用、進行中の事務を一覧にします。何を、誰へ、いつ渡すかを決め、受領した記録を残します。家族の通帳管理で残す記録と同様、残高と立替金を混ぜないことが大切です。
登記申請の対象者には、契約が終了したことを知ったときの申請義務があります。家裁の許可を得たことと、解除の意思表示や終了登記が済んだことは分けてください。東京法務局は登記完了の連絡を行わないため、提出資料の控えと送付記録を保管します。
参考:e-Gov法令検索:後見登記法8条2項/東京法務局:解除の登記申請
金融機関や施設への連絡も、終了登記の資料と合わせて確認します。相手がどの権限で対応していたかによって、必要な作業は別です。契約の解除、登記、実際の引継ぎを別々に確認します。
契約を終える前後の確認
- 監督人の選任と現在の契約を確認する
- 認証書面又は家裁の許可を準備する
- 解除の成立と終了登記を確認する
- 財産・資料・支援を引き継ぐ
5. 別の契約と、次に頼む支援を同時に整理する
この章でわかること 任意後見の解除だけで、全ての契約を終えません。
同じ相手と、見守り、財産管理、死後事務委任を結んでいることがあります。一つの公正証書に書かれていても、解除の条件が全て同じとは限りません。どの契約を続け、どの契約を終えるかを条項ごとに確認します。
本人が元気な段階なら、頼む事務の変更や新しい契約を検討できます。ただし、解除と新契約の手続きは別です。新しい相手が引き受けるか、代理権の範囲が足りるかも確認しましょう。
既に判断能力が低下している場合は、本人の意思確認と生活の支援を優先します。家族の合意だけで新しい公正証書を作れるとは考えません。既存の監督人や家庭裁判所へ、支援を途切れさせない方法を相談します。
死後の事務まで頼んでいるなら、死後事務委任で頼めることも確認します。財産を誰へ渡すかは、遺言と死後事務委任の違いに沿って分けます。契約を終えることで、将来の備えのどこが空くかを把握してください。
相談に持参する資料は、公正証書、登記事項証明書、裁判所の書類、解除したい理由のメモです。無料相談の持ち物に沿って、資料がない部分も伝えます。生前対策の相談案内で、書類作成の支援や次の備えを整理できます。
6. よくある質問
この章でわかること 判断に迷いやすい場面を確認します。
Q. 家族が代わりに契約を解除できますか?
家族であるだけで、契約当事者として解除できるわけではありません。本人又は受任者・任意後見人による解除と、不正などの場合の解任を区別して相談してください。
Q. 選任後も、二人が合意すれば解除できますか?
合意だけでは足りません。正当な事由があり、家庭裁判所の許可を得ることが必要です。解除の書面と終了登記も確認します。
Q. 見守り契約も自動で終わりますか?
別の契約の条項を確認します。任意後見の解除だけで、同じ相手との全契約が終わるとは限りません。継続する支援と返却する資料を分けてください。
7. まとめ
- 監督人選任前後を、契約書と登記で確認します。
- 選任前の認証書面と、選任後の家裁の許可を区別します。
- 解除後は終了登記、財産の精算、資料の引継ぎを確認します。
- 別の契約と次の支援も合わせて整理します。
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