トップ > お役立ちコラム > 民事信託・成年後見

成年後見人から家族への贈与|祝い金の扱い【司法書士が解説】

成年後見人から家族への贈与|祝い金の扱い(司法書士 岩田剛知の写真付きアイキャッチ)

監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)

ページ更新日:2026年10月19日 一般的な手続きの解説であり、個別の事情によって必要な対応は異なります。

成年後見人が、本人の財産を家族へ自由に贈ることはできません。

祝い金も、本人との関係、従来の支出、金額、将来の生活費などを踏まえて慎重に考えます。

贈与、扶養の費用、立替金の返金を分け、迷う場合は支出前に家裁へ資料を示します。

この記事のポイント

  • 本人の利益を基準にする
  • 祝い金は事情を確認
  • 支出前に資料で相談

「孫の入学祝いを親の預金から出してよいか」という段階からご相談いただけます。予定額、過去の記録、今後の療養費をもとに、支出前の確認点を整理します。

祝い金を支出する前に相談する

後見の説明は2026年10月19日時点の施行法によります。令和8年改正の成年後見制度の見直しは、この時点では施行前です。法務省の改正・施行案内

1. 本人の財産は、家族のために自由に贈れない

この章でわかること 財産管理の代理権と、贈与の自由を区別します。

成年後見人は、本人の財産を管理し、必要な法律行為を代理します。ただし、本人の意思を尊重し、本人の心身や生活の状況に配慮して事務を行う立場です。預金を管理できることと、家族へ自由に渡せることは同じではありません。

民法第858条
成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。

参考:e-Gov法令検索:民法858条

本人の財産を子や孫へ贈ると、本人が使えるお金は減ります。家族が喜ぶことだけでは、本人の利益になるとは判断できません。本人の生活、医療、介護のために必要なお金を、まず確保することが大切です。

さいたま家庭裁判所のQ&Aは、後見人自身、親族、知人への贈与は原則としてできないと案内しています。相続税対策のための贈与も、推定相続人の同意があるだけでは認められないとしています。税務上の非課税と、後見人としてできる支出は別です。

例えば、子ども全員が賛成して、本人の預金を均等に渡す場合を考えます。家族全員の合意があっても、本人の利益や後見人の職務が変わるわけではありません。家族の合意より、本人の利益と支出の根拠を確認します。

ここで扱うのは、法定の成年後見人が本人の財産から支出する場合です。後見人自身のお金で贈る場合や、任意後見の契約上の権限は区別します。どの財産を、どの立場で使おうとしているかから整理してください。

参考:e-Gov法令検索:民法858条・859条

参考:さいたま家庭裁判所:後見人等Q&A・Q12

2. 贈与・扶養・立替金を、支出の理由で区別する

この章でわかること 家族へ払うお金を、全て同じ扱いにしません。

家族へお金を渡す場合でも、支出の理由は異なります。見返りなく財産を渡す贈与、本人に扶養義務がある人の生活費、本人の費用を立て替えた人への返金を区別します。名前だけを変えても、実際の内容が変わるわけではありません。

扶養義務は、一定の関係にある家族の生活を支える義務です。ただし、家族から生活費が足りないと言われたら、全て本人の預金から出せるわけではありません。誰を、どの範囲で支える必要があるかと、本人の負担できる状況を確認します。

立替金の返金なら、本人のどの費用を払ったか示す資料が必要です。本人の医療費の領収書、実際の支払記録、未精算額を照合します。家族が助けたお礼を、後から立替金として処理することは避けてください。

同居している場合は、本人の生活費と家族全体の支出も分けます。食費や光熱費を全額本人へ負担させてよいとは考えません。家族の通帳管理の記録に沿って、負担の根拠を残します。

成年後見人自身が受け取る支払いでは、利益相反の問題も確認します。利益相反とは、本人と代理する人の利益が対立する関係です。利益相反に当たる場合は、後見監督人がいれば監督人が本人を代表します。監督人がいない場合は、家庭裁判所へ特別代理人の選任を求めます。ただし、代理する人を整えても、その贈与や支出自体が認められるかは別の問題です。

支出の内容 確認すること 残す資料
子や孫への贈与 本人の利益・権限・相当性 目的と事情の説明
扶養に関する費用 義務の範囲と各人の生活状況 収支と必要額の根拠
立替金の返金 本人の費用で実際に払ったか 領収書・支払記録
儀礼的な祝い金 従来の関係・金額・療養費への影響 過去の記録と支出計画

参考:e-Gov法令検索:民法860条・826条・851条4号・877条

3. 祝い金は、過去の関係と今後の療養費を確認する

この章でわかること 少額なら全て認められる、とは考えません。

孫の入学や結婚に祝い金を出したい場合も、贈与の問題を慎重に考えます。本人が元気なら払っただろうという、家族の期待だけで決めないことが大切です。過去の支出や、本人と受取人の関係を資料で整理します。

さいたま家庭裁判所のQ&Aは、祝い金について、過去の同様の支出などの事情を挙げています。本人が判断できる状態であれば支出したと考えられる関係、常識の範囲の金額、本人の財産状況が条件になります。将来の療養看護に支障がないことも前提です。

これは、全ての祝い金を認める案内ではありません。また、同じ金額なら全国の家裁で同じ結論になる、という線引きでもありません。担当する家裁の案内と、個別事件の事情を確認してください。

例えば、本人が以前から孫の節目に一定の祝いをしていた場合を考えます。過去の記録を示した上で、現在の資産、毎月の収支、施設費の見込みを確認します。昔と同じ金額でも、今後の介護費が増える状況なら、同じ判断とは限りません。

確認するのは、一回の金額だけでなく、年間の合計や繰返しも含めた支出です。孫が複数いる場合や、入学以外にお年玉なども続く場合は、本人の負担全体を示します。従来の慣習と、現在の本人の財産状況を一緒に確認します。

参考:さいたま家庭裁判所:後見人等Q&A・Q13、祝い金の条件

家裁へ何を示せばよいか迷う場合は、祝い金の予定と本人の財産・収支から準備する資料を整理できます。生前対策と後見の相談内容もご覧ください。

家裁へ確認する資料を相談する

4. 迷う支出は、支払う前に資料を示して相談する

この章でわかること 相談は、金額だけでなく理由と影響を伝えます。

家裁へ確認する場合は、受取人、本人との関係、目的、予定金額を示します。過去に本人が同様の支出をしたか、記録があるかも添えます。祝い金という言葉だけでは、判断に必要な事情が伝わりません。

現在の財産額と、毎月の収支も資料にします。本人の医療費、施設費、予想される臨時の支出を分けます。家族の資金繰りではなく、本人の暮らしにどのような影響があるかを説明してください。

後見監督人がいる場合は、監督人にも事前に相談します。家裁の連絡票や事件ごとの案内に沿って、必要な資料を提出します。担当外の家裁のQ&Aを示しただけで、支出できると決まったことにしません。

支出についての相談と、法律上の許可が必要な行為の申立ては区別します。祝い金は、申立書を出せば金額どおり許可される制度ではありません。確認内容と回答を記録し、疑問が残るうちに先に送金しないようにします。

支出した場合は、いつ、誰に、何の名目で、いくら渡したかを記録します。振込記録や受領資料を保管し、家裁の案内に沿って報告してください。生活費の中へまとめて、個別の支出が分からなくなる処理は避けます。

5. 贈与の予定と、将来の財産承継は分けて考える

この章でわかること 後見が始まってからの節税や分配を急ぎません。

本人の財産を将来誰へ渡すかという希望と、現在の後見人の支出は別です。相続を見越して本人の預金を先に分けることは、通常の生活費管理とは違います。家族の希望だけで、後見人が財産を配分しないようにします。

不動産の生前贈与も、本人の意思や契約する能力、代理権などの確認が必要です。後見人がいるから、その人が代わりに贈与できると考えません。税金の問題と、後見制度の制約も別に整理します。

遺言の希望があっても、後見人が本人の代わりに遺言を書くことはできません。エンディングノートと遺言の違いに沿って、意思の記録と法的な手段を区別します。本人が何を希望していたかの記録だけで、贈与を実行する権限が生まれるわけではありません。

本人が関係する相続の話し合いでも、利益相反と本人の取り分を確認します。相続人が認知症の場合の遺産分割は、別の場面の手続きです。祝い金を払う話と、本人が相続する財産を決める話を混ぜないようにしてください。

後見を利用する前の備えを考えている場合は、家族信託と後見の違いを確認できます。どの仕組みでも、家族へ財産を渡すことが無条件に自由になるとは考えません。生前対策を始める順番に沿って、本人の生活を守る目的から整理します。

相談では、審判書、財産目録、収支表、祝い金の予定、過去の支出記録をお持ちください。無料相談の持ち物も参考に、分からない資料はそのまま伝えます。後見と生前対策の相談では、支出の整理と家裁へ確認する内容を検討できます。

6. よくある質問

この章でわかること 判断に迷いやすい場面を確認します。

Q. 子ども全員の同意があれば贈与できますか?

家族の同意だけで本人の財産を贈ることはできません。本人の利益と後見人の職務が基準です。税務上の非課税枠があっても、支出できるかは別に確認します。

Q. 孫の祝い金は一切支出できませんか?

条件によって支出できる場合があります。さいたま家裁の案内では、従来の関係や支出、常識の範囲の金額、本人の財産状況、将来の療養看護への影響を確認します。全国一律の上限額ではないため、迷う場合は支出前に担当家裁へ確認してください。

Q. 少額なら家裁への報告は不要ですか?

金額だけで判断しません。繰返しや年間の合計も関係します。受取人、目的、日付、金額を記録し、事件ごとの案内に沿って報告してください。

7. まとめ

  • 本人の財産を家族へ贈ることは、原則としてできません。
  • 贈与、扶養の費用、立替金の返金を分けます。
  • 祝い金は過去の関係と本人の財産・療養費を踏まえて考えます。
  • 迷う支出は事前に資料で相談し、記録と報告を残します。

祝い金を出す前に、本人の負担を確認しませんか

審判書、財産目録、収支表、過去の祝い金の記録があればお持ちください。すべてそろっていなくても、分かる範囲からご相談いただけます。

松江・出雲・安来・米子周辺のご相談を受け付けています。初回相談は60分無料です。相談できる内容と手続きの流れを見る

0852-28-0336に電話する

フォームから初回無料相談を申し込む

参考にした公的資料

関連記事

あわせて読みたい記事

記事の一覧へ戻る→

ご相談・お問い合わせ

初回相談は60分無料です。手続きの内容と費用をご確認いただいてから、依頼するかどうかをご判断いただけます。お電話・フォーム・LINEからご相談をお申し込みください。※2回目以降のご相談は30分5,500円(税込)です。

0852-28-0336受付|平日 9:00〜18:00 初回相談 60分無料
お問い合わせする→ LINEで相談を申し込む→
お問い合わせ LINEで相談を申し込む