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遺言が無効になる書き方とは? 自筆でやりがちな間違い

この記事の監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)

最終更新日:2026年8月18日 ※本記事は更新日現在の法令・実務に基づき内容を確認しています。

自分で遺言を書いてみようと、便箋やノートを前に座っている方は少なくありません。

ですが自筆証書遺言には、民法で定められた書き方の決まりがあります。そこを外すと、遺言そのものが無効になることがあります。

形式は守れていても、書き方があいまいなために、無効ではないのに名義変更などの手続きに使えない遺言もあります。この2つを分けて、順番に説明します。

この記事のポイント

  • 全文を自分の手で書く・日付を特定できる形で書く・署名と押印をする。この3つを外すと遺言そのものが無効になります
  • 「自宅を長男に」のような書き方は、無効ではなくても登記や解約の手続きに使えないことがあります
  • 不安な場合は、法務局の保管制度や公正証書遺言に切り替える方法や、書いたものを一度見せていただく方法があります

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結論:無効になるかどうかは「形式」で決まる

自筆証書遺言とは、遺言者が自分の手で書き、法律で定められた要件を満たすことで効力を持つ遺言のことです。

この要件には2つの段階があります。ひとつは、外すと遺言そのものが無効になる形式の要件。もうひとつは、無効にはならないものの、書き方があいまいなために実際の手続きで使えなくなる要件です。

ご相談では、この2つが混同されていることがよくあります。まず無効になる書き方から説明します。

全文自書・日付・署名押印がそろっていない書き方

いちばん基本的で、いちばん見落とされやすい要件です。自筆証書遺言は、全文・日付・氏名をすべて遺言者本人が自分の手で書き、押印しなければ無効になります。

パソコンやワープロで打った本文は無効です。体調を考えて家族に代筆してもらった場合や、下書きを別の人に清書してもらった場合も同じです。押印は認印でも構いませんが、押し忘れると無効になります。

日付の書き方にも注意が必要です。「令和7年10月吉日」のように、日を特定できない書き方をした遺言は無効と判断された判例があります。吉日という言葉は縁起のよい言い方ですが、法律上は「いつ書いたか」が確定できません。年月日をはっきり書く。これだけを守れば防げる無効です。

自筆で書くときの4つの決まり 1234 全文を自分の手で書く年月日をはっきり書く氏名を自分で書く押印する パソコン・代筆は不可「吉日」は日が特定できない戸籍どおりの氏名で認印でもよい。押し忘れに注意目録はパソコンで作っても、通帳のコピーを使ってもかまいません 例外は財産目録だけ
この4つがそろっていないと、自筆証書遺言は無効になる

唯一の例外は、財産の一覧をまとめた目録の部分です。目録だけはパソコンで作成したり、通帳のコピーを使ったりできます。この例外については、あとの章で説明します。

夫婦で1通にまとめて書いてしまう書き方

ご夫婦で「同じ気持ちだから」と、1枚の用紙に連名で遺言を書かれる方がいらっしゃいます。これは共同遺言といい、民法で禁止されています。

1つの証書に2人以上の遺言をまとめると、その遺言全体が無効になります。ご夫婦であっても、遺言は1人ずつ、別々の用紙に書いてください。

内容をそろえたい場合は、それぞれが同じ趣旨の遺言を、別の紙に書けば問題ありません。お互いに全財産を相手に残す内容にしたい場合も、2通に分けて書きます。

訂正のしかたを誤る書き方

書き終えたあとで書き間違いに気づき、二重線で消して書き直す。日常の書類ではよくある直し方ですが、自筆証書遺言では通用しません。

訂正には、変更した場所を示し、変更した旨を書き添えて、その部分にあらためて署名と押印をするという厳格な方式が定められています。この方式を満たさない訂正は、訂正がなかったものとして扱われ、訂正前の内容がそのまま残ります。

訂正の方式は細かく、自己流で直すと元の記載と食い違ったまま残ってしまうことがあります。1か所でも訂正が必要になったら、その部分だけ直そうとせず、最初から書き直すほうが安全です。

無効ではないのに使えない書き方

ここまでは、要件を外すと無効になる書き方でした。ここから先は少し違います。遺言としては有効なのに、記載があいまいなために、実際の手続きに使えない場合です。

いちばん多いのが、財産の特定不足です。「自宅を長男に相続させる」とだけ書いても、どの不動産を指すのか特定できなければ、名義変更の登記には使えません。登記簿に記載されたとおりに、所在・地番・家屋番号を書き写しておく必要があります。住所の書き方では通らないことがあります。

預貯金についても同じです。「〇〇銀行の預金を妻に」だけでは、支店名や口座番号が分からず、解約の手続きで確認に時間がかかることがあります。

もうひとつ、遺言書が見つからない、あるいは見つけた家族がその場で開けてしまうケースです。遺言書を開封すること自体は、遺言を無効にする事由ではありません。ただし自筆証書遺言(保管制度を使っていないもの)は、家庭裁判所の検認を経てから開ける必要があります。これを怠って開封すると、5万円以下の過料の対象になることがあります。

財産目録の部分だけはパソコンで作成できることは先に触れたとおりです。この場合、目録のページごとに、遺言者の署名と押印が必要です。1ページでも署名や押印が抜けていると、その部分は目録として認められません。

区分 典型的な書き方 結果
全文自書でない パソコン打ち・代筆 遺言が無効になる
日付が特定できない 「令和7年10月吉日」 遺言が無効になる
共同遺言 夫婦で1通に連名 遺言が無効になる
訂正方式の違反 二重線で消して書き直す 訂正部分が無効になる
財産の特定不足 「自宅を長男に」とだけ書く 無効ではないが登記等に使えない
検認前の開封 見つけてすぐ開ける 無効ではないが過料の対象になりうる

ここまでで、自分が書いたものに当てはまる点がないか気になった場合は、無料相談で確認しながら整理できます。→ 相談を予約する

不安なときの選び方

ここまで読んで、自分が書いたものや、これから書こうとしているものに不安を感じた場合の選び方です。

ひとつは、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使う方法です。保管の申請時に、外形的なチェック(全文・日付・氏名の自書、押印の有無など)を法務局の担当者が行うため、形式面の不備に気づける可能性があります。当事務所がある松江市であれば、松江地方法務局(本局)が申請先です。保管制度を使うと、家庭裁判所の検認も不要になります。

もうひとつは、はじめから公正証書遺言にする方法です。公証人が聞き取りながら作成するため、自書や日付の要件そのものを気にする必要がなくなります。当事務所での公正証書遺言サポートは100,000円(税込110,000円)からで、証人2名分の費用を含みます。公証人手数料は別途かかります。自筆証書遺言サポートは70,000円(税込77,000円)からです。自筆と公正証書のどちらを選ぶか迷う場合は、判断基準をまとめた記事もあわせてご覧ください。→ 自筆と公正証書、どちらの遺言にするか決める3つの基準

もうすでに自筆で書いたものがあるという方は、その場で判断できなくても構いません。書いたものを一度見せていただければ、形式面の不備がないかを確認できます。

方法 特徴 費用の目安
法務局の保管制度 外形的なチェックがあり、検認が不要になる 保管申請の手数料が別途かかる
公正証書遺言 公証人が作成するため形式面の不備が起きにくい サポート100,000円(税込110,000円)〜+公証人手数料
書いたものを見せる すでに書いた自筆証書遺言の形式面を確認できる ご相談は初回60分無料

よくある質問

Q. パソコンで文章を作って、署名だけ手書きすれば有効になりますか?

A. なりません。財産目録の部分を除き、本文はすべて自分の手で書く必要があります。署名だけを自書しても、本文がパソコン作成であれば、その遺言は無効です。

Q. 財産の一覧だけはパソコンで作ってもよいと聞きました。それでも無効になりますか?

A. 目録の部分はパソコン作成や通帳のコピーで作ってよいと法律で認められています。ただし、目録のページごとに遺言者本人の署名と押印が必要です。この署名・押印が抜けていると、その目録は使えません。

Q. 訂正した箇所があるのですが、そのまま使って大丈夫でしょうか?

A. 訂正の方式は厳格に定められており、自己流の訂正は訂正がなかったものとして扱われることがあります。訂正が1か所でもある場合は、その部分だけを直そうとせず、最初から書き直すことをおすすめします。

Q. 遺言書を見つけたら、開けて中身を確認してもいいですか?

A. 開封したこと自体で遺言が無効になるわけではありません。ただし法務局の保管制度を使っていない自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認を経てから開ける必要があります。それより先に開封すると、過料の対象になることがあります。見つけたら、まず開けずにご相談ください。

Q. 夫婦それぞれの遺言を、同じノートの別のページに書くのはいいですか?

A. 証書が分かれていれば問題ありません。共同遺言として禁止されるのは、1つの証書に2人以上の遺言がまとめて書かれている場合です。別の用紙、あるいは製本が別であれば、それぞれ独立した遺言として扱われます。

まとめ

  • 自筆証書遺言は、全文・日付・氏名を自分の手で書き、押印することで効力を持つ
  • 日付が特定できない書き方、共同遺言、訂正方式の誤りは、遺言そのものを無効にする
  • 財産の特定不足や、検認前の開封は、無効にはならなくても手続きの支障になる
  • 財産目録の部分だけはパソコンでの作成が認められている。ただし毎ページへの署名・押印が必要
  • 不安な場合は、法務局の保管制度や公正証書遺言への切り替え、書いたものの確認という選択肢がある

一つひとつは難しい決まりではありません。順番に確認していけば、防げる無効がほとんどです。

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