この記事の監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)
最終更新日:2026年8月23日 ※本記事は更新日現在の法令・実務に基づき内容を確認しています。
公正証書遺言を作ろうと考えたとき、まず気になるのが費用です。
実は、自分だけで手続きを進めれば、財産の価額に応じた公証人手数料だけで作れます。専門家に文案づくりや手続きを任せると、これに司法書士報酬100,000円(税込110,000円)〜が加わります。
何がいつでもかかり、何が依頼したときだけかかるのか。その境目を、順番に説明します。
この記事のポイント
- 公正証書遺言で欠かせないのは、公証人手数料だけです
- 司法書士報酬は、文案作成や手続きを任せる場合にかかる費用です
- 証人2人以上の立会いが必須ですが、自分で用意できれば費用はかかりません
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結論:欠かせないのは公証人手数料だけです
公正証書遺言の費用は、公証人手数料・司法書士報酬・証人の費用という、性質の違う3つでできています。
このうち、誰が作っても発生するのは公証人手数料だけです。文案づくりから証人の手配まで自分で行えば、司法書士報酬も証人の費用もかかりません。
司法書士報酬は、遺言の内容を法的に有効な形の文案にまとめ、公証役場との調整や必要書類の準備を専門家に任せる場合の費用です。証人の費用は、頼める相手が身近にいない場合にだけ発生します。
つまり総額は、「どこまで自分でやるか」で変わります。まず内訳を隠さずに示したうえで、依頼した場合に何が変わるのかを順番に説明します。
「専門家に頼んだほうがいい」という結論を急ぐ前に、まずは自分でやった場合にいくらで済むのかを正確に知っておくことが、後悔しない選び方につながります。そのうえで、報酬を払って何を任せられるのかを、具体的に見ていきます。
公証人手数料の決まり方、自分で作る場合の具体的な手順、司法書士に頼むと変わること、総額の比較、自分に向いているのはどちらかの順番で説明します。
公証人手数料——財産の価額で決まり、これだけはかかります
公証人手数料は、公証人手数料令という政令で、財産の価額に応じた金額が定められています。どの公証役場で作成しても、同じ財産の価額であれば手数料は同じです。
遺言で財産を受け取る人が複数いる場合は、受け取る人ごとに手数料を計算し、それを合計します。財産を分ける人数が多いほど、手数料も増える仕組みです。
さらに、遺言の場合は「遺言加算」があります。財産の総額が1億円までのときは、上で計算した合計額に13,000円が加算されます。
手数料そのものは財産の価額で段階的に決まっており、いちばん下の区分(財産の価額が50万円以下)で3,000円です。正確な金額は財産の内容と受け取る人の数で変わるため、一律の早見表はここには載せていません。公証役場に財産の内容を伝えると概算を教えてもらえます。当事務所にご相談いただいても、概算をお伝えできます。
目安として、財産をすべて1人に渡すだけの内容で、財産の価額がいちばん低い区分(50万円以下)に収まる場合を考えてみます。この場合、区分ごとの手数料3,000円に、遺言加算13,000円を足した16,000円が、公証人手数料のおおよその下限になります。財産の価額が上がったり、受け取る人が増えて計算を合算する回数が増えたりすると、その分だけ手数料も上がっていきます。
不動産や預貯金、株式など、財産の種類が多い方ほど、価額の合計も受け取る人の数も増えやすく、手数料は高めになる傾向があります。財産が少ない方や、渡す相手が1人だけの方は、手数料も低い区分に収まりやすくなります。
概算を知りたいときは、財産の種類と価額のおおよそ、誰に何を渡すかを伝えると、公証役場でも当事務所でも見当をつけてもらえます。不動産があれば固定資産評価証明書の価額、預貯金はおおよその残高が分かれば十分です。正確な評価額が分からない段階でも、概算の相談はできます。
体調が悪く公証役場に出向けない場合は、公証人が自宅や病院まで出張して作成することもできます。この場合は、遺言加算を除いた手数料が1.5倍になることがあり、これに旅費(実費)と日当が加わります。日当は1日20,000円、4時間までなら10,000円です。入院中の方や、足腰が弱って外出が難しい方が主にこの方法を選びます。出張が必要かどうかも、事前の相談で確認しておくと安心です。
この公証人手数料は、自分で作る場合も、司法書士に依頼する場合も、同じだけかかります。依頼する・しないで変わるのは、このあとの司法書士報酬の部分だけです。
自分で作る場合、何をどこまでやることになるのか
自分で公正証書遺言を作る場合、おおまかに次の5つを自分でこなすことになります。
- 遺言の内容を文章にする —— 誰に何を渡すか、下書きを自分で作ります。
- 公証役場と打合せをする —— 下書きをもとに、公証人と内容や日程を調整します。
- 必要書類を集める —— 戸籍謄本や不動産の資料などを、自分で取り寄せます。
- 証人2名を手配する —— 条件に合う証人を、自分で探します。
- 公証役場で作成する —— 当日、公証人・証人の前で内容を確認し、署名・押印します。
この5つを自分で行えば、かかるのは公証人手数料だけです。司法書士報酬はかかりません。
当日の流れも、あらかじめ知っておくと安心です。遺言者が公証人に口頭で遺言の内容を伝え、公証人がそれを筆記して、遺言者と証人の前で読み聞かせます。内容に誤りがなければ、遺言者と証人が署名・押印して完成します。
公正証書遺言の作成には、証人2人以上の立会いが必要だと法律で決まっています。
民法第969条
公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
文案には、誰にどの財産を渡すかを、財産ごとに具体的に書きます。相続人でない人に財産を渡す場合は「遺贈する」と書くのが基本です。「実家を長男に」のように大まかに書くと、法律上は有効でも、名義変更の手続きで使えないことがあります。詳しくは遺言が無効になる書き方とは?で説明しています。
ただし、実際にやってみると、つまずきやすい場所がいくつかあります。
1つ目は、文案づくりです。法律上有効な内容にするだけでなく、遺留分への配慮や、財産が予定どおり残らなかった場合の備え(予備的遺言)まで考える必要があります。公証人は、持ち込んだ文案を法的な形式に整えてはくれますが、「この分け方で家族がもめないか」という中身の相談までは担当しません。遺留分について詳しくは、遺留分とは? 遺言があっても渡さざるをえない取り分もご覧ください。
2つ目は、公証役場との日程調整です。平日の日中にしか対応していないため、仕事をしている人は何度か休みを取る必要があります。財産の内容を伝える打合せと、実際に作成する当日とで、少なくとも2回は公証役場とやり取りすることになります。
3つ目は、証人探しです。財産を受け取る家族やその配偶者は証人になれないため、身近な人に頼みにくいという事情があります(詳しい条件は次の見出しで説明します)。友人や知人に頼む場合も、遺言の内容を他人に知られることに抵抗がある方は少なくありません。
これら3つは、法律の知識がなくても乗り越えられないわけではありません。時間をかけて調べ、平日の休みを確保し、頼める相手を見つけられれば、公証人手数料だけで公正証書遺言を作れます。逆に言えば、この3つのどれかで詰まりそうな方が、司法書士に依頼する対象になります。
必要書類の集め方も、自分で行う場合はあらかじめ把握しておくと安心です。自分の戸籍謄本、財産を渡す相手との関係が分かる戸籍、印鑑証明書のほか、不動産があれば登記事項証明書や固定資産評価証明書などを準備します。取得先は本籍地や不動産の所在地の役所・法務局で、郵送でも取り寄せられますが、窓口の受付は平日が中心です。
司法書士に頼むと、その報酬で何が変わるのか
司法書士に依頼すると、公証人手数料に司法書士報酬100,000円(税込110,000円)〜が加わります。この報酬に含まれるのは、次の4つです。
- 文案の作成(無効にならない書き方・遺留分への配慮・予備的遺言・遺言執行者の指定)
- 公証役場との打合せの代行
- 証人2名の手配
- 必要書類の収集
文案の作成では、法律的に有効な形にするだけでなく、遺留分を侵害していないか、財産が予定どおり残らなかった場合の備え(予備的遺言)まで確認します。あわせて、亡くなったあとに遺言の内容を実際に実行する遺言執行者を指定するかどうかも整理します。
遺言執行者を指定しておくと、預貯金の解約や不動産の名義変更を、相続人全員の署名や実印を集めなくても進められる場合があります。指定しない場合、実行の段階で相続人全員の協力が必要になり、1人でも連絡が取れない、応じてもらえないという事態が起きると、手続きが止まってしまいます。
公証役場との打合せは平日日中に何度かやり取りが必要になりますが、司法書士が窓口になるため、自分で役場へ足を運ぶ回数は減ります。
証人2名は、当事務所が用意します。証人には条件があり、誰でもなれるわけではありません。
民法第974条
次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
一 未成年者
二 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
三 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
財産を受け取る家族やその配偶者は証人になれないため、身近な人に頼みにくいという事情があります。当事務所では、司法書士報酬に証人2名分の費用をあらかじめ含めているため、この心配がなくなります。
戸籍や不動産の資料集めも任せられるため、平日に役所や公証役場へ何度も足を運ぶ手間が減ります。自分で行うと、公証役場への来訪(打合せ・作成当日)に加えて、戸籍は本籍地の役所、評価証明書は不動産の所在地の役所というように、窓口ごとに訪ねる先が分かれます。依頼すると、これらの窓口対応をまとめて引き受けます。
差額で買っているのは、争いを防ぐ工夫の分と、平日に何度も足を運ばずに済む時間です。
遺言のほかにも生前対策全体を考えたい方は、生前対策のページもご覧ください。
ご自身の財産で総額がどれくらいになるか、目安を知りたい方は無料相談でお伝えできます。→ 相談を予約する
総額を3つのケースで比べる
自分でどこまで行うかによって、総額の考え方は3つに分かれます。当事務所の料金と公証人手数料は、それぞれ確定している金額だけを示し、総額を勝手に足した数字は載せていません。
| ケース | 文案・手続き | 証人 | 総額の考え方 |
|---|---|---|---|
| ①すべて自分で行う | 自分で作成・自分で手続き | 自分で2名用意 | 公証人手数料のみ |
| ②司法書士に依頼 | 司法書士が作成・手続きを代行 | 司法書士が手配(2名分込み) | 司法書士報酬100,000円(税込110,000円)〜+公証人手数料 |
| ③証人だけ頼む | 自分で作成・自分で手続き | 公証役場に手配を依頼 | 公証人手数料+証人手配の費用(公証役場にご確認ください) |
①がいちばん費用を抑えられますが、文案作成から証人探しまで、すべて自分で行う必要があります。②は司法書士報酬が加わる代わりに、文案の作成や打合せ、証人の手配までまとめて任せられます。③は文案や手続きは自分で行い、証人の手配だけを頼む方法で、公証役場に相談すると案内してもらえます。
先ほどの例(財産の価額が低い区分で、公証人手数料の目安が16,000円になるケース)で考えると、①ならその16,000円だけで完成します。②なら、16,000円に司法書士報酬100,000円(税込110,000円)を足した額が目安です。財産の価額が上がれば、①・②とも公証人手数料の部分が増えていきます。
③は、文案づくりや書類集めは自分でできるものの、条件に合う証人だけが見つからないという方に向いています。公証役場によって案内できる範囲が異なるため、事前に電話などで確認しておくと当日になって慌てずに済みます。
このほか、戸籍謄本など必要書類の実費がかかります。当事務所に取得代行をご依頼いただく場合は、1通2,000円(税込2,200円)〜の報酬に発行手数料の実費が加わります。自分で取り寄せる場合は、この報酬はかかりません。
自分でよい場合、頼んだほうがいい場合
ここまでの内容を踏まえると、次のような人は自分で作っても十分です。
- 財産を渡す相手が1人か2人で、分け方に迷いがない
- 相続人同士の関係が良好で、遺留分を侵害する心配がない
- 平日に公証役場へ何度か行く時間がとれる
- 条件に合う証人を2人、自分で頼める
反対に、財産を渡す相手が3人以上いる場合や、離婚・再婚・認知した子がいるなど家族関係が複雑な場合は、遺留分でもめる可能性を見落としやすくなります。不動産や自社の株式など、書き方を誤ると手続きに支障が出る財産があるときも同じです。平日に休みを取りにくい方や、体調面で何度も出向くのが難しい方も、依頼したほうが負担は小さくなります。
例えば、自宅と預貯金だけを配偶者1人に渡す内容で、他の相続人との関係も良好なら、自分で作ることも十分検討できます。反対に、先妻との間に子どもがいる、事業用の不動産や自社の株式が含まれる、といったケースでは、遺留分の計算や配慮が必要になりやすく、専門家の視点が役立ちます。
なお、自分で作った場合と司法書士に頼んだ場合とで、できあがる公正証書遺言そのものの効力に違いはありません。公証役場で作成する以上、どちらも同じ公文書です。違うのは、内容が家族の実情に合っているかどうかです。自分で作る場合も公証人が形式面は確認しますが、遺留分への配慮など中身の工夫までは相談できません。
迷う場合は、無料相談で財産の内容をお聞かせいただければ、自分で進めても大丈夫そうか、依頼したほうがよいかをお伝えします。そもそも公正証書遺言が自分に向いているか迷う場合は、自筆と公正証書、どちらにするか決める3つの基準から確認する方法もあります。
よくある質問
Q. 公正証書遺言の費用は、結局いくらになりますか?
A. 自分ですべて行えば、公証人手数料だけで済みます。財産の価額がいちばん低い区分では、手数料3,000円に遺言加算13,000円を足した16,000円が目安です。財産が多いほど、また受け取る人が多いほど、金額は上がります。正確な金額は財産の内容と受け取る人の数によって変わるため、一律の金額はここではお伝えしていません。公証役場や当事務所にご相談いただくと、概算をお伝えできます。司法書士に依頼する場合は、これに司法書士報酬100,000円(税込110,000円)〜が加わります。
Q. 証人を自分で用意できない場合、司法書士に頼むしかありませんか?
A. いいえ。友人・知人でも、民法974条の欠格事由に当たらなければ証人になれます。財産を受け取る家族やその配偶者、未成年者などは証人になれませんが、それ以外の友人・知人であれば頼めます。頼める相手がいない場合の選択肢として、司法書士事務所のほか、公証役場に手配を依頼する方法もあります。当事務所では、司法書士報酬に証人2名分をあらかじめ含めています。
Q. 遺言執行者を指定すると、費用は変わりますか?
A. 遺言執行者は、亡くなったあとに遺言の内容を実際に実行する役割です。指定すること自体で、この記事で説明した公証人手数料や司法書士報酬が変わることはありません。ただし司法書士などの専門家を遺言執行者に指定する場合、実行する段階になって、財産の内容や手続きの手間に応じた報酬が別途発生することがあります。金額は個別にご案内しています。家族を遺言執行者に指定すれば、この報酬はかかりません。
Q. 自筆証書遺言のほうが安く済みますか?
A. 自筆証書遺言は公証人手数料がかからない分、作成時の費用は抑えられます。すべて自分で書けば、紙代程度で作成できます。当事務所の自筆証書遺言サポートは70,000円(税込77,000円)からです。ただし書き方を誤ると、無効になったり使えなくなったりするおそれがあります。公正証書遺言は、作成時の費用がかかる代わりに、公証人が形式面を確認するため、この心配が少なくなります。どちらの形で残すかで迷っている方は、自筆と公正証書、どちらの遺言にするか決める3つの基準もあわせてご覧ください。
Q. 遺言を作ったあと、相続の手続き費用もかかりますか?
A. 遺言は財産の分け方を決めるものです。実際に亡くなったあとの、不動産の名義変更や預貯金の解約といった相続手続きの費用は、この記事で説明した費用とは別にかかります。遺言を作る段階と、実際に相続が起きた段階とで、費用が発生するタイミングが分かれると考えておくと分かりやすくなります。不動産の名義変更にかかる登録免許税や実費の目安は、相続登記の費用相場はいくら?で説明しています。
Q. 公証人手数料は、いつ・どこで支払いますか?
A. 公証人手数料は、公正証書の正本などを受け取るときに、公証役場で支払います。現金のほか、クレジットカードも使えます。作成の当日にまとめて支払う形になるため、事前に金額の見当をつけておくと、当日あわてずに済みます。司法書士報酬は、公証役場での作成日より前に精算をお願いすることが多くなっています。詳しい支払い方法は、ご依頼の際に案内します。
まとめ
- 公正証書遺言で欠かせないのは、公証人手数料だけ
- 司法書士報酬は、文案作成や手続き代行を任せる場合にかかる費用
- 証人2人以上の立会いが必須で、自分で用意できれば費用はかからない
- 司法書士に頼むと、争いを防ぐ工夫と、平日に足を運ぶ手間の削減が手に入る
- 当事務所は、証人2名分を含めて司法書士報酬100,000円(税込110,000円)から
費用の内訳を知っておくと、当日の相談で何を確認すればいいかがはっきりします。
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