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財産管理を任せる人の変更と引継ぎ【司法書士が解説】

財産管理を任せる人の変更と引継ぎ(司法書士 岩田剛知の写真付きアイキャッチ)

監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)

ページ更新日:2026年10月9日 一般的な手続きの解説であり、個別の事情によって必要な対応は異なります。

財産管理委任契約の受任者とは、本人から管理を引き受ける人です。その人を変更するときは、通帳を渡し直すだけでは済まない場合があります。

旧契約の終了と新しい相手への依頼を分け、残金と記録、本人の意思、金融機関の手続きを整理します。

この記事のポイント

  • 旧契約の終了と新しい契約を分ける
  • 残金、支出、未払い、通帳などを一覧で引き継ぐ
  • 旧代理権の終了と金融機関の登録変更を確認する

解約日や返金明細が分からない場合も、現在の契約と管理状況から整理できます。無料相談を申し込む

1. 結論:契約・権限・保管物を一緒に切り替える

この章でわかること 通帳を渡すだけで終わらない理由を説明します。

財産管理委任契約は、生活費の支払や財産の管理を相手に頼む契約です。同じ名前の独立した制度があるのではなく、民法の委任などを基に契約内容を決めます。受任者を変えるときは、契約で頼んだ仕事と代理権の範囲を確かめましょう。

民法651条では、委任は各当事者がいつでも解除できます。相手に不利な時期の解除では、損害賠償が必要になる場合があります。委任者が、受任者の利益も目的とする委任を解除する場合も同様です。ここでいう受任者の利益からは、単に報酬を得るという利益を除きます。ただし、やむを得ない事由があれば、これらの賠償義務は生じません。解除できることと、費用や引継ぎの問題が何も残らないことは別です。

新しい相手に頼む仕事や代理権は、本人と新しい相手が改めて決めます。財産の処分、口座の操作、日々の支払などを分け、必要な範囲を確認してください。以前の受任者の名前を書き換えるだけで、同じ権限が移るわけではありません。

家族が管理する場合の記録は、親の通帳を管理するときの記録も参考になります。変更時は、残高と支出をたどれる状態で引き継ぐことが大切です。

参考:民法643条・651条

2. 終了条項と任意後見契約の有無を確認する

この章でわかること 契約ごとに必要な終了手続きを確認します。

書面・登録 確認する内容
財産管理の委任契約 終了方法、報酬、費用、報告、返還
委任状・代理権の資料 口座や取引ごとの権限と終了
任意後見契約 監督人選任の前後と解除方法
金融機関の登録 代理人の変更・取消しの方法

契約書で、誰へどの方法で終了を伝え、いつから仕事を止めるかを確認します。家族へ口頭で伝えることと、旧受任者へ契約終了を伝えることは同じではありません。2020年4月1日より前に結んだ契約は、契約時期に関する経過措置や特約も確認してください。現行法の一般説明だけで、古い契約の結論を決めることはできません。

委任による代理権は、委任が終了すると消滅します(民法111条2項)。委任状や金融機関の代理人登録も確認し、旧受任者が書類を持っている場合は関係先への連絡方法を整理します。

同じ相手と任意後見契約も結んでいるなら、財産管理委任契約とは分けて確認します。任意後見契約は公正証書で結びます。監督人が選任される前は、本人または任意後見受任者が、公証人の認証を受けた書面で解除できます。選任後は、本人または任意後見人が、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て解除できます。家族だけで解除できるわけではなく、財産管理契約を終えただけで任意後見契約も終了するわけではありません。新しい任意後見人へ自動的に移ることもありません。

現在どの契約で支援しているかは、見守り・財産管理・任意後見の役割も参考に整理してください。

参考:民法111条・112条・651条・655条 / 任意後見契約に関する法律3条・9条 / 法務省・債権法改正の施行日と経過措置

3. 残金・支出・未払いを旧受任者と照合する

この章でわかること 切替日までの報告と精算を分けて整理します。

旧受任者には、管理の経過と結果、切替時点の残高を確認します。民法645条は、委任者から求められたときの状況報告と、委任終了後の経過・結果の報告を定めています。

残っている金銭は、返す残金、契約に基づく報酬、立替費用に分けて整理します。報酬を受け取る合意がなければ、原則として報酬は請求できません。報酬の合意がある場合、途中で委任が終了すると、既に行った仕事の程度に応じて請求できることがあります(民法648条)。立て替えた必要経費を返してもらう請求は、報酬とは別です(同650条)。損害賠償とも混同せず、契約条項や支出記録を確認してください。金額は一律には決められません。

領収書や振込記録を見て、誰のために何を支払ったかを照合します。口座引落しや公共料金の請求が続く場合は、切替後の支払を誰が確認するか、予定表と未処理一覧に残します。引落しがすぐ止まるとは限らないため、二重払いと支払漏れの両方に気をつけます。

差額や説明に争いがある場合は、質問・回答と根拠資料を記録します。金銭管理の記録例は家族の金銭管理の記録も参考になります。

参考:民法645条・648条・650条

残金と保管資料の引継ぎを整理したい方は、生前対策の相談内容を確認する

4. 通帳・実印・書類・データを一覧で受け渡す

この章でわかること 受渡しの記録と代理権の変更を分けます。

民法646条は、委任事務で受け取った金銭や物の引渡しを定めています。預かった物の保管や返還は契約内容も確認し、受渡し日と受取人を記録します。返還先は本人か、正当に受領できる代理人です。新しい担当者へ渡す場合も、その権限を確かめてください。

次の照合表を使い、残金と資料、未処理の支払を分けて整理します。分からない項目は未確認として残し、返還が済んだ項目と区別します。

項目 照合する資料 引継ぎ記録に残す内容
残高・現金 通帳、口座明細、現金の保管記録 確認日、金額、返還先
支出 出納記録、領収書、振込記録 支払日、支払先、用途
未払い・立替・報酬 請求書、契約条項、立替の記録 費目ごとの内訳、次の支払担当
通帳・実印・書類 通帳、カード、実印、契約書の一覧 原本と写しの別、受取人、受領日
電子明細・データ 保存場所、利用権限の資料 返還・保管方法、金融機関への確認事項
引継ぎ全体 終了通知、受渡しの記録 終了日、引継日、未確認・未完了の項目

ネット口座や電子明細の利用権限・保管資料も確認します。暗証番号やパスワードを渡すだけでは、正式な代理手続きは済みません。金融機関の案内に沿って、代理人登録や利用方法を確かめてください。個人情報を含む電子データの返還・保管方法も決めます。

保管物の返還と、金融機関での代理人変更は別の手続きです。本人確認や必要書面は金融機関ごとに確認します。デジタルの財産や契約の整理はデジタルの財産と契約の整理も参考になります。

参考:民法646条

5. 旧権限の終了と新しい管理内容を関係先へ伝える

この章でわかること 支払担当と切替日を先に整理します。

1. 旧契約と代理権を把握する

2. 新担当者の受入れと銀行手続きの見通しを確認する

3. 終了日・通知・引継ぎの時期を調整する

4. 報告、残金、資料を受け渡す

5. 金融機関などで代理人を変更する

終了を先に済ませても、支援が途切れないとは限りません。新しい相手が引き受けられる内容や金融機関の手続きにかかる時間を確認し、終了日と引継ぎを調整します。委任終了後でも、対応を待てない差し迫った事情がある場合があります。この場合、民法654条は、本人側が事務を処理できるまで、旧受任者などが必要な措置をとる義務を定めています。

本人と旧受任者への終了連絡と、金融機関の代理人変更は分けて行います。委任が終わったことを相手に主張するには、通知するか、相手が既に知っている必要があります(民法655条)。金融機関などには、代理人の変更・取消しに必要な書類と手続きを個別に確認します。

民法112条では、代理権の終了を知らず、その点で過失のない第三者が、元の代理権の範囲内で取引した場合に、本人が責任を負うことがあります。終了を第三者へ知らせれば、あらゆる場合に責任を免れるということではありません。実際の責任は取引の内容などによります。

新しい相手とは、管理する口座、支払の範囲、報告方法、資料の保管方法を決めます。終身サポート事業者へ依頼するときは、国のガイドラインも参考にできます。管理の範囲、記録の保存、本人が報告を確かめる方法を契約書で具体化します。

生前対策の相談内容を確認し、契約と実際の管理方法をそろえましょう。

参考:民法111条・112条・654条・655条 / 消費者庁・高齢者等終身サポート事業者ガイドライン

6. 本人の判断力が低下したときは変更方法も確認する

この章でわかること 本人の意思と、代理できる人の権限を確認します。

契約の意味と結果を理解する能力を意思能力といいます。民法3条の2では、意思表示をした時に意思能力がなかった場合、その法律行為は無効とされています。本人が理解しやすい説明を工夫し、意思を確かめてください。家族というだけでは本人を代理する権限はありません。

判断力が低下しただけで、以前の委任契約が当然に終了するとは限りません。民法653条の終了事由や契約条項を確認し、これまでの契約の扱いと新たな契約が可能かを分けて考えます。任意後見契約の効力が生じるのは、任意後見監督人が選任された時です。法定後見などを利用中なら、代理権を一律に考えず、現在の審判書や契約書に記載された権限の範囲を確認します。

本人の理解や希望、旧受任者からの資料返還に不明点があれば、状況に合った進め方を整理します。契約・資料の整理を超えて交渉や裁判の代理が必要な場合は、当事務所が窓口となり、提携弁護士をご紹介します。

信託と任意後見の支援範囲、生前対策の全体像も参考に、今誰がどの根拠で管理しているかを整理してください。

参考:民法3条の2・99条・113条・653条 / 任意後見契約に関する法律2条 / 法務省・後見の各類型と任意後見

7. よくある質問

この章でわかること 変更時に迷いやすい点を整理します。

Q. 受任者を変えると違約金がかかりますか?

契約の終了条項と特約を確認してください。報酬、立替費用の精算、損害賠償はそれぞれ別の問題です。受任者の変更だけを理由に、一律の違約金が発生するとはいえません。請求の根拠と金額は、契約内容や解除の事情によって異なります。

Q. 通帳を返してもらえば変更は終わりますか?

保管物の返還だけでは、旧契約や代理権の終了、金融機関の代理人登録変更は済みません。残金と支出の報告、新しい管理内容も確認します。

Q. 任意後見の相手も同時に変わりますか?

財産管理委任契約と任意後見契約は別に確認します。監督人選任前は本人または任意後見受任者が、公証人の認証を受けた書面で解除できます。選任後は本人または任意後見人が、正当な事由のある場合に家庭裁判所の許可を得て解除します。新しい相手へ自動的に移ることもありません。

8. まとめ

  • 契約の終了、代理権、任意後見の解除方法をそれぞれ確認する。
  • 残金・報酬・立替費用を分け、支出や未払いの記録を引き継ぐ。
  • 通帳などの受渡しと金融機関の登録変更を行い、本人の意思を確かめる。

判断に迷ったときは

本人が変更内容を理解できているか、旧契約の終了日や返金明細が分かるかによって、先に整理することは変わります。お手元の状況に応じて、契約や管理記録を確認します。

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参考にした公的資料

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