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死後事務委任契約は公正証書にすべきか。私文書との違いと費用【司法書士が解説】

この記事の監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)

最終更新日:2026年9月4日 ※本記事は更新日現在の法令・実務に基づき内容を確認しています。

死後事務委任契約は、公正証書にしなくても、私文書のままで法律上は有効です。それでも多くの専門家が公正証書での作成をすすめるのには理由があります。

私文書と公正証書で何が変わるのか、公正証書にすると費用はいくらかかるのか。当事務所の契約報酬は330,000円(税込)からです。実際の数字とあわせて、司法書士が順番に説明します。

この記事のポイント

  • 死後事務委任契約は、私文書でも法律上有効です。公正証書にすることは義務ではありません
  • それでも公正証書にすると、本人の意思の証明や紛失対策など、実務上のメリットがあります
  • 公正証書にする場合の公証人手数料は、目的の価額を算定できない契約として扱われることが多く、数千円程度です

公正証書にすべきか迷ったまま契約を先延ばしにする前に、まずは無料相談でご状況をお伺いします。→ 無料相談の詳細を見る

1. 結論:私文書でも有効です。それでも公正証書にする実務上の理由があります

この章でわかること 私文書でも無効ではないこと、公正証書を選ぶ人が多い理由

死後事務委任契約は、遺言のように公正証書での作成が定められた契約ではありません。当事者どうしが署名した私文書のままでも、契約として有効に成立します。

それでも、専門家に相談すると公正証書での作成をすすめられることがほとんどです。理由は、契約の効力そのものではなく、亡くなったあとに、その契約をどう使うかにあります。

結論を先に言うと、次のようになります。

  1. 私文書でも契約は有効 —— 法律上、公正証書にする義務はありません。
  2. 公正証書にすると証明力が上がる —— 本人が内容を理解して契約したことを、公証人が確認した記録として残ります。
  3. 実務では公正証書のほうが動きやすい —— 金融機関や施設の窓口で、その場で内容を確認してもらいやすくなります。
  4. 公証人手数料は数千円程度、当事務所の報酬は330,000円(税込)からです。

連絡が取れない相続人がいる、というような特別な事情がなくても、公正証書を選ぶ方は少なくありません。次の章から、なぜ「制度」ではなく「契約」なのか、私文書と何が違うのか、順番に説明します。

2. 死後事務委任契約とは——民法の委任契約が根拠であること

この章でわかること 民法の委任契約(643条以下)が根拠になっていること

死後事務委任契約という名前の法律や制度が、どこかに定められているわけではありません。民法の委任契約の仕組みを使って、亡くなったあとの事務まで頼めるようにした契約です。この構造は、公正証書にするかどうかを考えるうえでも欠かせません。

民法第643条
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

参考:e-Gov法令検索「民法」第643条

委任契約には、当事者のどちらかが亡くなると契約が終わる、という原則があります。

民法第653条第1号
委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一 委任者又は受任者の死亡

参考:e-Gov法令検索「民法」第653条

この原則どおりだと、契約した本人が亡くなった時点で、死後の事務を頼む契約も終わってしまうことになります。しかし、最高裁判所の判例は、この点について別の判断を示しています。

自分が亡くなったあとの事務まで含めて委任する契約は、本人が亡くなっても契約を終了させない合意を含んでいると解される、という判断です。この判断により、死後事務委任契約は、当事者どうしの合意があれば有効に成立し、本人が亡くなったあとも効力を持ち続けると考えられています。

「身寄りがない」と思っていても、戸籍をたどると血縁上の相続人が見つかることがあります。相続人の範囲については独身の方の相続は誰に渡るのかの記事で説明しています。

ここまでは「制度ではなく契約であること」の説明です。頼めること・頼めないことの具体的な内訳は、死後事務委任契約とは? 頼めること・費用・遺言との違いの記事で詳しく説明しています。ここからは、公正証書にすべきかどうかに絞って説明します。

3. 私文書と公正証書、法律上の効力の違い

この章でわかること 契約としての有効性は同じ。違うのは証明力と原本の保管方法

私文書とは、公証人が関わらずに、当事者どうしで作成した契約書のことです。委任契約は口頭の合意だけでも成立するとされていますが、実務では書面を残します。

私文書と公正証書は、契約としての効力に差はありません。どちらも、民法643条の委任契約として有効に成立します。差が出るのは、契約を結んだあとの場面です。

比べる点 私文書 公正証書
契約としての効力 有効 有効
作成方法 当事者どうしで作成 公証人が内容を確認して作成
本人の意思の証明力 本人が争えば証明が難しくなることがある 公証人が本人確認・意思確認をした記録が残る
原本の保管 自分や受任者が保管する 公証役場で長期間保管される
紛失したとき 再発行できない 正本・謄本を再発行できる
費用 専門家への報酬のみ 専門家への報酬に加えて公証人手数料がかかる

表のとおり、私文書だからといって「効力が弱い」わけではありません。ただし、亡くなったあとに困るのは本人ではなく、契約の内容を初めて目にする受任者や、金融機関・施設の窓口です。本人はすでにいないため、契約の内容や本人の意思を、その場で確かめる術がありません。

こんな方は、公正証書を検討する価値があります

  • 血縁上の相続人がいる、または遠方にしかいない
  • 受任者が家族ではなく、専門家や知人になる予定
  • 入院先や施設に、契約の内容をすぐ示せるようにしておきたい
  • 公正証書遺言もあわせて作る予定がある

次の章では、公正証書にする実務上の理由を具体的に見ていきます。

4. それでも公正証書にする4つの理由

この章でわかること 本人の意思の証明・紛失対策・窓口対応・受任者の動きやすさの4点

私文書でも有効だと分かったうえで、なぜ公正証書を選ぶ人が多いのか。理由は次の4つに整理できます。

公正証書にする4つの理由本人の意思を、公証人が確認した記録として残せます原本が公証役場に保管され、なくしても再発行できます金融機関や施設の窓口で、内容をすぐ確認してもらえます受任者が、契約の存在と内容をすぐに示せます口頭の合意だけでは、あとから意思が疑われることがあります私文書は紛失すると、契約の内容を証明できなくなります私文書だと、本人が作成したものか確認に時間がかかることがあります正本を持っていれば、権限をその場で証明できます私文書でも、法律上は無効ではありません
死後事務委任契約を公正証書にする、4つの実務上の理由

理由1:本人の意思を、公証人が確認した記録として残せる

公正証書は、公証人が本人に内容を確認しながら作成します。あとになって「本人の意思ではなかったのでは」と疑われる場面を減らせます。判断力が十分あるうちに作成しておくことが前提ですが、その事実を第三者が確認した記録として残せる点は、私文書にはない強みです。

理由2:紛失しても、原本が公証役場に残っている

私文書は、自分や受任者が原本を保管します。紛失すると、契約の内容を証明できなくなります。公正証書の原本は公証役場で長期間保管されるため、正本や謄本をなくしても再発行を請求できます。

理由3:金融機関や施設の窓口で、内容をすぐ確認してもらいやすい

受任者が入院費を精算したり、施設に契約の内容を伝えたりする場面では、窓口の担当者が契約書の内容を確認します。私文書だと、本人が本当に作成したものかどうか、窓口側で判断がつきにくいことがあります。公正証書であれば、公証人が関与した書類として、その場で受け付けてもらいやすくなります。

理由4:受任者が、契約の存在と内容を第三者に示しやすい

受任者は、依頼者が亡くなったあとに初めて動き始めることがほとんどです。周囲の親族や関係機関に「自分が受任者である」ことを示す必要が出てきます。公正証書の正本を持っていれば、契約の内容と受任者の権限をその場で示せます。

4つの理由は、どれも「契約が無効になるかどうか」ではなく、亡くなったあとに、受任者が迷わず動けるかどうかに関わっています。次は、公正証書にする場合の費用を見ていきます。

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5. 公正証書にする費用——公証人手数料と当事務所の報酬

この章でわかること 公証人手数料は数千円程度。専門家への報酬は別にかかること

公正証書にする場合の費用は、大きく2つに分かれます。公証役場に支払う公証人手数料と、契約書の内容を整理する専門家への報酬です。

公証人手数料の考え方

公証人手数料は、契約で扱う財産の価額(目的の価額)をもとに決まる基本の手数料表があります。死後事務委任契約は、財産そのものを移転する契約ではないため、目的の価額を算定できない契約として扱われることが一般的です。

報酬の定めがない死後事務委任契約は、目的の価額を500万円とみなして計算します(公証人手数料令16条)。その区分の手数料13,000円の2分の1、つまり6,500円が基本の手数料です(同令18条の2)。これに、正本・謄本を紙で受け取る場合の交付手数料(1枚につき300円)が加わります。

参考:e-Gov法令検索「公証人手数料令」第16条・第18条の2

この金額は、目的の価額を算定できない契約として扱われた場合の目安です。契約の内容や公証役場の運用によって変わることがあるため、正確な金額を知りたい場合は、契約前に公証役場または当事務所へご確認ください。

当事務所の報酬

公証人手数料とは別に、契約内容の整理や公正証書の文案作成、公証役場との調整を専門家に依頼する場合は、その報酬がかかります。当事務所のエンディングサポート(死後事務)の費用は、次のとおりです。

費用の内訳 シンプルプラン スタンダードプラン
契約報酬(契約時) 330,000円(税込) 330,000円(税込)
預託金(契約時・実費分は別途加算) 330,000円(税込)+実費分 440,000円(税込)+実費分
サポート報酬(亡くなったあと) 330,000円(税込) 440,000円(税込)

公正証書の作成費用(公証人手数料)は、この報酬とは別にかかります。預託金が余った場合は、相続財産に持ち戻されます。当事務所では、お預かりした預託金を事務所の資金と分けて管理しています。契約する事務の範囲や、証人の手配を専門家に依頼するかどうかによって、実際にかかる総額は変わります。

詳しい費用の内訳、預託金を抑える方法は、死後事務委任契約の費用はいくらかの記事でも説明しています。費用の全体像は料金のご案内でも確認できます。

6. 遺言公正証書と同時に作る場合

この章でわかること 同じ機会に作ると、公証役場へ出向く回数を減らせること

死後事務委任契約とあわせて、遺言も公正証書で作る方は少なくありません。財産を誰に渡すかを決める遺言と、亡くなったあとの手続きを頼む死後事務委任契約は、役割が違うためです。

遺言は、財産を誰に渡すかを決める書類です。葬儀の手配や行政手続きといった「手続き」までは指定できません。この役割の違いは、死後事務委任契約とは? 頼めること・費用・遺言との違いの記事で詳しく説明しています。自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらを選ぶか迷っている場合は、自筆と公正証書、どちらの遺言にするか決める3つの基準の記事もあわせてご覧ください。

両方とも公正証書で作る場合、同じ公証役場・同じ日にまとめて手続きできることがあります。遺言公正証書には、証人2人以上の立会いが必要です(民法969条1号)。未成年者や推定相続人・受遺者とその配偶者・直系血族などは証人になれません(民法974条)。死後事務委任契約の公正証書についても、公証役場によっては証人を求められることがあるため、まとめて依頼する場合は必要な人数を事前に確認しておくと安心です。

当事務所の公正証書遺言サポートは、110,000円(税込)から(証人2名分の費用を含む。公証人手数料は別途)です。死後事務委任契約とあわせて依頼する場合の総額は、無料相談でお見積りします。

※遺言の方式は、令和8年法律第45号(2026年6月24日公布)で自筆証書遺言などの押印が任意になるなど、見直しが決まっています。施行日は公布から1年以内に政令で定められ、施行後にこの記事の内容も更新します。

7. 自分で作れるか・司法書士に相談したほうがよいこと

この章でわかること 自分でも作れるが、公証役場との調整は専門家が支援できること

死後事務委任契約は、司法書士だけが扱える手続きではありません。死後事務は司法書士の独占業務ではなく、行政書士や弁護士、民間の身元保証サービス事業者も受任者になれます。

契約書の文案は、法律で書き方が決められているわけではないため、自分で作成することもできます。ただし、頼みたい事務を具体的に書き込んでおかないと、受任者が実際には動けない、という事態が起こります。契約書に書いていない事務は、頼んだつもりでも実行してもらえません。

公正証書にする場合は、公証役場との事前の打ち合わせや、必要書類の準備が必要になります。たとえば、当日になって書類の不足に気づき、日を改めて出直すことになるケースもあります。この部分は、専門家に依頼すると、やり取りの回数を減らせます。

  1. 頼みたい事務を整理する —— 葬儀・入院費の精算・住まいの片づけなど、具体的に洗い出します。
  2. 契約書の文案を作成する —— 専門家に依頼する場合は、この段階で内容を確認しながら進めます。
  3. 公証役場と日程を調整する —— 必要書類を確認し、公証役場での日程を決めます。
  4. 公証役場で契約を締結する —— 公証人が内容を確認し、公正証書として作成します。

身元保証や任意後見とあわせて考えたい方は、入院・施設入居で身元保証人がいないときの記事も参考にしてください。終活全体の進め方は生前対策は何から始めればいいかの記事で整理しています。当事務所では、契約内容の整理から公証役場との調整まで、まとめてお任せいただけます。

8. よくある質問

この章でわかること 私文書からの切り替え、証人、費用負担についての疑問に答えます

Q. すでに私文書で契約しています。あとから公正証書に作り直せますか?

A. できます。あらためて内容を確認し、公証役場で手続きをやり直す形になります。私文書の内容をそのまま使えることが多いため、一から考え直す必要はありません。

Q. 証人は誰に頼めばよいですか?

A. 遺言公正証書には、証人2人以上の立会いが必要です(民法969条1号)。未成年者や推定相続人・受遺者とその配偶者・直系血族などは証人になれません(民法974条)。心当たりがない場合は、専門家に証人を依頼することもできます。死後事務委任契約の公正証書に証人が必要かどうかは、あらかじめ公証役場に確認しておくと安心です。

Q. 公正証書があれば、受任者は契約どおりに動いてくれますか?

A. 公正証書は、本人の意思を確認した記録として証明力を持ちますが、受任者が実際に動くかどうかとは別の問題です。信頼できる受任者を選ぶことが前提になります。

Q. 公証人手数料は誰が払いますか?

A. 一般的には、契約を結ぶ本人が負担します。専門家への報酬とあわせて、契約時にまとめて準備しておくとスムーズです。

Q. 身寄りがなくても、公正証書は作れますか?

A. 作れます。判断力があれば、家族の有無にかかわらず契約できます。受任者は、家族や親族に限らず、司法書士や行政書士など信頼できる専門家から選ぶこともできます。証人が見つからない場合も、専門家に依頼する方法があります。

9. まとめ

  • 死後事務委任契約は、私文書でも法律上有効です。公正証書にすることは義務ではありません
  • 公正証書にすると、本人の意思の証明や紛失対策など、実務上のメリットがあります
  • 公証人手数料は、目的の価額を算定できない契約として扱われることが多く、数千円程度です
  • 当事務所の契約報酬は330,000円(税込)から。預託金・サポート報酬は別途かかります
  • 遺言公正証書とあわせて作ると、公証役場に出向く回数を減らせる場合があります

まずは、頼みたい事務を整理するところから始めてください。

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死後事務委任契約そのものの仕組みは、こちらで詳しく説明しています。

死後事務委任契約とは? 頼めること・費用・遺言との違いを見る

遺言をどちらの形式にするか迷っている方は、こちらも参考にしてください。

自筆と公正証書、どちらの遺言にするか決める3つの基準を見る

身元保証や、終活全体の進め方については、こちらにまとめています。

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「身寄りがない」と思っていても相続人が見つかることがあります。

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