この記事の監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)
原稿更新日:2026年9月23日 ※法令・料金等は変更されることがあります。個別の事情はご相談ください。
死後事務委任契約を調べていくと、よく出てくるのが「預託金」という聞き慣れない言葉です。契約報酬とは別にまとまったお金を求められると分かり、足が止まった方もいると思います。
費用として考えられる主な項目は、契約報酬・公証人手数料・死後事務の報酬・預託金の4つです。一律に発生するわけではなく、公正証書にするか、預託金を設けるか、死後の事務をどこまで頼むかで変わります。報酬額を定める場合は手数料が変わります。公開料金例は、死後事務だけなら20万円台から、身元保証と死後事務を組み合わせると100万円を超える例まであります。ただし、契約範囲や実費・月額の扱いが違うため、統計的な平均ではありません。
この記事のポイント
- 契約報酬・公証人手数料・死後事務の報酬・預託金は、契約内容に応じて発生する可能性がある主な費目として整理します
- 預託金は実費の前払いで、設けるかどうかや残額の精算・返還条件は契約ごとに確認が必要です
- 公開料金例は20万円台から100万円を超える幅があり、同じ条件の平均ではありません
預託金の金額について、今の状況で概算をお伝えすることもできます。→ 無料相談の詳細を見る
1. 結論:主な費用項目と、契約ごとの違い
この章でわかること 主な費目は性質が異なり、発生の有無や金額も契約ごとに変わります
死後事務委任契約を検討すると、「結局いくら要るのか」が気になります。契約報酬・公証人手数料・死後事務の報酬・預託金は、費用として考えられる主な項目です。ただし、一律に発生するわけではなく、どの費目が大きくなるかも契約内容によって異なります。
ただし、預託金は通常、事務所への報酬とは分けて扱われます。葬儀費用や入院費の精算といった、実際にかかる費用をあらかじめ預けておくお金です。残額の精算・返還先・返還時期は契約書や事業者の規定によって異なります。
この違いを知らないまま見積もりを見ると、預託金の金額だけを見て「高い」と感じてしまいます。何のためのお金かが分かっていれば、金額の妥当性を落ち着いて判断できます。
他の費目は契約や事務の対価、預託金は実費に備えるお金です。契約を途中でやめたときの扱いも含め、各費目の精算条件は契約書で確認しましょう。
相談の場では、総額だけを聞いて終わってしまいがちです。どの費目がいくらで、そのうち何が戻る可能性のあるお金なのかを分けて聞くと、見積もりの中身を比べやすくなります。ここで取り上げる4つの主な費目がそれぞれ何のためのお金か、次の章で1つずつ見ていきます。
まず4つの主な費目の役割を整理します。そのあと、預託金の精算条件と必要額の考え方、公開料金例、契約前の確認点を説明します。ご自身の場合の総額は、委任範囲を決めたうえで個別に見積もってもらってください。
2. 主な費用項目を4つに分けて見る
この章でわかること 何のお金か・いつ払うか・戻るかを費目ごとに整理します
4つの主な費目を、「何のお金か」「いつ払うか」「精算・返還条件」の3つの軸で並べると、見積りの中身が分かりやすくなります。費目の有無、支払時期や返還条件は事業者・契約によって違うため、次の表は典型的な例として確認してください。
- 契約時に払う費目を確認する —— 契約報酬、公正証書を作る場合の公証人手数料、預託金の要否・額を分けて確認します。
- 死後に発生する費用も確認する —— 事務の報酬、葬儀・家財整理などの実費がどの資金から支払われるか契約書で確認します。
| 費目 | 何のお金か | 支払・精算の確認点 |
|---|---|---|
| 契約報酬 | 契約書を作り、内容を設計する報酬 | 支払時期・解約時の扱いを確認 |
| 公証人手数料 | 公正証書にする場合の費用 | 契約内容に応じた手数料を確認 |
| 死後事務の報酬 | 亡くなったあとに事務を行う対価 | 発生時期・支払原資を確認 |
| 預託金 | 葬儀費用・入院費の精算などに備える前払い | 管理方法・残額の精算と返還先を確認 |
公正証書で契約書を作成する場合、公証人手数料がかかります。死後事務委任契約のように、亡くなったあとの事務を委任する契約には、専用の手数料区分があります。遺言を公正証書で作る場合の費用は別に定められています。詳しくは公正証書遺言の費用はいくらかもあわせてご覧ください。
死後事務委任契約を公正証書にし、受任者への報酬額を契約書に定めない場合は6,500円です。報酬額を定める場合は、その金額をもとに手数料が変わります。公正証書にしない場合にこの手数料が当然かかるわけではありません。公証人手数料令は改定されることがあるため、最新の手数料表は日本公証人連合会で確認してください。
参考:日本公証人連合会「手数料」(2025年10月改定後の案内)
報酬と公証人手数料は役割が違い、預託金はさらに性質が異なります。見積りを比べるときは金額だけでなく、対象業務、追加費用、解約時の扱いまで確認しましょう。預託金は次の章で詳しく見ます。
3. 預託金とは何か、なぜ大きな金額になるのか
この章でわかること 預託金は報酬ではなく、実費の前払いです
預託金は、葬儀費用、入院費・施設利用料の精算、家財の片づけ、各種の解約にかかる実費を、あらかじめ受任者に預けておくお金です。本人が亡くなったあと、受任者が立て替えずに事務を進められるようにするための仕組みです。
実費の中身をもう少し具体的に見ると、葬儀社への支払い、入院していた病院や施設への精算が含まれます。ほかに、電気・ガス・水道や携帯電話の解約にともなう費用、家財の処分業者への支払いなども含まれます。頼む事務の範囲が広いほど、実費として見込む金額も大きくなります。
預託金は報酬ではなく、実費の前払いとして設定されることが多い費目です。残額を誰に、いつ、どのように精算するかは契約前に確認してください。契約報酬や死後事務の報酬とは性質が違います。
金額が大きくなりやすいのは、葬儀と家財の片づけです。葬儀は形式によって幅があり、家財の片づけも、住まいの広さや量によってまとまった額になります。実費を賄える範囲であらかじめ設定しておくのが、預託金の考え方です。なお、住まいの片づけと、その先の相続登記の費用は別の手続きです。混ざりやすいので分けて考えてください。
賃貸住まいでは家財の片づけや賃貸借契約の終了・部屋の明け渡し、持ち家では家財の片づけなどを死後事務として依頼することがあります。ただし、受任者ができることは契約内容や相続人・貸主との関係によって異なります。不動産の名義変更や売却は死後事務委任契約とは別の相続手続きとして検討します。どこまでを依頼し、預託金に何を見込むかを契約前に確認してください。
預託金の管理をめぐっては、トラブルが起きることもあります。契約前に、預託金がどのように管理されるか、余った場合にどう精算されるかを、書面で確認しておくことが大切です。使った分の記録を都度もらえるかどうかも、確認しておくと安心です。
実費として使った分は、支払先や金額が分かる記録として残しておいてもらうのが基本です。あとから相続人が確認したいと思ったときに、記録がなければ、何にいくら使ったのかを追えなくなってしまいます。
当事務所の預託金の管理・精算方法は、契約前に現行の料金案内と契約書でご確認ください。事業者によって管理方法や残額の返還先が異なるため、公開料金だけで判断しないことが大切です。
4. 預託金の額と支払い方法を決めるとき
この章でわかること 預託金の必要額と支払原資は個別に確認すること
必要な預託金の額は、頼む事務と見込まれる実費によって変わります。葬儀・納骨、入院費や施設費の精算、家財整理などを洗い出し、何を預託金で賄い、何を別途支払うのかを契約前に確認します。
遺言を別に作り、死後事務の受任者を遺言執行者にも指定する設計を検討することはあります。しかし、同じ人に指定しただけで預託金が減るわけではありません。遺言執行の権限と、葬儀や家財整理を行う死後事務の権限は同じではなく、遺産からの支払いや資金の利用可能時期も個別に確認が必要です。
預託金を前払いする方式、死後に実費を精算する方式、両方を組み合わせる方式など、事業者の契約設計は一様ではありません。預貯金の解約に時間がかかる場合や、遺産にすぐ使える現金が少ない場合もあります。表示料金だけでなく、受任者がいつ、どの資金を使って動けるかを確認してください。
遺言や任意後見も必要かどうかは、財産の行き先、判断力が下がったときの備え、死後の手続きという課題を分けて考えます。3つを一律にまとめて契約する必要はありません。希望する事務と財産の状況を伝え、預託金の額、追加費用、残額の精算方法を書面で確認するのが安全です。
5. 誰に頼むかで費用はどう変わるか
この章でわかること 公開料金例を同じ条件で比べられない理由
死後事務委任契約は、司法書士・行政書士・弁護士といった専門職のほか、民間の身元保証・終活事業者にも相談できます。地域によっては、利用条件のある社会福祉協議会(社協)の支援制度もあります。頼む相手によって、費用の考え方や条件が変わります。次の数字は3事業者の公開ページを2026年9月23日に確認した表示例で、同じ条件の平均ではありません。
| 費用の考え方 | 遺言もあわせて頼めるか | 使える人の条件 | |
|---|---|---|---|
| 司法書士など専門職 | 契約報酬・預託金・サポート報酬など、費目と支払時期を確認 | 依頼先の業務範囲による | 依頼先・契約内容による |
| 民間の身元保証・終活事業者 | 事業者ごとに設定が異なる。契約前に内訳の確認が要る | 事業者によって対応が分かれる | 事業者ごとに異なる |
| 松江市社協の場合 | 年会費制。実費・預託金は別 | あらかじめ公正証書遺言を作り、遺言執行者と遺贈先を決めておく必要がある | 利用条件を満たす方に限る |
| 公開料金例 | 表示額 | 費目・条件 |
|---|---|---|
| A社(死後事務) | 初期215,000円+月会費5,000円 | 入会金50,000円+死後事務委任支援165,000円。3年ごとに更新料50,000円。公正証書作成費用などは別途。葬儀・納骨支援は別契約。税込・税抜の記載は未確認 |
| B社(身元保証+死後事務) | 898,000円(税込) | 月会費・年会費なし。公証役場の実費などが別途発生する場合あり |
| C社(身元保証+死後事務) | 1,420,000円(税込) | 葬儀・納骨を含むプランの例。生活支援・法律支援は別費用。内容により差し引きあり |
参考:各事業者が公開する料金情報(2026年9月23日確認。匿名性に配慮し、事業者名とURLは掲載していません)
松江市社会福祉協議会の「高齢者あんしんサポート事業」は、基本サービスが年間6,000円です。ほかに、あんしんサービス1回1,200円、生活支援1時間1,200円、書類等預かり1か月1,000円がかかります。
この事業を使うには、次の条件をすべて満たす必要があります。松江市に住む65歳以上の方。身寄りがない方。生活保護を受けていない方。不動産収入がなく、住宅ローン以外の負債がない方。契約内容を判断できる方です。子どもはいるが遠方で頼りづらい、という方は、身寄りがない方に当たらないため対象になりません。
死後の支援は、あらかじめ公正証書遺言を作り、遺言執行者と遺贈先を決めておき、遺言執行者の要請により葬儀・埋葬などを支援する形です。
参考:松江市社会福祉協議会「高齢者あんしんサポート事業」(2026年8月時点)
公開料金の表示額だけで、どの事業者が安いとは決められません。含まれる業務、預託金、実費、月額、利用条件をそろえて確認してください。
専門職に頼む場合は、判断力が下がったあとも同じ体制で続けられるよう、見守り契約や任意後見契約とあわせて組み立てることもできます。頼みたい事務の範囲や、財産の内容と照らして、条件が合う先を選んでください。
民間の身元保証・終活事業者は、入院時の身元保証と死後事務をセットで提供している場合が多く、複数の心配ごとを一度に相談できることがあります。費用の設定は事業者ごとに違うため、内訳を書面で確認したうえで比べることをおすすめします。
司法書士・行政書士・弁護士といった専門職は、法律の知識をもとに契約書を作成し、必要であれば遺言や任意後見契約とあわせて設計できる点が強みです。死後事務委任契約は、司法書士の独占業務ではありません。誰に頼むかを選ぶときは、費用の内訳が明確か、預託金の管理方法が分かるかを、それぞれ確認しておくと安心です。
6. 最新料金を確認する
この章でわかること 料金は改定されるため、現行ページで確認すること
当事務所の料金は、契約内容や実費の見直しにより変更されることがあります。現行の契約報酬、預託金、サポート報酬、オプションの扱いは、契約前に料金のご案内でご確認ください。公開料金例との比較では、費目と含まれる業務をそろえて確認します。
ご自身の場合、預託金がどれくらいになりそうか、契約前の相談で概算をお伝えできます。契約するかどうかは、話を聞いてから決めても構いません。→ 相談で概算を聞く
詳しい料金の内訳は、料金のご案内や終活支援のご案内ともあわせてご確認ください。
7. 契約する前に確認しておくこと
この章でわかること 頼む相手を問わず、確認しておきたい5点です
誰に頼む場合でも、契約前に次の点を確認しておくと安心です。
- 費用の内訳が書面で示されるか
- 預託金がどのように管理されるか(他の資金と分けて管理されているか)
- 余った預託金がどう精算されるか
- 契約書の内容を事前に確認できるか
- 受任者が引き受けられなくなったときの備えがあるか
どれも、契約してから確かめるのでは遅い項目です。口頭の説明だけで済ませず、書面で示してもらえるかどうかも、頼む相手を選ぶ判断材料になります。
費用の内訳と預託金の管理方法は、この記事で説明した4つの主な費目に沿って聞くと整理しやすくなります。契約書の内容は、その場で即決せず、持ち帰って読み直す時間をもらえるかどうかも確認しておくとよいでしょう。
受任者が引き受けられなくなったときの備えは、予備の受任者を決めておく方法や、個人ではなく法人を受任者にしておく方法があります。受任者を個人1人に決めてしまうと、その人が先に亡くなったり、引き受けられなくなったりしたときに、契約の実行者がいなくなってしまいます。この点は、費用と同じくらい確認しておく価値があります。
エンディングノートと遺言の違いを整理しておくと、契約前に何を書き出しておくべきかも見えやすくなります。
8. よくある質問
この章でわかること 金額・時期・遺言の要否・途中解約について答えます
Q. 預託金はいくらくらい必要ですか?
A. 葬儀・納骨、入院費・施設費の精算、家財整理など、頼む事務と見込まれる実費によって変わります。この記事の公開料金例は各事業者のサービス表示額であり、預託金だけの相場を示すものではありません。希望する事務を伝え、預託金に含める支出と不足時・残額の扱いを個別の見積書と契約書で確認してください。
Q. 費用はいつ払うのですか?
A. 契約時に契約報酬を払い、公正証書にする場合は公証人手数料、預託金を設ける場合は預託金を支払う形もあります。支払時期は契約ごとに異なります。死後事務の報酬は、亡くなったあとに事務を行ったときに発生する設計もあります。預託金の精算・返還先・返還時期は、契約書で確認してください。
Q. 遺言も作らないといけませんか?
A. 必須ではありません。遺言と死後事務委任契約を組み合わせる設計が検討されることはあります。ただし、受任者を遺言執行者に指定しても、預託金が自動的に減るという意味ではありません。財産の内容と契約書の定めを確認してください。
Q. 途中でやめたら預けたお金はどうなりますか?
A. 解除の可否や手続き、未使用分の精算・返還は契約書の定めによって異なります。誰に返還されるのか、手数料や実費の扱いを含め、契約前に確認してください。
Q. 複数の料金案はどう比べればいいですか?
A. 表示額だけで比べず、対象となる事務、預託金と実費、月額・更新料、解約時と残額の精算条件を並べて確認します。葬儀の形式や家財の量など、希望する内容を伝えて見積もりを取りましょう。迷ったまま契約する必要はありません。
9. まとめ
- 契約報酬・公証人手数料・死後事務の報酬・預託金は、契約内容に応じて発生する可能性がある主な費目である
- 預託金は報酬とは別の実費前払いとして設定されることが多く、精算・返還条件は契約ごとに異なる
- 公開料金例は初期20万円台から100万円を超える幅があるが、統計的な平均ではない
- 遺言との組み合わせで預託金が自動的に減るわけではなく、財産と契約内容の確認が必要
- 頼む相手を問わず、預託金の管理方法と精算方法は契約前に確認する
まずは、ご自身の場合の費用感を、契約前の相談で確かめるところから始めてください。
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判断に迷ったときは
今日、結論を出さなくても構いません。まずは費用の内訳を、実際の金額でお伝えします。
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参考にした公的資料・料金情報
- e-Gov法令検索「民法」第1012条
- 日本公証人連合会「手数料」(2025年10月改定後の案内)
- 松江市社会福祉協議会「高齢者あんしんサポート事業」
- 民間事業者3社の公開料金情報(2026年9月23日確認。事業者名・URLは匿名化のため省略)



