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死後事務を頼んだ相手が先に亡くなったら【司法書士が解説】

死後事務を頼んだ相手が先に亡くなったら(司法書士 岩田剛知の写真付きアイキャッチ)

監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)

ページ更新日:2026年10月17日 一般的な手続きの解説であり、個別の事情によって必要な対応は異なります。

死後事務を頼んだ人が先に亡くなったら、その家族が引き受けるのでしょうか。個人への委任は、受任者の死亡で終わるのが原則です。

本人が元気なうちなら、契約相手と代わりに頼む人、預けた金銭や書類を整理できます。契約書の名前と条項を確かめ、支援が途切れない引継ぎを考えます。

この記事のポイント

  • 個人の受任者と法人の担当者の死亡を分けます
  • 受任者の家族への自動的な引継ぎを前提にしません
  • 新しい契約と金銭・書類の引継ぎを進めます

代わりに頼む人がまだ決まっていなくても、ご相談いただけます。現在の契約書から、次の相手に任せる仕事と、金銭・資料の引継ぎに必要な確認を整理します。

受任者の交代と引継ぎを相談する

1. 結論:受任者の死亡で委任は原則終了する

この章でわかること 本人の死亡時の合意と区別します。

死後事務委任契約は、亡くなったあとの一定の手続きを相手へ頼む契約です。独立した法律上の制度名ではなく、民法の委任などを基に組み立てます。頼む側を委任者、頼まれる側を受任者と呼びます。

民法653条は、委任者または受任者の死亡を、委任が終了する事由としています。死後事務では、本人が死亡しても契約が続く旨を合意しておきます。本人の死後も続く合意と、受任者が先に死亡した場合の備えは別です。

本人の死後も終了しないという条項だけでは、代わりに働く人まで決まったとはいえません。契約相手が個人なら、代わりの人と交代する条件、本人の同意を確認します。受任者の子が相続人になっただけで、同じ仕事を継続する受任者になるわけではありません。

契約の仕事には、法律行為を頼む委任と、事実上の事務を頼む準委任が含まれることがあります。準委任にも、民法656条により委任の規定が準用されます。

民法第653条第1号(柱書・第1号)
委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一 委任者又は受任者の死亡

参考:e-Gov法令検索「民法」653条・656条(2026年10月17日時点の施行条文) / 関係府省庁ガイドライン17頁・死亡後も終了しない合意

頼む仕事の範囲は死後事務委任契約の基本で確認できます。財産の渡し先は、別に遺言で整える問題です。

参考:民法643条・653条と死後事務の契約

2. 個人への契約か法人への契約かを確認する

この章でわかること 名刺だけでなく契約書を見ます。

契約相手 死亡時などに確認すること
個人 死亡時の終了と代わりの相手との合意
法人 後任担当者の体制と事業停止への備え
複数の受任者 仕事の分担と残った人の権限

契約書の相手方が法人なら、職員個人の死亡とは分けて考えます。代表者や担当者の名前が書かれていても、誰が契約を結んでいるかを確認します。法人へ後任の担当者と連絡先を尋ねましょう。

法人の場合も、事業が止まったときの引継ぎは別に必要です。ほかの相手への仕事の引継ぎ、本人への説明、預託金の返還方法を確かめます。

複数人へ頼んでいるときは、全員が同じ権限を持つとは限りません。連絡だけを担当する人と、費用を支払う人は分けていることもあります。残った一人が仕事全体をできるかは、契約書の分担を見て判断します。

国のガイドラインは、主に身元保証等と死後事務を継続提供する事業者を対象とし、事業継続の対策を示しています。司法書士などは対象外ですが、同じ業務を行う際の参考とされています。契約相手には、後任の体制や事業停止時の対応方針を尋ねましょう。

参考:終身サポート事業者ガイドライン・事業継続のための対策

3. 受任者の家族の立場と急ぎの対応を分ける

この章でわかること 仕事の承継と保存の対応は別です。

受任者の遺族が契約書や通帳を保管していても、それだけで新しい受任者になったとはいえません。仕事を頼む本人と引き受ける相手の合意を確認します。本人を抜きに家族同士で仕事全体を引き継がせないようにします。

民法654条には、委任終了時に差し迫った事情がある場合の規定があります。受任者やその相続人・法定代理人は、本人側で事務を処理できるようになるまで、必要な処分をしなければなりません。これは急ぎの保全などに必要な対応であり、将来の死後事務全体を継続する立場とは別です。

たとえば重要書類を傷まないよう保管することと、将来の葬儀の契約を新たに担うことは分けます。何を行うべきかは、急ぎの事情、本人の状況、旧契約で確認します。遺族が本人の財産を自由に使えるという説明にも広げません。

民法655条では、終了事由を相手方に通知するか、相手方が知っていなければ、委任の終了をその相手方に主張できないと定めています。受任者の死亡が分かったら、本人側への連絡と、契約書・金銭の保管先の確認を進めます。

新しい相手には、任せる仕事と連絡を受けられる体制を確認します。財産の渡し先も見直すなら、遺言と死後事務の役割の違いから整理してください。

参考:民法654条・655条(急ぎの対応と終了の通知)

旧契約の終了、新しい相手との契約、預託金の精算は、一緒に整理できます。終活サポートで相談できる内容もご覧ください。

預託金と書類の引継ぎを相談する

4. 預託金と預けた書類の所在を先に確かめる

この章でわかること 残金の計算と受渡しを記録します。

預託金は、将来の費用の支払などに備えて預けたお金です。旧契約を見て、誰の名義でどのように保管されているかを確認します。受任者の遺産と本人のお金を、資料なしに一緒に扱わないようにします。

預けた額、使った実費、約束した報酬、残った額を照合します。預託金の保管者、返還義務を負う人、口座を操作できる人を確認します。受任者の死亡で全額が直ちに戻るとも、残金を遺族が受け取るとも断定できません。

民法645条と646条で定めているのは、委任終了後の報告と受取物の引渡しです。誰が誰へ報告・返還するかは、死亡した相手と契約の事情で確認します。新しい受任者には、旧契約の清算がどこまで済んでいるかを伝えます。

契約書、本人の希望のメモ、親族や病院の連絡先を一覧にします。墓地の書類や遺言書が含まれている場合は、その所在も先に確認してください。渡した資料と金銭は受領の記録を残し、後から同じ資料で確かめられる形に整えます。

死後事務の費用と預託金の違いを確認し、契約時の費用と返還されるお金を区別してください。

参考:民法645条・646条の報告と引渡し

5. 代わりの相手との契約と連絡先を整える

この章でわかること 書面と実際の連絡体制をそろえます。

1. 旧契約の相手と終了条項を確認

2. 本人の意思・代理権を確認して新しい契約へ

3. 金銭と資料を記録して引渡し

4. 病院や施設へ新しい連絡先を通知

新しい人の名前を書き足すだけで契約変更が済むとは考えません。相手の承諾、任せる範囲、報酬、実費、開始時期を確認します。旧契約と重なる仕事と、誰も担当しない仕事を整理します。

公正証書がある場合も、変更や新しい契約の方法を確かめます。旧文書が手元にあっても、新しい相手の権限を示す書面になるとは限りません。内容を公証人などへ示し、どの書面を整えるかを確認します。

病院や施設には連絡先を伝え直します。緊急連絡先の変更と、費用の保証や解約手続きの担当変更は分けて確認してください。相手先が必要とする書面を確かめ、新しい契約と実際の窓口をそろえます。

公正証書にする考え方と終活サポートの案内も参考になります。本人の希望が以前と変わっていないかを、この機会に確認してください。

病院や施設が持つ連絡先の控えも確かめます。本人の手元だけで変更が済んでいると、旧受任者へ連絡されることがあるためです。新しい相手へ何の連絡を依頼するかを伝え、連絡を受けられる時間や対応範囲を確かめます。

本人から新しい相手へ預ける情報は、契約の仕事に必要なものを選びます。旧受任者の遺族から資料を受け取る際は、本人の情報がどこまで残っているかも確認してください。紙の資料と電子データを区別し、引渡し後の保管の扱いも話し合います。

6. 本人の判断力が低下している場合は権限も確認

この章でわかること 家族の署名だけで進めません。

本人の判断力が低下している場合は、契約の内容を理解できるか、本人を代理できる人がいるかを確認します。意思表示の時に意思能力がなければ、その法律行為は無効です(民法3条の2)。診断名だけで一律に決めず、説明の工夫や本人の理解の状況を確かめます。

任意後見契約がある場合、その契約の効力が生じるのは、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時です。契約しただけの人を、すでに任意後見人として動ける人と扱わないようにします。死後事務と任意後見を同じ人に頼んでいたなら、それぞれの契約の状態と今後の手続きを確かめます。

代理人が契約する場合は、代理権がその契約と費用の支払を含むか確かめます。亡くなった受任者の権限が、その家族や新しい候補者へ当然に移るわけではありません。金銭の返還をめぐる争いは、当事務所が窓口となり、提携する弁護士をご紹介します。交渉や裁判での対応は弁護士が担当します。

信託と任意後見の役割を確認し、今の生活の支援と死後の仕事を分けます。2020年4月1日より前に結んだ委任契約では、適用法と特約も確認してください。現行条文の一般説明だけで結論を決めず、旧契約そのものを見て整理します。

参考:民法3条の2・99条・111条 / 法務省「任意後見制度について」Q17

任意後見の説明は2026年10月17日時点の施行法によります。令和8年改正の成年後見の見直しは、この時点では施行前です。法務省の改正・施行案内

参考:法務省・債権法改正の施行日と経過措置

7. よくある質問

この章でわかること 判断に迷いやすい場面を確認します。

Q. 受任者の子が代わりにしてくれませんか?

相続したというだけで、同じ仕事を引き受ける人になったとは考えません。本人が新たに何を任せ、相手が承諾するかを確認します。急ぎの保存対応と契約全体の引受けは区別します。

Q. 法人の担当者が亡くなったら契約は終わりますか?

契約相手が法人なら、担当者個人の死亡とは別に確認します。後任の体制と連絡先を法人へ尋ねてください。法人の事業停止に備える条項も確かめます。

Q. 預託金を新しい人へ移してよいですか?

旧契約の残金と返還方法、新契約の管理方法を確認します。本人の意思、返還や支払をできる人、受領の記録をそろえてから進めます。資料が足りなければ、先に旧契約の清算を確認してください。

8. まとめ

  • 個人の受任者の死亡と法人の担当者の死亡を分けます。
  • 代わりの相手へ仕事が自動的に移るとは考えません。
  • 新たな合意、金銭・書類の引継ぎ、関係先への通知を整えます。

次に任せる人と引継ぎを整理したい方へ

旧契約書と、預託金・書類など預けたものの一覧があればお持ちください。そろっていない場合も、分かる範囲からご相談いただけます。

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