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外国籍の相続人との遺産分割|署名と翻訳【司法書士が解説】

外国籍の相続人との遺産分割|署名と翻訳(司法書士 岩田剛知の写真付きアイキャッチ)

監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)

ページ更新日:2026年10月26日 一般的な手続きの解説であり、個別の事情によって必要な対応は異なります。

外国籍の相続人がいると、戸籍や印鑑証明書だけでは手続きを進められない場合があります。

まず亡くなった方の国籍と、相続人が住む国を分けて確認します。

署名の証明、相続関係の資料、翻訳を提出先ごとにそろえる順番を整理します。

この記事のポイント

  • 国籍と居住地を確認
  • 署名と住所は別の証明
  • 翻訳前に提出先へ確認

相続人の国籍や居住国など、今分かることからご相談ください。 外国籍の相続人の書類準備を相談する

1. 国籍と居住地を分けて、書類の条件を確認する

この章でわかること 相続に使う法律と、取得する証明書を分けます。

外国籍の相続人がいても、それだけで日本の遺産分割に参加できなくなるわけではありません。相続人の国籍と、相続に適用される法律は別に確認します。遺産分割とは、相続人が遺産を誰に渡すか決める話し合いです。

法の適用に関する通則法36条は、相続について亡くなった方の本国法によると定めています。亡くなった方が日本人で、相続人の一人だけ外国籍という場面を考えます。この場合、相続人が外国籍だから、遺産全体をその国の法律で分けるとは考えません。

法の適用に関する通則法第36条
相続は、被相続人の本国法による。

参考:e-Gov法令検索:法の適用に関する通則法第36条

亡くなった方自身が外国籍なら、出発点が変わります。重国籍や外国法から日本法への扱いが関係する場合もあります。海外財産もある場合は、所在国の手続きまで含めた個別の確認が必要です。

日本に住む外国籍の方と、海外に住む外国籍の方でも準備は異なります。国内で住民登録や印鑑登録があるかを確かめてください。日本の住民登録を抹消していれば、印鑑登録も抹消されます。現在の登録と提出先の条件を確認し、日本の印鑑証明書を取得できると決めつけないようにします。

元日本人で現在は外国籍の方も、現在の旅券などで国籍を確認します。昔の戸籍と現在の氏名が一致しない場合は、そのつながりを示す資料が必要になることがあります。家族の呼び名だけで協議書の署名欄を作らないことが大切です。

参考:e-Gov:法の適用に関する通則法36条・38条・41条

2. 署名証明は、日本人向けの案内と区別する

この章でわかること 日本の在外公館を一律の取得先にしません。

署名証明とは、書類の署名が本人によるものだと示す証明です。日本の在外公館が発給する署名証明は、原則として海外に住む日本人を対象にしています。外国籍の方も同じ手順で取得できる、とは案内できません。

外務省は、外国籍者の署名証明は基本的に現地の公証人へ依頼すると説明しています。元日本人には、遺産相続などで発給できるケースがあるとも案内しています。対象になるかは、申請先の在外公館へ確認してください。

ただし、現地で証明を取得できることと、日本の登記や銀行で使えることは別です。国籍、居住国、証明者、証明文の内容を提出先へ示します。証明を取る前に、使う書類と証明方法の組合せを確認します。

確認には、遺産分割協議書の案と取得予定の証明書の書式を使います。どの文書へ署名するのか、本人確認を誰がするのかを伝えてください。公証人の証明が別紙なのか、協議書に直接付くのかも確認します。

海外在住の日本人向けの形式を、そのまま外国籍の方へ当てはめないでください。商業登記の外国人向け案内も、不動産の相続登記と同じ基準とは限りません。提出先が違えば、必要な証明も確認し直します。

日本国籍を持つ家族については、海外在住の日本人相続人の署名証明を参照できます。家族の中で国籍が違う場合は、一人ずつ条件を整理しましょう。

参考:外務省:在外公館における証明・署名証明の発給条件

3. 相続関係・本人・住所を別の資料で示す

この章でわかること 旅券一枚で、全ての事実を証明しようとしません。

署名証明は、誰が相続人かを確定する資料とは役割が違います。外国籍の方に日本の戸籍がない場合は、親子関係などを示す外国の公的資料を検討します。出生、婚姻、氏名変更など、必要な事実ごとに資料を確認してください。

例えば、きょうだいが海外で改姓している場合を考えます。古い戸籍に出てくる氏名と、現在の旅券の氏名が異なります。二つの氏名が同じ人だと分かる資料を用意し、推測で一致したことにしません。

不動産を取得する人には、住所を示す資料の確認も必要です。海外住所の新名義人には、住所証明や国内連絡先事項の扱いがあります。国内連絡先となる人がいない場合は、その旨を示す資料の確認も必要です。署名を証明したから住所も証明できた、とは考えないでください。

日本語とアルファベットの氏名、生年月日、住所を資料ごとに見比べます。姓と名の順序、ミドルネーム、住居表示の違いも確認してください。協議書だけを短い通称にそろえると、本人の確認が難しくなることがあります。

被相続人や相続人が日本国籍を持たず、必要な戸除籍謄抄本を提出できない場合は、法定相続情報証明制度を利用できません。署名証明や外国の出生証明書をそろえれば、一覧図を作れるという制度ではありません。一覧図の使える範囲と、提出先が求める追加資料を確認しましょう。

参考:法務局:法定相続情報証明制度を利用できない場合

確認する事実 検討する資料 注意点
本人の署名 署名の証明 相続人の範囲や住所は別途確認
相続関係 出生・婚姻等の公的資料 日本の戸籍だけで足りるか確認
現在の住所 住所を示す公的資料等 取得する人と提出先で条件を確認
氏名のつながり 改姓・国籍変更の資料等 読み方の似た名前だけで同一視しない

参考:法務省:所有権に関する登記の申請・海外居住者の事項

署名証明の取得先や訳文の条件に迷ったら、協議書案と提出先を伝えてご相談ください。 相続の相談・手続き案内を確認する

署名証明・住所・翻訳の条件を相談する

4. 翻訳と原本の扱いは、送付前にそろえる

この章でわかること 訳す範囲・作成者・原本返却を一覧にします。

外国語の資料を使うときは、日本語訳の要否と範囲を提出先へ確認します。本人確認の欄だけ訳せばよいか、証明文も含めて必要かを聞きます。翻訳者の記載や署名、原本との対応の示し方も確かめてください。

家族が読めることと、提出する訳文として使えることは同じではありません。翻訳者に必要な条件は、手続きや提出先によって確認します。一律に専門業者への依頼が必須とも、家族の訳で十分とも決めません。

公印の証明やアポスティーユも、全ての書類に自動的に必要なわけではありません。どの国が発行した文書か、どこへ出すかを整理します。日本の外務省が扱う国内公文書向けの手続きを、そのまま外国文書に当てはめないでください。

協議書の内容を本人が理解できる言語で確認することも大切です。提出用の日本語訳だけ作り、本人へ取得内容を説明しないのは避けます。家や預金を誰が取得するのか、署名対象の全文を共有します。

署名を集める順番は、遺産分割協議書の作り方とも合わせて確認します。確定稿を一つにそろえ、財産一覧のページも含めて送ります。署名後に日本側だけでページを差し替えないようにしてください。

送付前に写しを保存し、原本の通数と返却方法を確認します。銀行へ先に出した資料が戻らず、登記に使えなくなることも避けたい点です。取得費、翻訳費、郵送費は、提出先と必要通数を決めてから整理します。

5. 合意の問題と書類の問題を分けて相談する

この章でわかること 認証が取れても、全員の合意の代わりにはなりません。

署名の証明をそろえても、遺産の分け方が決まっていなければ協議は完成しません。財産を取得しない人も、協議に参加する相続人なら内容の確認が必要です。外国籍であることを理由に、参加者から除外しないようにします。

連絡が取れない場合と、連絡は取れるが反対している場合は対応が異なります。連絡の取れない相続人がいる場合を参考に、状況を分けてください。交渉が必要な場合は、提携する弁護士との連携も含めて整理します。

遺言がある場合は、最初から全員での協議が必要だと決めません。遺言の内容と、対象になっている財産を確かめます。遺言がある場合の相続登記で、使う資料の違いを確認できます。

不動産の登記期限も並行して確認します。海外郵送や予約に時間がかかるからといって、期限が自動で延びるわけではありません。相続登記の期限を見て、協議と書類準備を分けて進めてください。

相談時には、亡くなった方の国籍、相続人の国籍と住所、対象財産をまとめます。取得済みの資料は、発行機関と日付が分かる状態で示してください。翻訳や海外への連絡をどこまで依頼できるかは、資料をもとに個別に確認します。

6. よくある質問

この章でわかること 判断に迷いやすい場面を確認します。

Q. 外国籍なら日本の大使館で署名証明を取れませんか?

原則として日本人向けの証明です。元日本人には発給できるケースがあるので、在外公館へ確認します。外国籍者向けの証明は、取得先と日本の提出先の両方で条件を確認してください。

Q. 旅券のコピーだけで相続人と分かりますか?

旅券は本人を確認する資料ですが、親子関係などを全部示すとは限りません。出生や婚姻の資料も、必要な事実に合わせて確認します。

Q. どの国の公証人の証明でも使えますか?

一律には決められません。国籍、居住国、書式、提出先を示して確認します。取得できる証明だから受理されるとは限りません。

7. まとめ

  • 亡くなった方の国籍と、相続人の国籍・居住地を分けます。
  • 署名、相続関係、住所は、それぞれ証明する事実が違います。
  • 証明・翻訳の条件を提出先へ確認してから取得します。
  • 全員で同じ確定稿を確認し、原本と登記期限を管理します。

国籍・居住国・提出先をそろえて書類を確認する

亡くなった方と相続人の国籍、居住国、提出予定先をお知らせください。取得済みの書類や協議書案をもとに、証明と翻訳の条件を整理します。翻訳等の依頼範囲も個別に確認します。

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参考にした公的資料

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