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いらない山林・農地・実家を相続したとき、手放す3つの方法【司法書士が解説】

いらない山林・農地・実家の手放し方

この記事の監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)

最終更新日:2026年9月15日 ※本記事は更新日現在の法令・実務に基づき内容を確認しています。

親から相続した山林や農地、住む予定のない実家が、そのまま名義だけ残っている。使う予定はないのに、固定資産税の通知は毎年届き、草刈りや倒木の心配だけが続いている。そんな状態から抜け出す方法として、相続放棄・相続土地国庫帰属制度・売却や寄付という3つの選択肢を、それぞれの向き不向きとあわせて説明します。

この記事のポイント

  • いらない土地を手放す方法は主に3つあり、手放せる範囲や費用がそれぞれ違います
  • 相続放棄は財産全体が対象になり、土地だけを選んで放棄することはできません
  • 相続土地国庫帰属制度は土地の条件が細かく決まっており、審査手数料と負担金がかかります

山林・農地・実家、それぞれで判断の基準が違います。まずは今の状況を整理したい方は → 無料相談の詳細を見る

1. 結論:山林・農地・実家を手放す方法は、大きく3つあります

この章でわかること 3つの方法の全体像と、比較表での見比べ方

いらない山林や農地、実家を手放す方法は、大きく3つに分かれます。相続放棄・相続土地国庫帰属制度・売却や寄付です。このうち相続土地国庫帰属制度とは、相続や遺贈で土地の所有権を取得した人が、一定の条件を満たす土地に限って、その所有権を国庫に帰属させることができる制度です。

どれを選んでも、まず相続人であることを確定させる必要があり、進め方によって手放せる範囲も費用も変わります。3つの方法を、比べる点ごとにまとめました。

比べる点 ①相続放棄 ②相続土地国庫帰属制度 ③売却・寄付・農地バンク
手放せる範囲 すべての相続財産 条件を満たす土地だけ 対象の土地だけ
費用の目安 家庭裁判所の手続費用 審査手数料1筆14,000円+負担金(原則1筆20万円〜) 相手による(仲介手数料や無料の場合も)
期限 相続を知ってから3か月以内 特になし 特になし
土地の条件 制限なし(ただし他の財産もすべて放棄) 建物や担保権がないことなど一定の条件 買い手・引き取り手が見つかること
審査・交渉 家庭裁判所の審査 法務局の審査(却下・不承認あり) 相手との交渉が必要

結論から言うと、「その土地だけ」を手放したいなら相続土地国庫帰属制度か売却・寄付、財産すべてを整理したいなら相続放棄が候補になります。次の章から、それぞれの中身を順番に説明します。

2. 前提:売却・寄付は名義変更が先。国庫帰属は相続登記が未了でも申請できます

この章でわかること 相続登記が先に必要な理由と、費用の目安

売却や寄付は、亡くなった方の名義のままでは進められません。まず相続人の名義に変える相続登記が必要です。一方、相続土地国庫帰属制度は、相続登記が終わっていなくても申請できます(相続で取得したことを証する戸籍などを添付します)。ただし、国庫帰属が完了するまでは所有者です。相続登記の期限が先に来る場合や、申請を取り下げた場合、申請が却下・不承認となった場合は、相続登記が必要です。

参考:法務省「相続土地国庫帰属制度に関するQ&A」

相続登記は、不動産を取得したと知ってから3年以内に申請する義務があります。期限を過ぎると、正当な理由がない限り過料の対象になることがあります。詳しい期限の数え方は、相続登記の3年ルールを説明した記事で確認してください。

費用は、登録免許税(評価額の0.4%)と司法書士報酬が中心です。当事務所の相続登記は88,000円(税込)からで、実費は別途かかります。使う予定のない山林や農地は評価額が低いことが多く、その場合は登録免許税がかからない免税措置が使えることがあります(租税特別措置法84条の2の3。相続人が登記の前に死亡した場合や、評価額100万円以下の土地などが対象で、期限は令和9年3月31日までです)。費用の内訳は、相続登記の費用相場を説明した記事で確認できます。

相続人が複数いる場合は、誰が土地を引き継ぐかを遺産分割協議で決めてから登記します。1人が単独で相続する形にしておくと、この先どの方法を選ぶ場合でも手続きが進めやすくなります。共有名義のまま残すと、後の章で説明するとおり、全員の合意が必要な場面が増えます。費用の全体像は、料金のご案内でも確認できます。

3. 方法①相続放棄——対象の土地だけを外すことはできません

この章でわかること 相続放棄で何が手放せて、何を失うか

いらない土地だけを最初に手放す方法として、相続放棄を思い浮かべる方は少なくありません。ただし相続放棄は、土地だけを選んで放棄することはできません。預貯金や自宅など、他のすべての財産も一緒に手放すことになります。

民法第939条
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

参考:e-Gov法令検索「民法」第939条

「初めから相続人とならなかったものとみなす」ため、放棄した人は特定の財産だけを選んで受け取る立場そのものを失います。土地だけを外して預貯金は受け取る、という選び方は制度上できません。

相続放棄には期限もあります。自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があります。期限の数え方は、相続放棄の3か月はいつから数えるかを説明した記事で確認してください。

当事務所の相続放棄の報酬は、1名あたり(税込)3か月以内であれば55,000円、3か月を過ぎている場合は77,000円です。他に価値のある財産がなく、相続人全員が手放したい方針で一致している場合は、相続放棄が最も分かりやすい選択肢になります。

4. 方法②相続土地国庫帰属制度——引き取ってもらえる土地には条件があります

この章でわかること 制度の仕組みと、対象にならない土地の具体例

相続や遺贈によってその土地の所有権の全部又は一部を取得した人は、法務大臣に対して国庫への帰属を申請できます。

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律第2条第1項
土地の所有者(相続等によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者に限る。)は、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を申請することができる。

参考:e-Gov法令検索「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」第2条

誰でも申請できるわけではなく、次のような土地は申請の段階で却下されます。実家がそのまま残っている場合は、更地にしてから申請する必要があります。住宅ローンの抵当権が残っている土地、通路や墓地など現に第三者が使っている土地も対象外です。山林や農地では境界が曖昧なことが少なくありませんが、境界が明らかでない土地や、所有権をめぐって争いがある土地も却下されます。

土地が複数人の共有になっている場合は、共有者の1人だけの意思では申請できません。

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律第2条第2項
土地が数人の共有に属する場合には、前項の規定による承認の申請(以下「承認申請」という。)は、共有者の全員が共同して行うときに限り、することができる。

この場合においては、同項の規定にかかわらず、その有する共有持分の全部を相続等以外の原因により取得した共有者であっても、

相続等により共有持分の全部又は一部を取得した共有者と共同して、承認申請をすることができる。

参考:e-Gov法令検索「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」第2条

兄弟姉妹で実家や山林を共有名義のまま相続した場合、共有者全員の合意を取り付けてからでないと申請できません。1人が反対していると、この方法は選べないことになります。

審査を通過しても、次のような土地は最終的に不承認になることがあります。

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律第5条第1項第1号・第2号
崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの/土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地

参考:e-Gov法令検索「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」第5条

法務省の案内では、放置すると倒木のおそれがある枯れ木や、周辺に侵入するおそれのある竹も挙げられています。老朽化したブロック塀なども同じ扱いです。山林で竹や倒木を放置していると、審査で止まる可能性があります。

農地や森林も申請の対象になり、農業委員会の許可は求められていませんが、申請前に農業委員会へ相談することができます。ただし、相続したこと自体の届出は農業委員会へ別に必要です。

  1. 法務局へ事前相談する —— 土地の所在地を管轄する法務局の本局に、登記事項証明書や写真を持って相談します(島根県内の土地であれば松江地方法務局)。
  2. 承認申請書を提出する —— 審査手数料(1筆14,000円)分の収入印紙を貼って申請します。支局・出張所では受け付けていません。
  3. 負担金を納付する —— 承認された場合、通知から30日以内に負担金を納めた時点で所有権が国に移ります。

審査には申請から8か月程度かかるとされています。「この土地は対象になるか」は、書類を整える前に法務局へ相談しておくと、無駄な手間を避けられます。

建物や境界の状態によって、申請できるかどうかが変わります

実家の建物が残っている場合や、山林の境界がはっきりしない場合は、事前の見立てが重要です。相続登記とあわせて、当事務所でもご相談いただけます。→ 今の状況を相談する

5. 相続土地国庫帰属制度の負担金——いくらかかるのか

この章でわかること 審査手数料と負担金の目安

相続土地国庫帰属制度には、2種類の費用がかかります。申請時に納める審査手数料と、承認後に納める負担金です。

審査手数料は土地一筆あたり14,000円で、申請時に収入印紙で納めます。却下や不承認になっても、この手数料は返還されません。

負担金は、土地の管理に必要な10年分の費用相当額として、法務省が定めた基準で算定されます。宅地・農地・その他(雑種地・原野等)は原則として1筆20万円、森林は面積に応じて算定される仕組みです。

区分 原則 面積で変わる場合の例
宅地 20万円(面積を問わない) 市街化区域・用途地域内の宅地は面積に応じて算定(例:100㎡で54.8万円)
農地 20万円(面積を問わない) 市街化区域内や農業振興地域の農用地区域内などの農地は面積に応じて算定(例:500㎡で72.3万円)
森林 面積に応じて算定(例:750㎡で25.4万円)
その他(雑種地・原野等) 20万円(面積を問わない)

参考:法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」

正確な金額は、申請後の審査を経て法務局から通知されます。隣接する土地を複数申請する場合、同じ区分であれば一筆とみなして合算する申出もできます。

6. 方法③売却・寄付・農地バンクという選択肢

この章でわかること 手放す以外に、活かす・貸す方法があること

相続放棄も国庫帰属制度も使わず、売却や寄付という方法もあります。買い手や引き取り手が見つかれば、費用をかけずに、あるいは対価を得て手放せます。

実家であれば、まず相続登記をしたうえで、不動産会社への売却や、自治体の空き家バンクへの登録が選択肢になります。名義変更と売却の進め方は、誰も住まない実家、名義変更と売却どちらが先かを説明した記事で詳しく説明しています。

農地であれば、農地中間管理機構(農地バンク)に貸し出す方法もあります。これは所有権を手放すのではなく、貸し付ける仕組みです。買い手がすぐに見つからない農地でも、貸すことで管理の手間を減らせる場合があります。

相続した農地は、貸すか自分で使うかにかかわらず、農業委員会への届出が別途必要です。相続税の納税が猶予される制度と結びついている場合もあるため、税務にかかわる判断は、当事務所が窓口となり、提携する税理士をご紹介します。

参考:農林水産省「農地相続ポータル」

国や地方公共団体、NPO法人などへの寄付という道もありますが、法務省の資料でも「寄附を受けてもらえる相手を探すのが困難なことがある」とされています。使う見込みのない土地を、もらってくれる先を探すこと自体に手間がかかるという点は、売却と共通する弱点です。

7. どの方法が向いているか

この章でわかること 3つの方法を選ぶときの判断の軸

相続放棄が向いているのは、こんな方です

  • プラスの財産が少なく、他の財産も含めて整理したい
  • 預貯金なども含め、自分が相続する権利・義務をすべて手放したい
  • 相続を知ってから、まだ3か月以内である

相続土地国庫帰属制度が向いているのは、預貯金など残したい財産が他にあり、土地だけを切り離したい場合です。建物がなく、担保権も付いていない土地であれば検討する価値があります。

売却や寄付、農地バンクが向いているのは、買い手や引き取り手が見つかる見込みがある場合です。費用をかけずに手放せる可能性がある一方、相手が見つからなければ選べません。複数の方法を並行して検討し、見込みが薄いものから絞り込んでいく進め方もできます。

例えば、建物のない山林を1つだけ相続していて、預貯金など他の財産は受け取りたい場合は、相続放棄は選べません。まず売却先や引き取り手を探し、見つからなければ相続土地国庫帰属制度の要件に当てはまるかを確認する、という順番になります。逆に、山林も預貯金もまとめて負担に感じている場合は、相続放棄を先に検討することになります。

司法書士にできること・できないこと

相続放棄も相続土地国庫帰属制度も、申立人・申請者はご本人です。司法書士は、その手続きを進めやすくするお手伝いをします。

できること できないこと
戸籍の収集・相続登記 相続税額の計算や節税の助言
相続放棄の申立書類の作成支援 家庭裁判所であなたに代わって主張すること
国庫帰属制度の申請書類の作成支援 相続人どうしの交渉を代理すること

相続人どうしで意見が分かれている場合や税務の判断が必要な場合は、当事務所が窓口となり、提携する弁護士・税理士をご紹介します。

こうした選択は、生前のうちに整理しておくと、相続後の負担そのものを減らせる場合があります。生前対策は何から始めればいいかを説明した記事や、生前対策のご相談ページもあわせてご覧ください。

8. よくある質問

この章でわかること 相続放棄・国庫帰属制度・農地の届出についてのよくある疑問

Q. 相続放棄をすれば、いらない土地だけ手放せますか

A. できません。相続放棄は財産全体を対象にする手続きで、特定の土地だけを除外することはできません。預貯金など残したい財産が他にある場合は、相続土地国庫帰属制度か売却・寄付を検討してください。相続人が複数いる場合は、遺産分割協議で1人にまとめてから、この先の方法を選ぶ進め方もあります。

Q. 相続土地国庫帰属制度で、負担金がかからない方法はありますか

A. ありません。承認された場合は、原則として1筆20万円からの負担金の納付が必要です。期限内に負担金を納めないと、承認そのものが失効し、同じ土地について申請し直すことになります。

Q. 農地や山林でもこの制度を使えますか

A. 使えます。農地・森林も対象で、農業委員会の許可は求められていませんが、申請前に農業委員会へ相談することができます。ただし通常の管理を阻害する竹や倒木がある土地は不承認になることがあるため、事前に整理しておくと審査が進みやすくなります。

Q. 相続放棄の期限に間に合いそうにないときはどうすればいいですか

A. 家庭裁判所に対して、熟慮期間を延ばしてもらう申立てができる場合があります。財産の調査に時間がかかっている場合は、期限が近づく前にご相談ください。

Q. 兄弟姉妹の共有名義になっている土地でも、相続土地国庫帰属制度を使えますか

A. 使えますが、共有者全員が共同して申請する必要があります。1人だけの意思では申請できないため、まず共有者どうしで方針をそろえることが出発点になります。共有者全員で共同申請できない間は、その土地について国庫帰属制度を利用できません。共有状態を解消する方法は、個別に専門家へご相談ください。

9. まとめ

  • いらない山林・農地・実家を手放す方法は、大きく相続放棄・相続土地国庫帰属制度・売却や寄付の3つです
  • 相続放棄は財産全体が対象になり、土地だけを選んで手放すことはできません
  • 相続土地国庫帰属制度は、建物や担保権のない土地が対象で、審査手数料と負担金がかかります
  • 売却や寄付、農地バンクは、買い手や引き取り手が見つかることが前提になります
  • 売却・寄付は相続登記が出発点です。国庫帰属は相続登記が未了でも申請できますが、登記期限が先に来る場合や、取下げ・却下・不承認となった場合は相続登記が必要です

まずは、対象の土地がどの方法の条件に近いかを整理するところから始めてください。

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