監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)
ページ更新日:2026年10月26日 一般的な手続きの解説であり、個別の事情によって必要な対応は異なります。
亡くなった親の実家は分かっていても、山林や別の市の土地があるか分からないことがあります。納税通知書が見つからないだけで、不動産がないとは判断できません。
2026年2月2日から、所有不動産記録証明制度が始まりました。登記上の氏名や住所などを手掛かりに、全国の不動産を調べるための制度です。
名寄帳と所有不動産記録証明書の違い、請求書類、公的手数料、検索に出ないものを整理します。一つの資料で調査を終えず、見つかった物件ごとに現在の権利を確認しましょう。
この記事のポイント
- 名寄帳と所有不動産記録証明書を使い分けます
- 旧住所や旧姓も検索条件として確認します
- 登記に出ない建物などは別の資料で調べます
不動産の場所が全部分からない段階でも相談できます。手元にある通知書や登記資料から、調査の進め方を整理しましょう。 親の不動産の調べ方を相談する
1. 不動産の調査は、税の資料と登記の資料を合わせます
この章でわかること 通知書がないことを、財産がない証拠にしません。
名寄帳とは、自治体が固定資産税の課税台帳を所有者ごとにまとめた資料です。呼び方や記載範囲は自治体によって異なります。所有不動産記録証明書は、法務局が指定された検索条件に基づき、所有権の登記名義人として記録された不動産を一覧にする証明書です。
名寄帳は自治体の税の資料、所有不動産記録証明書は登記の検索結果です。どちらも「全国の実際の財産を例外なく証明する紙」とは考えないでください。作成の目的と拾える対象が違います。
不動産の一覧を作る資料と、物件の権利を確かめる資料を分けます。見つかった地番や家屋番号をもとに、各物件の登記事項証明書を確認します。
参考:法務省「所有不動産記録証明制度について」制度の概要と注意点
地番は土地を特定する番号、家屋番号は登記上の建物を特定する番号です。住居表示の住所と違うことがあります。通知書に書かれた所在地を、そのまま住所として地図で探すだけでは分からない場合があります。
最初は、親の書類、税の資料、登記の資料を並べた作業一覧を作ってください。同じ物件か、別の物件か、不明なのかを分けます。面積や地目が違っている場合も、資料の年度や分筆などの履歴を確認します。
2. 資料ごとの対象と限界を、請求前に確認します
この章でわかること 全国検索と自治体の調査は役割が違います。
| 資料 | 調べられる内容 | 主な限界 |
|---|---|---|
| 納税通知書・課税明細 | 税の通知対象となった物件 | 通知先や課税の事情で手元にない場合がある |
| 自治体の名寄帳等 | その自治体の台帳に載る物件 | 全国分ではない。非課税や共有の表示等は自治体へ確認 |
| 所有不動産記録証明書 | 指定条件で検索される所有権登記の一覧 | 旧住所・旧姓で検索漏れの可能性。未登記等は対象外 |
| 物件の登記事項証明書 | 名義、持分、担保などの登記情報 | 先に地番や家屋番号等を特定する必要がある |
たとえば、松江市内の家と、別の自治体の山林がある場合です。松江市の名寄帳だけで、別の自治体の台帳に載る山林まで確認することはできません。親の出身地、以前の居住地、権利証などから、関係する自治体を整理します。
共有の土地は、親が単独で持つ土地と別の名義や代表者で税の通知が来ていることがあります。自治体へ請求するときは、単独分だけでなく共有分を確認したい旨を伝えてください。非課税の土地などが名寄帳に含まれるかも、各自治体の扱いを確認します。
名寄帳は、登記上の所有権を確定する証明書ではありません。税の台帳と登記の名義が違う場合は、なぜ違うのかを調べます。税を払っていた人が、そのまま登記上の所有者とは限りません。
未登記建物は、登記の検索では見つからないことがあります。課税資料、家屋の現況、建築や取得時の資料を合わせて調べます。詳しい進め方は、実家の建物が未登記だった場合を確認してください。古い倉庫や増築部分も、現地と資料の違いを整理します。
3. 新証明は、旧住所や旧姓の検索条件が大切です
この章でわかること 登記名義と検索条件の違いで、検索に漏れることがあります。
所有不動産記録証明制度は、2026年2月2日に始まりました。所有権の登記名義人本人や、その相続人などが請求できます。代理人による請求も可能です。親が存命の場合、子という理由だけでは親の証明書を請求できません。親本人の請求か、委任を受けた代理人としての手続きなどが必要です。全国の登記記録から、請求書に指定した氏名・住所などの条件で検索します。
検索されるのは、条件に合う登記上の名義です。親が引っ越した後に住所変更の登記をしていなければ、現在の住所だけでは見つからない物件があります。婚姻などで姓が変わっている場合も、古い氏名の記録を確認します。
検索結果に該当不動産がなくても、実際の所有財産がないと断定できません。登記上の住所・氏名と検索条件が違う場合や、登記されていない場合があるためです。
参考:法務省「所有不動産記録証明制度について」検索の仕様・対象外
検索対象は、所有権の登記がある不動産です。土地や建物の表示に関する登記だけの物件は対象になりません。登記簿がコンピュータ化されていない不動産も抽出されません。未登記の建物や、祖父母名義のまま残った土地も、親の名義の検索だけでは拾えません。
法務省は、検索条件が一致する同姓同名の別人の不動産が抽出される場合もあると案内しています。検索では、氏名の先頭部分で照合するなどのルールがあります。住所の全文が一致するものだけを探す仕組みではありません。結果に載った物件も、権利証や過去の住所、物件ごとの登記などと照合します。
また、検索時点で審査中の登記など、登記記録にまだ反映されていない情報は含まれません。証明書は実際の所有財産を漏れなく確定するものではありません。
参考:法務省「所有不動産記録証明制度について」検索の仕様・交付の注意点
親が受け継いだと思われる土地が祖父名義なら、祖父の死亡から名義が移るまでの経過を調べます。親の所有物か、未分割の相続財産かという確認が必要です。親の一覧に出ないから、相続に無関係な土地とは決めないでください。
旧住所や旧姓は、戸籍、住民票の除票、戸籍の附票などで裏づけを確認します。複数の検索条件は別々の欄に記入します。一つの欄に複数の氏名や住所をまとめて書くのではありません。どの表記で登記されていたか分かる資料も、併せて探します。
旧住所の調べ方や祖父母名義の土地が残っている場合は、不動産調査と相続登記を合わせて整理しましょう。 相続登記で相談できる内容を見る
4. 相続人として請求する書類と費用を確認します
この章でわかること 相続関係と過去の氏名・住所の資料を準備します。
所有不動産記録証明書は、法務局・地方法務局の登記所で書面またはオンラインで請求できます。支局・出張所も請求先です。書面では郵送請求もできます。不動産の所在地をすべて知ってから請求する仕組みではありません。
相続人は、請求者本人の確認に加え、故人との相続関係を証する情報を用意します。戸籍謄本や法定相続情報一覧図などが例です。故人の過去の氏名・住所を検索条件にする場合は、それを証する資料も必要になります。
相続人が自ら書面請求する場合は、請求書に実印を押し、印鑑証明書を添付する方法があります。窓口での書面請求に限り、運転免許証などの写しを提出し、原本を提示する方法も案内されています。郵送で免許証のコピーだけを送る方法とは異なります。代理人に依頼する場合は、請求人の実印を押した委任状と請求人の印鑑証明書なども必要です。
| 請求方法・交付方法 | 検索条件ごと・証明書ごとの手数料 |
|---|---|
| 書面請求 | 検索条件一件につき一通当たり1,600円 |
| オンライン請求・郵送交付 | 検索条件一件につき一通当たり1,500円 |
| オンライン請求・窓口交付 | 検索条件一件につき一通当たり1,470円 |
上記は2026年10月26日に確認した公的手数料です。検索条件の件数と、請求する証明書の通数に応じて計算します。戸籍の取得、郵送、専門家へ依頼する報酬は別です。該当物件が出ない場合も手数料はかかり、返却されません。
参考:法務省「所有不動産記録証明制度について」請求方法・必要書類・手数料
オンライン請求には、申請用総合ソフト、電子署名などの準備が必要です。必要書類もすべてオンラインで提供します。法務省の案内では、オンライン請求は添付書類の補完ができません。書面請求と同じ感覚で始めず、事前に必要な環境と資料を確認します。
松江市の名寄帳の証明では、相続人であることを確認できる戸籍などと、相続人の本人確認書類が案内されています。証明手数料は一件につき300円です。郵送請求の提出先は松江市の固定資産税課です。これは2026年10月26日に確認した松江市の例です。他の自治体の金額、記載範囲、郵送方法は、それぞれの公式案内で確認してください。
5. 見つかった物件を登記で確認し、相続の手続きへ進みます
この章でわかること 一覧を取得しただけでは名義変更は終わりません。
- 親の書類から候補を挙げる:納税通知書、権利証、古い契約書などを整理します。
- 税と登記の一覧を集める:自治体の名寄帳と、必要な検索条件で新証明を請求します。
- 物件ごとの登記を確認する:名義、持分、担保などを読み、現地や税資料と照合します。
- 相続関係と手続きを整理する:祖父母名義や未登記などの問題を分け、登記へつなげます。
登記事項証明書では、現在の所有者と共有持分を確認します。持分は共有物の権利の割合です。土地と建物の名義が別の場合もあります。担保や差押えなど、所有権以外の記録も含めて読みます。
一覧表には、所在地、地番または家屋番号、土地と建物の別、登記名義、共有持分、確認資料を記載します。まだ登記を確認していない物件は、確認済みの物件と分けます。地図に載っている家と、課税資料の建物が同じかも照合してください。
見つかった農地には、登記以外の届出が必要になる場合があります。農地を相続したときの届出を別に確認してください。使わない山林や土地を見つけたときも、相続した土地を手放す方法へ進む前に、権利と対象物件を特定します。
調査と並行して、判明している物件の相続登記の期限も確認します。相続の開始と、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内の申請が原則です。2024年4月1日より前の相続も対象です。施行前から取得を知っていた場合の期限は2027年3月31日です。施行後に取得を知った場合は、知った日から3年以内になります。遺産分割が成立した際には、別の申請義務もあります。すべての不動産の調査が終わるまで、判明済みの物件の期限を待てるわけではありません。名寄帳や新証明の取得は、名義変更の登記申請とは別の手続きです。
参考:法務省「相続登記の申請義務化について」基本的義務・施行前の相続の扱い
登記の費用を見積もるときは、相続登記の費用と内訳も確認します。必要な作業が変わる要因は、物件の数、評価、相続関係、未登記などです。資料が不足している場合は、不足がどの作業に関係するのかを分けて相談できます。
6. よくある質問
この章でわかること 判断に迷いやすい場面を確認します。
Q. 全国の不動産が一回の請求で全部分かりますか?
指定した氏名・住所などの条件に合う登記記録が対象です。旧住所や旧姓の名義、未登記、表示登記のみ、非コンピュータ化などには限界があります。名寄帳や親の資料を組み合わせて調べてください。
Q. 納税通知書がなくても名寄帳を請求できますか?
相続人として請求できるか、対象となる資料と必要書類を自治体へ確認します。松江市では、相続人であることを確認できる戸籍などと本人確認書類が案内されています。通知書がないことだけで不動産なしと判断しないでください。
Q. 新証明に物件が出なければ、調査は終わりですか?
検索条件や登記の有無を確認します。親の旧住所、祖父母名義のままの土地、未登記建物などは別の調査が必要です。該当なしの結果も、請求した条件を含めて保管してください。
Q. 証明書を取れば相続登記も完了しますか?
完了しません。見つかった物件の登記と相続関係を確認し、必要な登記申請へ進みます。新証明は不動産を把握するための制度で、遺産の分け方や名義変更を決める制度ではありません。
7. まとめ
- 名寄帳は自治体の税の資料、新証明は登記の検索結果です。
- 新証明は2026年2月2日に開始し、旧住所や旧姓の条件も確認します。
- 未登記や祖父母名義などは、別の資料で調べます。
- 一覧を取得した後、物件ごとの権利と相続登記を確認します。
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判断に迷ったときは
「親の不動産が全部分からない」「新証明に出た物件をどう確認するか迷う」ときは、ご相談ください。調査に使う資料と、見つかった物件の相続登記を整理します。納税通知書、名寄帳、登記資料は、手元にあるものだけで構いません。すべてをそろえてから相談する必要はありません。
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