監修予定者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)
ページ更新日:2026年10月2日 ※事務所の確認前の下書きです。一般的な手続きの解説であり、個別の事情によって必要な対応は異なります。
相続放棄を考えているけれど、家庭裁判所へ何を出すのか分からない。書類を出した後にも、何か対応があるのか気になる。そんなときは、準備・提出・確認・受理後に分けて考えると、次の作業が見えます。
相続放棄は、専門家へ依頼せず、ご本人が申述することもできます。家族へ口頭で伝えるだけでは終わらず、家庭裁判所へ意思を伝える「申述」が必要です。必要な戸籍の範囲は、亡くなった方とあなたの続柄によって変わります。書類の集め方から、裁判所への回答、受理後の連絡まで順に確認しましょう。
この記事のポイント
- 提出先は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
- 共通書類に加え、続柄に応じた戸籍と申述人1人につき収入印紙800円分を用意します。
- 提出したことと受理されたことは別です。追加書類や照会への対応、受理後の証明書も確認します。
申述の準備で止まっている場合は、手元の書類から状況を整理できます。→ 無料相談を予約する
1. 相続放棄は、家庭裁判所への申述から始めます
この章でわかること 家族の話し合いと裁判所の手続きは別です。
相続放棄とは、亡くなった方の財産も債務も相続しないために、家庭裁判所へ申述する手続きです。債務とは、借金などの支払い義務を指します。遺産分割の話し合いで財産を受け取らないこととは、別の手続きです。
家族との書面に「相続しない」と書くだけでは、家庭裁判所への申述に代わりません。銀行や債権者へ連絡したことだけでも、手続きは終わりません。まず何を目的とするのかを整理し、相続放棄を選ぶ場合は申述の準備へ進みます。
民法938条は、相続放棄を家庭裁判所への申述で行うと定めています。受理された場合の効果は939条に定められています。
「放棄するか」と「どう申述するか」を分ける
申述書を作る前に、財産の状況や自分の希望を確認します。放棄をするか決まっていないまま、提出だけを急ぐのは避けましょう。預貯金や不動産も受け継がないため、借金の部分だけを切り離す手続きではありません。
一方、申述を検討しながら書類の所在を調べることはできます。最後の住所地、亡くなった方との続柄、現在持っている戸籍を整理してください。判断に時間がかかっている場合は、その状況を含めて早めに相談します。
申述には、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月という期間があります。数え始める日や期間を過ぎた場合の詳しい判断は、相続放棄の3か月はいつから数えるかで扱っています。借金を調べる段階の方は、亡くなった親の借金を調べる方法をご確認ください。
調査しても相続するか決められないときは、期限前に熟慮期間(相続するか考える期間)の伸長(判断期間の延長)を申し立てる方法があります。申立てだけで延長が決まるわけではありません。詳しくは裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」と民法915条をご確認ください。
準備から受理後までの全体の流れ
- 提出先と期限の状況を確認する。 最後の住所、続柄、相続を知った時期を整理します。
- 申述書と添付書類を用意する。 裁判所の書式を使い、必要な戸籍と費用を確認します。
- 裁判所へ提出する。 提出した書類の控えを残し、連絡を受けられる状態にします。
- 裁判所からの確認に対応する。 照会や追加書類の指示があれば、内容を確かめて対応します。
- 結果を確認して書類を保管する。 受理通知書を確認し、提出先が求める場合は受理証明書を申請します。
これは作業の順序を示す図です。審理の方法や所要日数を保証するものではありません。戸籍がそろう時期、追加資料の有無、裁判所からの確認内容によって進み方が変わります。
2. 提出先は、自分の住所ではなく故人の最後の住所で決まります
この章でわかること 住所資料と裁判所の案内を照合します。
申述先は、亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所です。あなたが住む市、戸籍の本籍地、遺産の不動産がある市とは区別してください。遠方の親を亡くした場合、最寄りの家庭裁判所が提出先になるとは限りません。
故人の住民票の除票、または戸籍の附票を見て、最後の住所を確認します。住民票の除票は、死亡などによって住民登録が消された方の記録です。戸籍の附票は、その戸籍にいる間の住所の記録を示す書類です。
公式の申述先と共通書類は、裁判所「相続の放棄の申述」で確認できます。住所資料がない場合は、取得先を確認するところから始めましょう。
本庁・支部まで確認する
家庭裁判所には、本庁のほか支部や出張所があります。同じ県内でも、最後の住所によって担当が分かれます。裁判所名だけで封筒を作らず、受け付ける部署と送付先まで確認してください。
例えば最後の住所が松江市の場合、裁判所の管轄表では松江家庭裁判所本庁の区域です。これは松江市のケースとしての案内です。出雲市など他の住所は、同じ窓口と推測せず公式表で確認します。→ 裁判所「島根県内の管轄区域表」
管轄表には、事件の種類によって提出先が異なる場合があるとの注意もあります。住所の境界、合併前の地名、出張所での取扱いに迷う場合は、相続放棄の申述であることを伝えて確認します。
問い合わせる前に短いメモを作る
故人の氏名、最後の住所、死亡日、自分との続柄を紙にまとめます。すでに親族が同じ故人について放棄の申述をしているなら、その裁判所と事件番号も確認します。分からない欄は、分からないと書いて構いません。
裁判所への問い合わせでは、「どの窓口に出すか」「現在の郵便料はいくらか」「先行事件の書類を使えるか」を分けて聞くと整理できます。放棄したほうがよいかという判断と、手続きの案内は異なるものです。法的な判断に迷う事情は、専門家への相談で伝えてください。
最後の住所が分かる資料と、借金の請求書の送付先が違う場合もあります。請求書が届いた住所だけで管轄を決めず、住所資料を確かめます。転居の時期や住所のつながりが分からない場合は、その点を先に相談しましょう。
3. 必要な戸籍は、配偶者・子・父母・兄弟姉妹で違います
この章でわかること 共通書類に続柄ごとの書類を加えます。
どの申述人にも共通する基本資料は、申述人の戸籍謄本(戸籍に記載された方の事項を証明する書類)と故人の住民票除票または戸籍附票です。申述人とは、相続放棄の意思を裁判所に伝える方です。これらに申述書を加え、続柄に応じた戸籍をそろえます。
裁判所の全国案内にある標準的な添付書類を、次の表に整理しました。個別の審理で追加書類を求められることがあります。現在の書式と対象者の欄を合わせて確認してください。
代襲者は、本来の相続人に代わって相続する方です。直系尊属は、父母・祖父母など直系の上の世代の親族です。
| 申述する方 | 共通書類に加える標準的な戸籍 | 確認する点 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 故人の死亡が記載された戸籍・除籍(全員が戸籍から除かれたもの)等 | 故人の死亡と夫婦関係が確認できるか |
| 子 | 故人の死亡が記載された戸籍・除籍等 | 故人と申述人の親子関係が確認できるか |
| 孫などの代襲者 | 故人の死亡記載の戸籍等と、本来の相続人の死亡記載の戸籍等 | 誰に代わって相続人となったか |
| 父母・祖父母など | 故人の出生から死亡までの戸籍等。子・その代襲者のうち亡くなっている方の出生から死亡までのすべての戸籍等。必要な直系尊属の死亡記載の戸籍等 | 相続順位と、申述人より下の代の直系尊属の死亡 |
| 兄弟姉妹・おい・めい | 故人の出生から死亡までの戸籍等。子・その代襲者のうち亡くなっている方の出生から死亡までのすべての戸籍等。直系尊属の死亡記載の戸籍等。おい・めいの場合は本来の相続人の死亡記載の戸籍等 | 前の順位の相続人の状況と代襲の関係 |
出典:裁判所「相続の放棄の申述」6.申述に必要な書類。父母・祖父母の欄では、死亡している直系尊属のうち申述人より下の代が対象です。表は標準的な例です。ひ孫以下の関係や、死亡以外の事情による代襲などは、申述先に確認してください。
「出生から死亡まで」は、子の申述と同じ範囲ではない
相続の書類として出生から死亡までの戸籍を聞いたことがあっても、どの申述にも同じセットが必要とは限りません。配偶者や子の標準的な申述では、まず故人の死亡記載のある戸籍が示されています。父母や兄弟姉妹の場合は、相続順位を確かめるための範囲が広がります。
自分が子なのか、孫として親に代わる立場なのかで、必要な資料が違います。日常の呼び方だけでなく、故人から見た関係で確認してください。養子や過去の婚姻、先に亡くなった家族がいるときは、簡単な家族メモを添えて相談すると整理できます。
親族が出した戸籍を、もう一度取る前に確認する
同じ故人について、相続するか放棄するかを考える期間を延ばす手続きや、相続放棄申述受理事件が先にある場合、その事件で提出済みの書類は不要とされています。同じ書類も1通で足りるとの案内があります。親族の手元にコピーがあることと、裁判所に提出済みであることは区別しましょう。
先に申述した親族の氏名、事件番号、提出先、提出した戸籍の範囲を確認します。裁判所が既存資料を確認できるよう、先に同じ故人の手続きがあることを伝えてください。事件番号が分からない場合は、故人と先に申述した方の情報を整理して問い合わせます。
また、申述前に入手が不可能な戸籍等は、申述後に追加提出しても差し支えないと全国案内にあります。戸籍が一部そろわないことを理由に、期限の確認まで止めないでください。不足資料が何で、なぜ取得できていないかを伝え、提出の進め方を確認します。
戸籍の内容と、手元のメモを照らし合わせる
戸籍を取得したら、氏名、生年月日、死亡日、続柄を確認します。同姓同名や似た住所があると、別の家族の資料を混ぜることがあります。故人の分、申述人の分、他の親族の分に分け、書類名と取得日をメモします。
読めない文字やつながらない関係を、推測で申述書に書くのは避けてください。戸籍の内容と申述書の記載が違っていないか、提出前に一度見直します。戸籍に代えて法定相続情報一覧図(戸籍等に基づき相続関係をまとめた図)の写しを出せる場合もありますが、使える範囲は申述先へ確認してください。
4. 申述書は事実を整理して書き、公的費用を分けて用意します
この章でわかること 書式・事実・費用の3つを別々に確認します。
裁判所は、成人用と未成年者用の申述書と記載例を公表しています。自分の立場に合う書式を使いましょう。古いブログの画像を写すより、提出時に公式ページから取得した様式で確認するほうが、記載欄の取り違えを減らせます。
書式を開いたら、最初に記入欄全体を読みます。氏名や住所だけでなく、故人との関係、相続を知った日、放棄の理由、相続財産の概要などを整理する必要があります。欄の意味が分からないまま、近いと思う選択肢を選ばないでください。
日付と経緯を、先に別の紙へ書く
故人の死亡日、死亡を知った日、自分が相続人となったことを知った経緯を分けます。借金の請求が届いた日など、判断に関係する資料がある場合は、封筒や通知も保管します。日付を覚えていないときは、確かな日付と不明な日付を分けてください。
申述書の記載例は、あなたの経緯を代わりに決めるものではありません。例と同じ日にちや理由を機械的に使わず、実際の経緯に合わせます。数え始める日の判断に迷う場合は、前述の期限記事を確認し、資料を持って相談します。
相続財産の欄でも、分かっているものと調査中のものを区別します。金額が不明なのにゼロと断定したり、聞いていない借金の額を推測したりしないでください。記載方法に迷う欄は、何が不明かを整理して確認します。
収入印紙・郵便料・書類取得費を分ける
| 費用の種類 | 確認できる内容 | 準備の仕方 |
|---|---|---|
| 申述の収入印紙 | 申述人1人につき800円分 | 公式書式の案内に従って用意する |
| 裁判所の連絡用郵便料 | 裁判所によって異なる | 申述先の現行案内で金額と納付方法を確認する |
| 戸籍・住所資料 | 必要な種類・通数に応じて発生する | 自治体の交付手数料を確認する |
| 提出や返信の郵送料 | 送付方法・重量等によって変わる | 連絡用郵便料と分けて計算する |
収入印紙と裁判所の連絡用郵便料の出典:裁判所「相続の放棄の申述」5.申述に必要な費用。郵便料は保管金としての納付や郵便切手による納付が案内されています。
800円は手続き全体の総額ではありません。戸籍の取得や郵送にも実費がかかります。親族が数人申述する場合は、収入印紙の人数分と、共有できる添付資料を分けて考えてください。
郵便切手の金額や組合せは、別の裁判所の記事から転記しないようにします。古い記載例の郵便料金が現在と同じとも限りません。提出先の案内を確認し、購入前に必要な額をメモします。
完成した書類は、提出前に控えを残す
記入した申述書と添付書類の一覧を、コピーや写真で残します。氏名、住所、連絡先、日付、記名・押印等の指定を見直してください。後日照会を受けたとき、提出内容を確認できるようにしておくためです。
戸籍のコピーを保管する場合は、第三者が見られる共有フォルダなどへ置かないようにします。親族の情報が含まれるため、手続きに使う範囲で管理してください。家族間で渡す資料も、何を誰へ渡したか分かる形にすると整理しやすくなります。
5. 提出後も、照会や追加書類への対応が続くことがあります
この章でわかること 提出後の連絡を確認できるように備えます。
申述書類は、窓口への提出のほか、郵送で提出する方法も裁判所の公式資料に案内されています。遠方から提出する場合は、宛先、担当部署、同封物、期限への到着の扱いを先に確認します。送った日を、そのまま提出が済んだ日と考えないでください。
郵送提出や書面照会・説明聴取による確認については、札幌家庭裁判所「相続放棄の手続案内」(2024年)1頁も参考になります。これは手続方法の説明例です。郵便料や個別の進め方を他の裁判所へ当てはめず、申述先の案内を確認してください。
郵送するときの確認
封筒へ入れる前に、申述書、添付戸籍、住所資料、費用、その他に指示された資料を一覧と照合します。手元の控えと提出する原本を混ぜないよう、別の場所に置いてください。封筒の宛先と差出人の住所も、読みやすく記載します。
送付した日、送付方法、到着を確認するための情報を控えます。期限が近い場合は、郵便の日数を自分だけで見積もらず、申述先へ確認してください。到着後すぐに受理されると考えず、裁判所の確認を待ちます。
照会書が来たら、提出した内容と照合する
照会書は、相続放棄の意思や事情を確認するための書面です。事案によって、書面での回答や説明を求められることがあります。すべての申述で同じ質問、同じ書面が届くと決めつけないでください。
届いたら、回答期限と返送先を先に確認します。次に、質問ごとに何を確かめたいのかを読みます。提出した申述書と経緯のメモを並べ、事実に沿って回答してください。
以前の説明と異なる事実が分かった場合は、無理に文章だけ合わせないようにします。何が新たに分かったのか、以前は何を把握していたのかを分けます。法的な意味が分からない質問や、財産に触れた行為の説明で迷う場合は、回答前に専門家へ相談します。
追加書類の指示を、戸籍の取り直しと決めつけない
裁判所が追加を求める資料には、それぞれ確認する目的があります。どの人について、どの期間の戸籍が必要なのかを読み取ります。すでに提出した書類と名前が似ていても、範囲が異なる場合があります。
取得に時間がかかるときは、指示を放置せず、いつ頃取得できるかを整理して裁判所へ連絡します。指示内容が分からない場合も、分からない箇所を具体的に示して問い合わせましょう。自己判断で別の書類を送って終わりとせず、指定された内容への対応を確認します。
申述後に転居したり、長く郵便を受け取れない期間ができたりした場合は、連絡が行き違うおそれがあります。連絡先変更の必要な手続きを裁判所へ確認してください。手続きが進んでいる間は、封筒ごと書類を保管し、返送済みか分かるように記録します。
裁判所からの質問にどう答えるか迷う場合は、届いた書面と提出済みの控えを並べて相談できます。→ 申述の書類について相談を申し込む
6. 受理後は通知書を保管し、必要に応じて証明書を取得します
この章でわかること 通知と提出先へ示す証明を分けて管理します。
裁判所が申述を受理すると、その結果を知らせる受理通知書が届きます。提出した段階、書類を受け付けられた段階、申述が受理された段階は区別してください。届いた書面の名前と内容を読み、裁判所名、事件番号、申述人、故人を確認します。
相続放棄の効果は、その相続について初めから相続人でなかったものとみなされることです。これは民法939条の定めです。裁判所の受理で、銀行、債権者、親族などへの連絡まで一括して済むわけではありません。どこへ何を示す必要があるかを整理します。
申述受理は、その後の争いも含め、放棄の有効性を確定するものではありません。大阪高裁1988年7月29日判決「差押処分取消請求事件」(昭和61(行コ)第3号)は、受理後に相続債権者が訴訟で効力を争った事例です。判決文6頁でその点が示されています。→ 裁判所の公式判例情報/判決文PDF(6頁)。すでに相続を承認したと扱われる行為や、申述期間などに争いがあれば、後の訴訟で効力が問題になることがあります。請求に争いがある場合は、受理通知書だけで解決したと判断せず、弁護士へ相談してください。
受理通知書と受理証明書は、同じ書類ではない
| 書類 | 役割 | 扱い方 |
|---|---|---|
| 相続放棄申述受理通知書 | 申述が受理されたことを申述人へ知らせる | 原本を保管し、事件番号などを控える |
| 相続放棄申述受理証明書 | 受理されたことを証明する | 提出先が求める場合などに、裁判所へ交付を申請する |
受理証明書の交付には、証明書1通につき収入印紙150円分が必要です。郵送での交付を希望する場合は、返信用封筒等の準備も確認します。→ 東京家庭裁判所「相続放棄受理証明書交付申請書 記入例」。必要資料と送付方法は、受理した裁判所の現在の案内で確認してください。
必要な通数は、提出先に確認してから決めます。コピーでよいのか、証明書の原本が必要なのかも、先方へ確認しましょう。原本を渡す場合は手元に控えを残し、何の手続きで提出したか記録します。
親族や請求元へ伝えるための情報を整理する
連絡用のメモには、故人の氏名、申述人の氏名、受理した裁判所、事件番号、受理日、手元にある書類を記載します。債権者からの請求書がある場合は、連絡先と請求番号も整理してください。相続放棄したことを伝えた記録を残せる形で進めます。
放棄により、他の親族の相続の立場が変わる場合があります。家族へは、自分の申述の結果と受理された時期を伝えましょう。ただし、誰が次の相続人になるか、いつからその方の期間が進むかを、あなたが一律に断定するのは避けます。
相続人の順位の考え方は、独身の方の相続人の順位と遺言の役割で整理しています。通知が届いたことを伝える際は、判断に必要な資料を分けて渡してください。
請求が続く場合や、故人の財産が手元に残る場合
受理された後にも請求の通知が届くことがあります。通知の相手が結果を把握していない場合や、別の立場の責任が問題になる場合など、事情を確認する必要があります。請求書を捨てず、何に対する請求かを確かめましょう。
自分自身が保証人となっている債務などは、相続する債務とは分けて考えます。放棄の通知だけで請求が消えると判断せず、書類を持って弁護士などへ相談してください。争いのある債務への交渉を、申述書作成と同じ範囲で扱わないことも大切です。
相続放棄をした時に、相続財産を現に占有(実際にその財産を持ち、使うなどしている)している場合は、引き渡すまで保存義務が残ります。引き渡し先は相続人または相続財産清算人(家庭裁判所が選び、相続財産を整理する人)です。この間は、自分の財産と同じ注意で保存します。根拠は民法940条です。この保存義務の説明は、2023年4月1日施行の現行法に基づきます。それより前に放棄した場合は、当時の事情も含めて個別に確認してください。受理されたからといって、手元の物を無断で処分せず、具体的な物と管理状況を伝えて相談します。
7. 自分で進める範囲と、相談する範囲を分けます
この章でわかること 書類作成と法的な判断を分けます。
相続人本人が、公式の書式を使って申述することはできます。続柄や必要な戸籍が分かり、経緯を整理できるなら、自分で準備する選択肢があります。専門家への依頼が申述の条件になっているわけではありません。
ただし、自分で進められるかは、字を書くことができるかだけの問題ではありません。何をいつ知ったか、すでに財産を使ったか、未成年者がいるかなど、判断が必要な点を把握できるかが関わります。分からない点をそのままにして、書式だけ整えないようにします。
相談するときは、迷っている箇所を1つずつ示す
相談用には、家族関係のメモ、現在の戸籍、故人の住所が分かる資料、裁判所からの書面、借金の通知などを整理します。全部そろっていなくても、取得済みと未取得を分けておくと説明しやすくなります。資料がない項目は、その理由をメモします。
「書類は分かるが期限の判断ができない」「親の戸籍はあるが祖父母まで必要か分からない」など、困っている点を具体的に伝えましょう。相談したい箇所を絞ると、依頼する範囲も検討しやすくなります。
初回相談での持ち物や流れは、相続・終活の無料相談で聞かれることと持ち物をご覧ください。相続の全体像は、相続手続きのサービス案内で確認できます。
司法書士は家庭裁判所の代理人にはならない
司法書士は、裁判所に提出する書類の作成を業務として行います。相続放棄の申述で、本人に代わる家庭裁判所の代理人になるものではありません。書類作成の支援を受ける場合でも、申述の意思と事実の確認は本人の内容に基づきます。
この業務範囲は、司法書士法3条で確認できます。相手方との争い、債権者への交渉などが生じている場合は、弁護士への相談を検討します。
費用を比べるときは、戸籍収集、申述書作成、照会への対応支援など、どこまでを依頼するかを確認してください。事務所報酬の一律の金額ではなく、依頼範囲に応じた見積りで判断します。公的費用や実費は別に確認します。→ 料金の案内を確認する
8. よくある質問
この章でわかること 提出前後に止まりやすい点を確認します。
Q. 家族が一緒に放棄する場合、申述書は1枚ですか?
A. 放棄する方ごとに申述書を準備します。申述人1人につき収入印紙800円分が必要です。同じ故人について共通する添付資料は、裁判所の案内に従って整理します。家族のうち誰が申述するかを、事前に一覧にしてください。
Q. 戸籍が間に合わない場合、全部そろうまで待ちますか?
A. 申述前に入手が不可能な戸籍等は、後から追加提出して差し支えないとの公式案内があります。不足している戸籍と取得の状況を説明し、申述先へ確認します。期限が近い場合は、戸籍集めだけを続けず、期限と提出方法を先に相談してください。
Q. 裁判所から照会書が来れば、受理が決まったと考えてよいですか?
A. 照会は意思や事情を確かめるための過程です。受理が決まった通知とは区別します。指示された事項に事実を回答し、裁判所の結果を確認してください。回答の意味が分からないときは、届いた書面を持って相談します。
Q. 未成年の子について、親が申述できますか?
A. 未成年者は法定代理人(親権者など、法律に基づいて本人を代理する方)が代理して申述します。親と子が共同相続人で、子だけが放棄する場合は、親が先に申述している場合を除き、特別代理人が必要です。特別代理人は、親子や子同士の利益がぶつかる場合に家庭裁判所が選ぶ代理人です。複数の未成年者のうち一部だけを親が代理して放棄する場合も、特別代理人が必要です。詳しくは、相続人に未成年者がいる場合の特別代理人をご確認ください。
Q. 受理通知書を受け取ったら、銀行や債権者にも自動で伝わりますか?
A. 申述の受理と、各提出先への説明は分けて考えます。通知書を保管し、相手に必要な書類を確認してください。受理証明書が求められる場合は、受理した裁判所へ交付を申請します。請求の内容に争いがある場合は、交渉に入る前に弁護士へ相談しましょう。
まとめ
- 相続放棄の申述先は、故人の最後の住所地の家庭裁判所です。
- 共通資料と、続柄に応じた戸籍を分けて準備します。
- 申述書には事実を記載し、収入印紙・郵便料・取得実費を分けて確認します。
- 提出後の照会や追加資料に対応し、結果を確認します。
- 受理通知書を保管し、必要な提出先には受理証明書などを用意します。
あわせて読みたい
- 相続放棄の3か月はいつから数える?過ぎた場合の対処も
- 亡くなった親に借金があるか、3か月以内に調べる方法
- 相続人に未成年者がいる場合の特別代理人
- 独身の方の相続人の順位と遺言の役割
- 相続・終活の無料相談で聞かれることと持ち物
判断に迷ったときは
自分で用意できた書類と、分からない箇所を分けるところから相談できます。裁判所から書面が届いている場合は、その内容と提出済みの控えもお知らせください。
岩田司法書士事務所の初回相談は60分無料です。松江市・安来市・出雲市・米子市を中心に、島根県・鳥取県全域のご相談に対応しています。依頼する内容と費用は、状況を確認してご案内します。
お電話:0852-28-0336(平日9:00〜18:00/土日も事前予約により対応可能)



