監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)
ページ更新日:2026年10月16日 一般的な手続きの解説であり、個別の事情によって必要な対応は異なります。
家や預金を相続する人が、そのままお墓も継ぐのでしょうか。お墓や仏壇などの承継は、通常の遺産分割とは別のルールで考えます。
お墓を継ぐ人は、長男や相続人とは限りません。本人の指定、指定がなければ慣習、慣習が明らかでなければ家庭裁判所の判断という順で確認します。さらに、墓地の使用者変更と、管理料を支払う準備が必要です。
この記事のポイント
- お墓や仏壇は、預金・不動産などの遺産分割とは別に承継します
- 本人の指定が優先され、長男が自動的に継ぐルールではありません
- 墓地の名義変更、将来の管理料、遺言・死後事務の準備も確認します
「お墓を頼む人に、費用も残しておきたい」という段階からご相談いただけます。遺言や死後事務委任をどう組み合わせるか、一緒に整理します。
1. 結論:お墓を継ぐ人は通常の遺産分割と別に決める
この章でわかること 祭祀承継者の役割を確認します。
祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)とは、お墓や仏壇などを引き継ぐ人です。祭祀は祖先の供養などを意味します。民法897条は、系譜(家系図など)、祭具(仏壇・仏具など)、墳墓(お墓)を通常の相続と別に承継すると定めています。
家や預金を多く相続した人が、その理由だけでお墓を継ぐとは限りません。相続人としての立場と、祭祀を担う人の立場を分けます。遺産分割協議書だけを作って、お墓の承継も終わったと考えないようにします。
祭祀財産にあたるかは、物の性質や使われ方によって確認します。墓があるという理由だけで、土地一筆全体が当然に祭祀財産となるわけではありません。墓の位置や利用状況、登記の内容を確かめ、一般の相続財産と区別します。
親族の間でお墓を継ぐ人が決まっていないときは、本人の指定の有無から確認します。預金や家の分け方は遺産分割協議書の説明で別に確認してください。
参考:民法896条・897条
2. 本人の指定・慣習・家庭裁判所の順で確認する
この章でわかること 長男という理由だけで決めません。
| 確認するもの | 民法上の考え方 |
|---|---|
| 本人の指定 | 指定に従って祭祀を担う者が承継 |
| 指定がない場合 | 慣習に従って祭祀を担う者が承継 |
| 指定がなく、慣習も明らかでない場合 | 家庭裁判所が承継者を定める |
民法897条では、慣習に従うのが基本ですが、本人の指定があるときはその指定に従います。指定の有無を確かめずに、長男や同居していた子が当然に継ぐと考えないようにします。
遺言書や生前の書面があれば、何を誰に任せる内容かを読みます。確認するのは、お墓を引き継ぐ人の指定か、葬儀の希望かという違いです。家族の記憶だけで争いが生じる場合は、資料や経過を整理します。
本人の指定がなく、慣習も明らかでない場合には、家庭裁判所が承継者を定めます。指定があるのに、家族の多数決だけで別の人へ変更できるという仕組みではありません。指定の内容やこれまでの経過を確認し、必要な手続きを検討します。
承継者について親族間で争いがある場合は、当事務所が窓口となり、提携する弁護士をご紹介します。親族との交渉や家庭裁判所での代理は弁護士が担当します。司法書士へは、家庭裁判所に提出する書類の作成をご相談いただけます。
民法第897条
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
参考:e-Gov法令検索「民法」897条(2026年10月16日時点の施行条文)
3. 墓地の使用者変更は管理者へ別に確認する
この章でわかること 承継の法律と墓地の規則を分けます。
お墓の石や祭具を引き継ぐことと、墓地の使用契約や許可を引き継ぐことは同じではありません。市営墓地、寺院墓地、民間墓地では、使用者変更の手順や求める資料が異なることがあります。どの管理者の規則が適用されるかを先に調べます。
墓地の使用許可書、契約書、管理料の請求書などから現在の使用者を確かめます。亡くなった人と許可の名義人が異なる場合は、その経過も確認します。遺言で指定した人なら無条件に墓地の名義を変更できるとは限りません。
必要書類は管理者に確認してから集めましょう。亡くなった使用者の死亡を示す資料や、承継者との関係を示す戸籍などが求められます。手元の許可書や契約書を見ながら、申請できる人と必要書類を管理者に尋ねると、取り直しを減らせます。
使用者変更と、お墓や納骨堂に納めた遺骨を別の墓地・納骨堂へ移す「改葬」は別の手続きです。改葬には、現在遺骨がある市町村長の許可が必要です。移転先の受入れ条件と、元の墓地で必要な手続きも確認してください。
死後の手続きの担当と時期も確認すると、相続の書類と墓地の書類を混同せず整理できます。
誰に何を任せるか決めきれない場合は、お墓の名義と費用の備えから整理できます。終活サポートで相談できる内容もご覧ください。
4. 松江市営墓地の承継に必要な書類と窓口
この章でわかること 市営墓地の手続き例を示します。
ここでは松江市の市営墓地を例にします。市の死亡後の手続きガイドは、使用者の承継に申請が必要なことを案内しています。掲載された窓口と資料は、申請前に担当窓口へ現在の取扱いを確認してください。
公式ガイドの必要書類は、前使用者の死亡記載のある住民票または除籍謄本、関係が分かる戸籍謄本または抄本です。承継者の世帯全員の住民票(本籍地・続柄記載)と、前使用者名義の墓所使用許可書も挙げられています。
手続きできる人は、墓地使用権の承継者本人またはその同一世帯員と案内されています。担当窓口は本庁市民課の1階6番窓口です。別世帯の家族が申請したい場合や許可書を紛失した場合は、必要な対応を先に窓口へ確認してください。
これは松江市の市営墓地の手続き例です。寺院墓地や他市の墓地では、申請できる人や必要書類が異なります。墓地名と管理者を確認し、利用中の墓地の案内に従ってください。
松江市公園墓地の公式ページでは、使用者が死亡したとき、相続人又は親族等で祭祀を担う人に限り使用権を承継できると案内しています。本人の指定と、墓地の使用権を承継する条件の両方を確認する必要があります。
公園墓地では使用者や代理人の住所・氏名の変更にも届出が必要とされています。市外への転出の際の代理人選定も案内されています。承継者の住所が遠方にあるときは、この条件を使用者変更と併せて確認してください。
5. 供養の担当と費用の負担を分けて話し合う
この章でわかること 管理料と相続財産を混同しません。
1. 本人の指定と墓地の名義を確認
2. 承継する人と管理者の条件を確認
3. 管理料や手続き費用を整理
4. 使用者変更と書類の引継ぎを進める
誰がお墓を継ぐかと、誰が費用を負担するかは分けて話し合います。管理料、法要の費用、名義変更の費用などを区別します。お墓を継ぐ人が、一般の遺産も当然に多く取得するというルールはありません。
費用のために預金を残したいときは、その財産の渡し方も検討します。祭祀承継者を指定しただけでは、銀行の預金もその人へ移るわけではありません。相続人の範囲や遺言の内容との関係を整理します。
墓地の未払い管理料がある場合は、請求の名義と契約内容を確かめます。祭祀財産を継ぐ立場と、亡くなった人の債務を引き継ぐ問題は同一ではありません。相続放棄を考える場合も、資料を持って確認してください。
相続人の範囲は独身の方の相続の説明、相続放棄の判断は相続放棄の期限と注意点で確認できます。家族で費用の分担を決めるときは、支払う人、金額、支払先を記録しましょう。家族内の分担の合意と、管理者に対する契約上の支払義務は分けて確認します。
6. 遺言と死後事務委任の役割をそろえる
この章でわかること 指定と手配を別々に整えます。
本人が元気なうちに備えるなら、祭祀を担う人の指定と、死亡直後の葬儀や納骨の手配を分けます。同じ人に頼む場合も、どの役割を引き受けるのかを伝えます。本人の希望だけでなく、相手が担える範囲を確かめてください。
遺言では、財産の渡し方や祭祀承継者の指定を定められます。死後事務委任は、葬儀・納骨の手配など、死亡後の一定の仕事を相手に頼む契約です。契約を結んだ受任者が、それだけで祭祀承継者になるわけではありません。
お墓を継ぐ指定と、葬儀・納骨を手配する依頼は別の役割です。墓地の規則、費用の原資、親族への連絡と一緒に整えます。将来の管理を引き受ける人がいない場合は、管理者にも希望する扱いを確認します。
通常の委任は、本人の死亡で終了するのが民法653条の原則です。死後事務を頼む契約では、死亡後も契約が続くことや、任せる仕事の範囲を明確にしておきます。生前の財産管理まで頼む場合は、その契約や権限も別に検討します。
遺言と死後事務委任の違いを確認し、お墓の担当、費用を受け取る人、葬儀・納骨の手配をする人を書き出してみましょう。岩田司法書士事務所では、希望と資料を伺い、遺言や契約で準備する内容を整理します。
参考:民法643条・653条・897条・960条 / 関係府省庁「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」死後事務委任契約の留意点
7. よくある質問
この章でわかること 判断に迷いやすい場面を確認します。
Q. お墓は長男が継がなければいけませんか?
民法の規定は長男と一律には定めていません。本人の指定、指定がない場合の慣習を確認します。慣習が明らかでない場合には家庭裁判所が定める規定があります。
Q. 遺言で決めれば墓地の名義も変わりますか?
祭祀承継者の指定と墓地の使用者変更を分けて確認します。管理者の規則や申請の条件、必要資料を調べてください。指定があるだけで管理者への手続きが済むとは限りません。
Q. 相続放棄したらお墓も継げませんか?
相続放棄をしても、お墓や仏壇などの祭祀財産を承継することはあります。民法897条による承継は、通常の相続とは別の仕組みだからです。ただし、墓地の使用権を承継できる条件や、未払い管理料などの支払義務は別に確認が必要です。
8. まとめ
- お墓などの祭祀財産は、通常の遺産分割と分けます。
- 本人の指定、慣習、家庭裁判所の順序を確認します。
- 墓地の使用者変更と費用、遺言・死後事務の役割を整えます。
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