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連絡の取れない相続人がいる相続をどう進めるか【司法書士が解説】

連絡の取れない相続人がいる相続の進め方。戸籍の附票から不在者財産管理人まで解説

この記事の監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)

原稿更新日:2026年9月21日 ※法令・料金等は変更されることがあります。個別の事情はご相談ください。

相続人の中に、何年も連絡を取っていない人がいる。住所も分からず、手紙を出す先すら分からない。そんな状態のまま、相続の手続きを止めてしまっている方は少なくありません。

遺産分割協議は、相続人が1人でも欠けたままでは進められません。連絡先の調べ方から、それでも見つからないときに使える制度まで、順番に説明します。

この記事のポイント

  • 遺産分割協議は相続人全員の参加が必要です。1人でも欠けたままの協議書は使えません
  • 住所が分からない場合は、戸籍の附票を取得して調べる方法があります
  • 連絡が取れない理由や居所・生死の状況を確認し、要件に応じて不在者財産管理人・失踪宣告を検討します

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1. 結論:相続人が1人でも欠けると、遺産分割協議はできない

この章でわかること 連絡が取れない相続人がいるときの、対応の全体像

遺産分割協議とは、亡くなった方の財産をどう分けるか、相続人全員で話し合って決める手続きです。相続人が1人でも欠けたまま結んだ協議は、無効になります。

連絡が取れない相続人がいても、あきらめる必要はありません。多くの場合、次の順番で対応します。

  1. 相続人の範囲と本籍地を確認する —— 亡くなった方や相続人の戸籍をたどり、誰が相続人になるかをはっきりさせます。
  2. 戸籍の附票で住所を調べる —— 本籍地の市区町村役場で附票を取得すると、現在の住所が分かることがあります。
  3. 手紙を送る —— 分かった住所へ、通常の郵便などで連絡します。必要に応じて、配達の記録が残る方法も検討します。
  4. 状況に応じて家庭裁判所の手続きを検討する —— 住所・居所を去って戻る見込みがなく、財産管理人がいない場合は不在者財産管理人を検討します。生死が長期間分からない場合は、失踪宣告も検討します。

連絡が取れなくなる理由はさまざまです。結婚や転勤で住まいを何度も変えた、家族間の行き違いから長く距離を置いている、そもそも面識がないまま相続人になった。理由が何であれ、対応の進め方は共通しています。

それぞれの内容を、この先の章で順番に説明します。

2. なぜ「全員参加」が必要なのか

この章でわかること 協議書に相続人全員の署名・押印が必要な理由

遺産の分け方は、相続人どうしの話し合いで決めます。

民法第907条第1項

共同相続人は、次条第一項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第二項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、

いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。

参考:e-Gov法令検索「民法」第907条

ここでいう「共同相続人」は、相続人全員を指します。1人だけを外して結んだ協議は、外された人の利益を害するため、無効として扱われます。

遺産分割協議によって預金の解約や不動産の名義変更を進める場合は、金融機関や法務局で、相続人全員が署名・押印した協議書などを求められるのが一般的です。ただし、手続きは遺産分割協議だけに限られません。法定相続分による相続登記、遺言に基づく手続き、預貯金の遺産分割前の払戻し制度など、要件や必要書類が異なる方法もあります。どの方法が使えるかを確認してください。

だからこそ、「連絡が取れないなら、その人を除いて進める」という選択肢はありません。遠回りに見えても、まず連絡先を確認するところから始める必要があります。

この決まりは、手続きを難しくするためのものではありません。連絡が取れない相続人自身の取り分を守るための決まりでもあります。もし一部の相続人だけで話し合いを進められるとしたら、あとから連絡がついた相続人が、自分の知らないところで財産を分けられてしまうことになりかねません。全員参加という条件は、いずれ連絡がつく相続人の権利を残しておくための仕組みでもあります。

こんな方は、この記事が参考になります

  • 相続人の中に、何年も連絡を取っていない人がいる
  • 戸籍の上では相続人だが、一度も会ったことがない
  • 以前の住所に手紙を送ったが、宛先不明で戻ってきた
  • 相続登記や預金の解約を進めたいが、この状態で止まっている

甥・姪など、もともと面識の薄い相続人が加わる相続については、独身の方の相続で相続人になる範囲を説明した記事もあわせてご覧ください。

3. まず、戸籍の附票で住所を調べる

この章でわかること 戸籍の附票の取り方と、請求できる人の条件

連絡先が分からないとき、最初に確認するのは戸籍の附票です。

戸籍の附票とは、本籍地の市区町村が戸籍ごとに作っている書類で、氏名や住所、住所を定めた年月日などが記載されています(住民基本台帳法17条)。本籍地さえ分かれば、実際の居住地が遠く離れていても取得できます。

誰でも取れるわけではありません。請求できる人は法律で決まっています。

住民基本台帳法第20条第1項(抜粋)

市町村が備える戸籍の附票に記録されている者(略)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、当該市町村の市町村長に対し、

これらの者に係る戸籍の附票の写し(略)の交付を請求することができる。

参考:e-Gov法令検索「住民基本台帳法」第20条

請求できるのは、本人・配偶者・直系尊属・直系卑属です。直系尊属とは父母や祖父母、直系卑属とは子や孫のことです。連絡が取れない相続人が、あなたの子や親であれば、この規定でそのまま請求できます。

一方、きょうだいや甥・姪のように、まっすぐにはつながらない親族の附票は、この第1項だけでは請求できません。別の制度が用意されています。遺産分割協議のために必要という正当な理由を示せば、氏名・住所などの主な事項が記載された附票の写しを請求できます(住民基本台帳法20条3項1号)。実際に認められるかどうかは、窓口となる市区町村の判断によります。事前に電話などで確認しておくと確実です。

調べる手順は、次のようになります。

  1. 亡くなった方の戸籍を取得する —— 出生から死亡までをたどり、相続人になる人の範囲を確定させます。
  2. 連絡が取れない相続人の本籍地を確認する —— 亡くなった方の戸籍に記載があるほか、他の相続人の記憶で分かることもあります。
  3. 本籍地の市区町村役場へ附票を請求する —— 郵送での請求にも対応している役場が多くあります。
  4. 附票に記載された住所へ連絡する —— 次の章で説明する方法で手紙を送ります。

相続人の範囲がそもそもはっきりしない、という段階でも構いません。戸籍を一緒にたどるところから、無料相談でお手伝いできます。→ 相続のご相談について詳しく見る

4. 手紙を送っても返事がないときの対応

この章でわかること 返事がないときに、次へ進むための考え方

附票で住所が分かったら、まず手紙で連絡します。事情を説明し、遺産分割協議への参加をお願いする内容です。

送る方法に決まりはありません。普通郵便などで連絡することもできますが、いつ、どんな内容を送ったかを残したい場合は、配達証明を付けた内容証明郵便など、記録が残る方法を選ぶこともあります。家庭裁判所の手続きでは、連絡を試みた経緯を資料で説明することがありますが、内容証明郵便が常に必要になるわけではありません。

それでも返事がないとき、焦って直接自宅を訪ねるのは避けてください。理由があって連絡を絶っている場合もあり、思わぬトラブルにつながることがあります。

返事がない状態がしばらく続いたら、次の2つの可能性に分けて考えます。

  • 住所・居所は判明しているが、手紙を送っても返事がない — 返事がないだけで不在者財産管理人の要件を満たすとは限りません。本人が住所・居所を去って戻る見込みがないかなどを確認します
  • 住所・居所を去ったまま生死も分からない — 不在者財産管理人のほか、生死不明の期間などを踏まえて失踪宣告を検討します

不動産が含まれる相続では、この間にも登記の期限が進んでいます。相続登記は2024年4月から義務になっており、期限を過ぎると過料の対象になることがあります。詳しくは相続登記の3年ルールを説明した記事で確認してください。期限に間に合わないと分かった時点で早めにご相談いただくと、取れる選択肢が広がります。

ここで手が止まってしまう方が多い段階です

手紙を送るところまではご自身でできても、その先の家庭裁判所の手続きは初めてという方がほとんどです。戸籍の附票の取り方や、次の一歩に迷ったときは、無料相談でご相談いただけます。→ 今の状況を相談する

5. 住所・居所を去ったとき:不在者財産管理人と失踪宣告

この章でわかること 2つの制度の違いと、それぞれの手続きにかかる期間・費用

住所・居所を去り、戻る見込みがない場合:不在者財産管理人

不在者財産管理人は、単に手紙への返事がない場合に直ちに使う制度ではありません。従来の住所・居所を去り、容易に戻る見込みがなく、本人が財産管理人を置いていないなどの事情がある場合に、家庭裁判所へ選任を申し立てます。住所が判明していても、本人がそこに居住している可能性や、単に返事をしていないだけなら、まずは連絡方法や事情を確認する必要があります。

民法第25条第1項
従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。

参考:e-Gov法令検索「民法」第25条

選ばれた管理人は、不在者に代わって財産を管理します。家庭裁判所の許可を得れば、遺産分割協議に不在者の代わりとして参加することもできます。これを権限外行為の許可といいます(民法28条)。

申立てができるのは、配偶者や他の相続人、債権者などの利害関係人と検察官です。申立て先は不在者の従来の住所地を管轄する家庭裁判所で、松江家庭裁判所(お住まいの地域によっては出雲・浜田などの支部)が窓口です。必要な書類は、申立書のほか、不在者の戸籍謄本・戸籍の附票、財産管理人の候補者の住民票、不在の事実を示す資料などです。申立てには収入印紙や郵便切手などが必要で、必要額は申立先の裁判所で確認してください。

参考:裁判所「不在者財産管理人選任」

7年以上生死が分からないとき:失踪宣告

生死が分からない状態が長く続いている場合には、失踪宣告という制度もあります。

民法第30条第1項
不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。

参考:e-Gov法令検索「民法」第30条

失踪宣告を受けると、その人は死亡したものとみなされます。相続関係への影響は、死亡とみなされる時期と、亡くなった方(被相続人)との相続関係によって変わります。代襲相続や、その人がいったん相続人となった後の相続(数次相続)が問題になることもあるため、配偶者・子などの関係を含めて個別に整理する必要があります。

あとから生存が判明すれば、宣告は取り消されます(民法32条1項)。ただし取消し前に善意で行った行為の効力には影響しません。申立てができるのは、不在者の配偶者や相続人にあたる者、財産管理人などの利害関係人です。必要書類や費用は不在者財産管理人の申立てとおおむね共通していますが、官報公告料が別途かかります。

参考:裁判所「失踪宣告」

どちらを選ぶか

2つの制度は目的が異なります。不在者財産管理人は、不在者の財産を管理し、家庭裁判所の許可を得て個別の行為を行うための制度です。失踪宣告は、生死不明の期間などの要件を満たす場合に、法律上の死亡の扱いを生じさせる制度です。どちらを検討するかは、住所・居所を去った経緯、生死不明の期間、遺産分割以外の法律関係などを含めて家庭裁判所や専門家に確認します。

比べる点 不在者財産管理人 失踪宣告
対象となる状況 従来の住所・居所を去り、容易に戻る見込みがなく、財産管理人がいないなどの事情がある 生死不明の状態が7年以上続いている(普通失踪の場合)
効果 管理人が財産を管理し、許可を得て協議に参加できる 不在者は死亡したものとみなされる
遺産分割への関わり方 不在者本人の代わりに管理人が参加する 死亡とみなされる時期等に応じて、代襲相続・数次相続を含む相続関係を個別に整理する
始めるまでの期間 比較的早く申立てできる 生死不明から7年経過している必要がある
取消しの可能性 本人が管理人を置けば命令は取り消される 生存が分かれば宣告は取り消される

どちらの手続きも、申立書の作成には戸籍の収集や事実関係の整理が必要です。不動産が絡む相続では、名義変更の期限も同時に意識しなければなりません。空き家のまま名義が動かせずにいるケースの考え方は、誰も住まない実家の名義変更と売却の記事にまとめています。

6. 自分でできること・司法書士に相談したほうがよいこと

この章でわかること 自分で進められる範囲と、専門家に任せたほうがよい範囲の分かれ目

ここまでの手順のうち、戸籍の収集や附票の請求、手紙の送付は、ご自身で進めることができます。時間はかかりますが、費用を抑えたい場合はご自身で始めていただいて構いません。

ただし、相続登記や預金の解約を控えている場合は、並行して進め方を考えておくと安心です。附票の請求先を間違えたり、必要な戸籍が1通足りなかったりすると、そのたびに窓口へ足を運び直すことになります。手続き全体の見通しを最初に立てておくと、やり直しを減らせます。

一方、不在者財産管理人の選任や失踪宣告を家庭裁判所に申し立てる場合は、戸籍などの必要書類を集め、事実関係を申立書にまとめる必要があります。どちらの申立書類の作成も、司法書士に依頼できます。

司法書士にできること・できないこと

不在者財産管理人の選任や失踪宣告では、利害関係人などの要件を満たす方が申立人になります。司法書士は家庭裁判所に提出する申立書類を作成できます。

できること できないこと
戸籍・附票の収集 家庭裁判所であなたに代わって主張すること
不在者財産管理人選任・失踪宣告の申立書類の作成 相続人どうしの交渉を代理すること
遺産分割協議書の作成 争いになった場合の訴訟対応

相続人どうしで争いになっている場合は、当事務所が窓口となり、提携する弁護士をご紹介します。

当事務所でも、不在者財産管理人の選任や失踪宣告に向けた申立書類の作成に対応できます。どの手続きが必要かは状況によって異なるため、まずは無料相談でご状況をお伺いします。

手続きを進める前に、遺言があれば同じような状況を防げたのかを知っておきたい、という方は自筆と公正証書、どちらの遺言にするか決める3つの基準の記事もご覧ください。生前対策全般のご相談は生前対策のご相談ページで受け付けています。

7. よくある質問

この章でわかること 海外在住・費用負担・相続放棄との関係についてのよくある疑問

Q. 相続人の1人が海外に住んでいます。同じ考え方でよいですか

A. 住所が分かっている場合は、まず手紙で連絡する点は同じです。海外への郵送やオンラインでのやり取りで済むこともあります。連絡が取れない場合の対応は、国内のケースと基本的に同じ考え方になりますが、書類の取り寄せに時間がかかることがあるため、早めにご相談ください。

Q. 附票を取得しても、記載されている住所が古く、届かないことはありますか

A. あります。附票には住所を変更した年月日ごとの履歴が一部残りますが、転居先の追跡には限界があります。届かない場合は、5章で説明した不在者財産管理人などの手続きを検討することになります。

Q. 不在者財産管理人の報酬は、誰が負担しますか

A. 原則として不在者の財産から支払われます。ただし財産が少ない場合、申立人が予納金をあらかじめ納めるよう求められることがあります。金額は家庭裁判所の判断によるため、申立て前の相談時に見通しを確認しておくと安心です。

Q. 自分は相続放棄を考えています。連絡が取れない相続人がいても期限に影響しますか

A. 相続放棄の熟慮期間(原則3か月)は、相続人それぞれが自己のために相続の開始があったことを知った時から数えます。単に被相続人の死亡を知った日だけで決まるとは限らず、他の相続人と連絡が取れないことを理由に、ご自身の期間が延びるわけでもありません。期限の数え方は相続放棄の3か月はいつから数えるかの記事で確認してください。

Q. 弁護士と司法書士、どちらに相談すればよいですか

A. 戸籍の収集や、不在者財産管理人選任・失踪宣告の申立書類の作成は司法書士が対応できます。相続人どうしで意見が対立し、交渉や裁判での代理が必要になった場合は弁護士の業務です。当事務所では、その場合も窓口となり、提携する弁護士をご紹介しています。

8. まとめ

  • 遺産分割協議は相続人全員の参加が必要です。1人でも欠けたままの協議書は使えません
  • 住所が分からない場合は、まず戸籍の附票を取得して調べます
  • 手紙を送っても返事がないときは、必要に応じて記録を残しながら、住所・居所を去った事情などを確認します
  • 要件を満たす場合は、不在者財産管理人の選任や失踪宣告という家庭裁判所の制度を検討します
  • 戸籍の収集や不在者財産管理人選任・失踪宣告の申立書類の作成は司法書士に依頼できます。争いがある場合は弁護士との連携が必要です

まずはご自身の戸籍と、連絡が取れない相続人の本籍地を確認するところから始めてください。

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