監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)
ページ更新日:2026年10月26日 一般的な手続きの解説であり、個別の事情によって必要な対応は異なります。
証券口座の相続では、残高の確認と、金融商品を受け取る手続きを分けて進めます。
株式や投資信託は、預金と同じ払戻しの方法で済むとは限りません。
口座の種類、銘柄と数量、遺言や分け方を確認し、取引先の書類条件に合わせます。
この記事のポイント
- 口座と商品を確認
- 取得者と方法を決める
- 移管後の数量を照合
証券会社からの報告書が一通だけでも、口座と保有商品の調べ方から相談できます。 証券口座の相続と必要書類を相談する
1. 残高を調べてから、取得者と受取方法を決める
この章でわかること 銀行口座の払戻しと同じ手順だと決めません。
証券口座の相続では、亡くなった方の保有商品を確認し、取得する人への手続きを行います。名義移管とは、株式などを受け取る人の名義へ移す手続きです。口座内の現金と有価証券では、必要な作業が異なる場合があります。
最初に取引先へ死亡を伝え、相続窓口の案内を受けてください。次に残高と商品を確認し、遺言や遺産分割の内容に沿って取得者を決めます。移管するか売却を伴うかなど、実行できる方法を窓口に確かめます。
分け方を決める前に、どの商品がどれだけあるかを調べます。口座残高の合計額だけでは、株式の銘柄や投資信託の口数が分かりません。価格が動く商品なので、金額と数量を区別して記録します。
例えば、預り金と株式と投資信託が一つの口座にある場合を考えます。預り金は金銭、株式は銘柄ごとの株数、投資信託は口数を確認します。同じ表に載せても、同じ受取方法とは限りません。
全体の遺産の範囲は、家庭裁判所の案内でも、財産の確認と評価を分けて整理しています。相続を始めるときの全体の順番と合わせて、証券口座の作業を進めてください。
2. 郵便・引落し・取引報告書から、口座を探す
この章でわかること 銘柄の名前だけで、手続き先を決めません。
年間取引報告書、残高報告書、取引先からの郵便を確認します。配当の通知や預金の入出金も、口座を探す手がかりです。ネット証券では紙の郵便が少ないこともあるため、口座の存在を複数の資料で調べます。
取引先の名称、支店、口座番号、資料の基準日を控えます。一社だけと決めず、別の報告書がないかを確かめます。古い報告書は手がかりですが、現在の数量をそのまま示す資料とは限りません。
パソコンやスマホにログインできても、本人として売買することは避けてください。保管商品を探す目的と、取引を行う権限は別です。デジタル遺品の確認方法を参考に、契約と取引先の特定を進めます。
配当の通知がある場合も、そこに記載された会社が証券会社とは限りません。株主名簿の管理先や、特別口座の案内などを確認します。どの窓口へ、どの種類の手続きを申し込むかを資料で見分けます。
取引先へは、死亡日の残高資料と現在の残高資料のどちらが必要か伝えます。遺産調査用、分割の検討用、税務用では目的が違います。証明書をまとめて取る前に、基準日と必要通数を確認してください。
借入れや信用取引などの有無も聞きます。口座があるからプラスの財産だけとは考えません。親の借金を調べる方法と合わせて、取引に伴う債務も確認します。
| 資料・項目 | 記録すること | 確認する目的 |
|---|---|---|
| 取引先からの報告書 | 名称・支店・口座番号 | 相続窓口を特定する |
| 残高資料 | 基準日・銘柄・数量・預り金 | 財産の範囲を確認する |
| 配当等の通知 | 管理先・支払先・対象銘柄 | 別の手続き先を確認する |
| 口座区分 | 特定口座・一般口座・NISA | 移管と税務の条件を確認する |
3. 株数や口数を分けるか、売却代金を分けるか決める
この章でわかること 価格の基準日と、実行する人をそろえます。
株式や投資信託を、そのまま相続人が取得する方法があります。一人が取得する場合も、複数に分ける場合も、銘柄と数量を確認します。単位や端数の扱いは、商品と窓口によって確かめてください。
売却して代金を分ける方法を検討する場合は、売却の手順を先に窓口へ確認します。誰の口座へ移し、誰が売却するかを明確にしてください。売却代金から何の費用を差し引くか、分配する時期も整理します。
現在の評価額と、実際に受け取る売却代金は同じとは限りません。価格は日々変わり、売却費用も関係します。ある日の残高表を見て、将来の手取り額を保証する合意にしないようにします。
例えば、きょうだいが株式を半分ずつ取得したい場合を考えます。銘柄によって単位や数量が異なるため、合計金額の半分というだけでは手続きが決まりません。分割できる数量かを確認してから協議書へ書きます。
受取側の証券口座が必要になる場合は、開設先と口座の種類を確かめます。持っている別会社の口座へ、全商品を移せるとは限りません。売却や他社移管を希望するなら、対象商品ごとに対応を確認します。
相続人全員の合意を記録する手順は、遺産分割協議書の作り方を参照してください。遺言がある場合は、検認の要否も確認します。証券会社の所定書式と、合意内容の書面の役割を分けて考えましょう。
証券口座の相続を進める順番
- 死亡を連絡し、残高と債務の有無を調べる
- 遺言と相続人を確認する
- 商品・数量ごとに取得者と受取方法を決める
- 所定書類を提出し、移管結果を照合する
移管するか売却するか迷ったら、銘柄・数量・受取口座を示してご相談ください。取引先に確認する事項を整理します。 相続の相談・手続き案内を確認する
4. NISAと課税口座では、引き継ぐ情報を分ける
この章でわかること 相続人のNISAへ、そのまま移せると考えません。
NISAは、一定の投資の配当や売却益を非課税にする仕組みです。相続税を非課税にする制度ではありません。亡くなった方の非課税の扱いを、相続人がそのまま引き継ぐわけではありません。国税庁は、相続で取得したNISAの商品を売却しても、同じ非課税の適用はないと案内しています。
相続手続きを取引先へ連絡し、死亡届の提出や受入先の条件を確認します。自分のNISA口座があるのでそこへ移す、とは決めないでください。旧NISAの保有分がある場合も、どの制度の口座に入っていたかを示します。
後に売却する際の取得費にも違いがあります。取得費とは、税金を計算する際に使う購入費用などの情報です。通常の相続で取得した株式は、原則として亡くなった方の取得費を引き継ぎます。NISAから相続で払い出された株式等は、原則として相続開始日の終値に相当する金額で取得したものと扱われます。
残高証明書の評価額を、そのまま全商品の取得費として使わないようにします。取引報告書や過去の取得価額の情報も残します。金額が不明だから税金がかからない、とは考えません。
税務の計算や、売却に伴う申告の要否は、提携する税理士との連携で確認します。司法書士への相続手続きの依頼範囲と、税務の依頼範囲も整理します。窓口から受け取る税務用資料は、移管完了後も保管してください。
参考:国税庁:NISA商品の相続に関する取扱い・37の14-2
5. 提出書類と完了後の数量まで確認する
この章でわかること 書類の発送だけで、相続手続きの完了にしません。
相続関係を示す戸籍、本人確認書類、印鑑証明書などは、取引先の案内で確認します。遺言、遺産分割、相続人の状況で必要な資料が異なります。全社で同じ有効期間や原本の条件とは決めないでください。
法定相続情報一覧図の写しを使える場合もあります。ただし、それだけで取得者の合意まで示せるわけではありません。一覧図の作り方と使える範囲で、追加書類の確認点を確かめます。
戸籍を集める場合は、広域交付で取れる戸籍と対象外を確認します。海外在住者や未成年者がいる場合は、所定書式だけで進めないようにします。署名の証明や代理権の資料が必要かを相談してください。
完了後は、受取側の口座へ銘柄と数量が移ったか照合します。預り金、配当、分配金の扱いも確認します。死亡後に発生したお金を、以前の残高資料と二重に数えないことが大切です。
提出日、追加資料の請求日、完了通知を記録します。複数の取引先があれば、どの口座が完了したか一覧にします。分配する合意なら、送金結果まで確認してください。
依頼費用は、口座数だけでなく商品や手続きの範囲でも変わります。資料の取得だけか、協議書や移管まで頼むかを決めて、見積りを確認してください。相続手続きの支援範囲で、必要な作業を整理できます。
参考:法務局:法定相続情報証明制度の手続きと利用先の追加書類
6. よくある質問
この章でわかること 判断に迷いやすい場面を確認します。
Q. 自分の証券口座があれば、どこからでも移せますか?
取引先と商品の条件を確認します。受取側に特定の口座が必要な場合があります。他社の口座へ全て移せるとは限りません。
Q. NISAの株式は、私のNISAへ移せますか?
亡くなった方のNISA口座の商品を、相続人のNISA口座へそのまま移すことはできません。NISAの非課税扱いも相続人には引き継がれません。相続後の受入先と取得費の扱いを証券会社や税務資料で確認してください。
参考:国税庁:NISAの相続・受入れ(37の14-1注2・37の14-2・37の14-6)
Q. 株の値上がり分も、最初の残高表で分ければよいですか?
評価の基準日と分け方を相続人間で確認します。売却代金を分けるのか数量を分けるのかでも異なります。税務用の価額と、家族間の合意を区別してください。
7. まとめ
- 取引先と商品を特定し、残高と債務を確認します。
- 銘柄・数量・価格の基準日を分けて記録します。
- 取得者と受取方法を決め、口座の条件を窓口へ確認します。
- NISAや取得費の情報を分け、移管結果を照合します。
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