トップ > お役立ちコラム > 民事信託・成年後見

信託の受託者が先に死亡|後継者と引継ぎ【司法書士が解説】

信託の受託者が先に死亡|後継者と引継ぎ(司法書士 岩田剛知の写真付きアイキャッチ)

監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)

ページ更新日:2026年10月19日 一般的な手続きの解説であり、個別の事情によって必要な対応は異なります。

家族信託の受託者が亡くなると、その人の受託者としての任務が終わります。

受託者の相続人が、そのまま後継の受託者になるとは限りません。

契約の後継者と終了条件を確認し、財産の保管、選任、口座や登記の引継ぎを進めます。

この記事のポイント

  • 後継者の定めを確認
  • 相続と受託者交代は別
  • 財産と事務を引継ぐ

後継者が決まっていない場合も、信託契約書から選任方法と引継ぎの順番を整理できます。まずは、現在の契約と支払いの状況をお聞かせください。

信託の後継者と引継ぎを相談する

1. 受託者の死亡と、信託全体の終了を分ける

この章でわかること 管理する人が亡くなっても、財産を通常の遺産と混ぜません。

受託者が一人で、その人が亡くなった場合を中心に説明します。受託者が複数いる場合、原則として残る受託者が権利義務を引き継ぎます。契約に別の定めがある場合や全員の任務が終わった場合は、扱いの確認が必要です。詳しくは信託法86条と契約を確認してください。

家族信託は、家族が受託者になる民事信託の通称です。

受託者とは、信託契約などに従って財産を管理する人です。委託者は財産を託す人、受益者は信託の利益を受ける人です。家族信託では、親が委託者と受益者を兼ね、子が受託者となる形もあります。

受託者である個人の死亡は、信託法56条が定める任務の終了理由です。ただし、その時点で信託全体が終わるかは、契約の終了条件などを確認します。受益者である親が生きているのに、管理する子が先に亡くなる場合もあります。

受託者の交代と、信託の終了は別の問題です。契約書の後継受託者、受託者の変更、信託の終了の条項を探します。契約の名称だけで、次に管理する人を判断しないでください。

信託財産を、亡くなった受託者の通常の遺産として分割することはできません。受託者個人の預金や不動産と、信託財産を分けます。信託法74条は、受託者の死亡で任務が終了した場合の信託財産の帰属を、別の仕組みで定めています。

受託者が受益者でもあった場合は、受益権の扱いも別に確認します。受益権とは、信託に基づいて利益を受け、一定の権利を行使する立場です。管理する地位の交代と、利益を受ける地位の承継を混ぜないことが大切です。

本文は現在の信託法に基づく家族信託を中心に説明します。古くから続く信託では、成立時期と適用法も確認します。手元の契約がどの法律に基づくか分からなければ、作成日と変更書類を示して相談してください。

参考:e-Gov法令検索:信託法56条・74条

2. 後継者が決まっているか、引き受けられるか確認する

この章でわかること 名前が書いてあるだけで、手続き完了としません。

後継受託者とは、現在の受託者が任務を終えた後に、引き継ぐ受託者です。契約書で候補者を指定している場合、死亡の事実と就任の条件を確認します。本人が引き受けられる状況か、必要な承諾も確かめます。

例えば、長男が受託者で、長女を後継者として指定した契約を考えます。長女が名前を知っていることと、任務を引き受ける準備があることは別です。管理する財産、毎月の支払い、報告する相手を共有します。

指定された人が断ったり、病気などで引き受けられなかったりする場合もあります。候補者の名前があるので問題ない、と放置しないことが大切です。契約に次の候補者や選任方法があるかを確認してください。

後継者が指定されていない場合などは、原則として委託者と受益者の合意による新受託者の選任を検討します。委託者がすでに亡くなっているなど、現に存在しない場合は、信託法62条8項の読替えにより、受益者が新受託者を選任する扱いです。委託者の判断能力が低下している場合は、意思確認や代理の仕組みを別に確かめます。誰が合意する立場にあるかを確認して進めます。

受益者が複数の場合や、本人の判断能力が低下している場合も、家族の多数決でよいとは考えません。必要な意思決定の方法と代理の仕組みを確かめます。協議の状況などから必要と認められる場合は、利害関係人の申立てにより、裁判所が新受託者を選任する制度があります。新受託者が就任する前の申立ては、原則として前受託者の住所地を管轄する地方裁判所で行います。

参考:e-Gov法令検索:信託法62条・262条(選任と地方裁判所の管轄)

契約と状況 確認すること 次に整理すること
候補者の指定あり 就任条件と引受けの意思 就任を示す資料と引継ぎ
候補者が引き受けない 次の候補者・選任方法 委託者と受益者の立場
候補者の指定なし 選任する人と合意の方法 新受託者と契約上の権限
合意や管理が困難 裁判所の手続きの必要性 停止する支払い・財産の保管

3. 受託者の相続人は、通知と保管の義務を確認する

この章でわかること 受託者の子が、そのまま自由に管理できるわけではありません。

亡くなった受託者の相続人が、受託者の地位を当然に相続するわけではありません。後継受託者は、信託の契約や法律に沿って決めます。受託者の個人財産を相続する人と、新受託者を区別してください。

信託法60条の通知は、死亡の事実を知っている受託者の相続人から、知れている受益者へ行うものです。契約に別の定めがあれば、その内容も確認します。通知先が親本人だけとは限らないため、現在の受益者を特定します。

同条は、新受託者などが信託事務を処理できるようになるまで、財産の保管と引継ぎに必要な行為を求めています。これは、信託財産を家族の生活費へ自由に使う権限ではありません。保管する立場と、受託者として管理する権限を分けます。

契約書、通帳、鍵、帳簿、請求書などを散逸させないようにします。個人の遺品と混ざっている場合は、何が信託の資料か確認します。通帳と収支の記録も、残高だけでなく支払先を照合してください。

施設費や家賃など、継続した支払いがある場合は、誰がどの権限で払うか早急に確認します。相続人が通帳やログイン情報を持っていても、元の受託者本人として手続きをしないようにします。デジタル資料の確認でも、情報の保管と取引の権限は別です。

管理ができる人が不在で、財産の保護に支障がある場合は、裁判所の管理制度の必要性を相談します。信託法74条には、信託財産法人管理人による管理を命ずる処分があります。自分で新しい管理者を名乗ることとは違う手続きです。

参考:e-Gov法令検索:信託法60条・74条

契約の後継者や終了の条項が分かりにくい場合は、必要な選任手続きと当面の財産保管を一緒に整理します。家族信託と生前対策の相談内容もご覧ください。

選任の書類と財産保管を相談する

4. 契約・口座・登記と、収支の記録を引き継ぐ

この章でわかること 後継者が決まった後も、取引先への手続きを確認します。

新受託者が決まったら、信託契約に沿って管理を引き継ぎます。信託法75条は、新受託者が就任した場合の信託に関する権利義務の承継を定めています。就任と、銀行などでの手続きが全て済んだことは同じではありません。

口座については、開設した金融機関へ受託者の死亡を連絡します。信託の契約、口座の条件、後継者の資料を示し、利用再開や名義の扱いを確認します。家族の通常の相続預金と、同じ払戻し手続きだとは決めません。

不動産がある場合は、所有者の登記と信託の登記を確認します。受託者の変更に伴う登記の資料をそろえます。亡くなった受託者の配偶者や子へ、通常の相続登記をすればよいとは考えないでください。

収支、未払費用、未収家賃、進行中の契約も引継ぎます。新受託者が支払いを再開するときに、同じ請求を二重に払わないように照合します。各資料の基準日と、死亡後に動いた金額を区別してください。

受託者個人の相続は、相続を始める手順に沿って別に進める作業です。個人の借金と、信託に関する債務を分類して確認します。ただし、信託に関する債務でも、契約などによっては前受託者個人の財産にも支払いの責任が及びます。後任へ引き継いだだけで、その責任がすべて消えるわけではありません。相続債務の調査と併せ、借入契約と信託法76条の扱いを確認します。

参考:e-Gov法令検索:信託法75条・76条(承継と債務の責任)

5. 後継者が決まらない場合と、今後の備えを考える

この章でわかること 受託者が不在のまま、長期間放置しません。

受託者が欠け、新受託者が就任しない状態が1年間続くと、信託法163条3号の終了事由に当たります。ただし、1年は何もせず待ってよい期間ではありません。毎月の支払いや財産の保管に支障が出る前に、選任を進めます。

信託法第163条第3号(柱書・第3号)
信託は、次条の規定によるほか、次に掲げる場合に終了する。
三 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が一年間継続したとき。

参考:e-Gov法令検索:信託法163条3号(2026年10月19日時点の施行条文)

契約で受託者の死亡を終了条件としている場合なども、条項を確認します。終了した場合には、残った財産を誰へ、どの手続きで渡すかが問題になります。信託が終われば、その財産が受託者の相続人のものになると決めないでください。

まだ現在の受託者が元気なら、後継者の指定と引受けの準備を見直します。後継者が財産の内容を理解し、無理なく続けられるかも確認します。名前だけでなく、資料の保管場所と連絡先を共有しましょう。

信託と任意後見を組み合わせている場合、受託者と任意後見人は別の役割です。家族信託と任意後見の違いを確認し、両方の担当者に不在の備えがあるか見ます。信託の後継者が、他の契約の権限まで引き継ぐとは考えません。

松江の家族信託相談と口座の確認では、契約前に取引先と調整する項目も整理しています。既存の契約を見直す場合も、金融機関の対応と登記の資料を合わせて確認します。生前対策の目的を整理する方法に沿って、受益者の生活を支える範囲を明確にしましょう。

司法書士には、裁判所へ提出する書類の作成や登記をご相談いただけます。後継者をめぐる交渉や裁判所での代理が必要な場合は、当事務所が窓口となり、提携する弁護士をご紹介します。信託契約書と変更書類、登記記録、収支表があれば、確認を進めやすくなります。

参考:e-Gov法令検索:信託法163条3号・9号

6. よくある質問

この章でわかること 判断に迷いやすい場面を確認します。

Q. 受託者の子どもが、受託者の地位を相続しますか?

当然に相続するわけではありません。後継者は信託の契約や法律に沿って決めます。受託者個人の相続と、信託財産の引継ぎを分けます。

Q. 契約に後継者の名前があれば、他の準備は不要ですか?

受託者が一人の場合も、就任条件と引受けの意思を確認します。口座、登記、収支、契約の引継ぎも必要です。候補者が引き受けられない場合の方法も確認してください。

Q. 受託者がいなくても1年間は何もしなくてよいですか?

待ってよい期間ではありません。財産の保管と生活費の支払いなどが問題になります。新受託者の就任や必要な管理の方法を早めに相談してください。

7. まとめ

  • 受託者の任務終了と、信託全体の終了を区別します。
  • 契約の後継者、引受けの意思、終了条件を確認します。
  • 受託者の相続人は、通知と保管・引継ぎの義務を確認します。
  • 新受託者の就任後も、口座・登記・収支の引継ぎを進めます。

受益者の生活を支える引継ぎを整理しませんか

信託契約書、登記記録、口座資料があればお持ちください。すべてそろっていなくても、分かる範囲からご相談いただけます。

松江・出雲・安来・米子周辺のご相談を受け付けています。初回相談は60分無料です。相談できる内容と手続きの流れを見る

0852-28-0336に電話する

フォームから初回無料相談を申し込む

参考にした公的資料

関連記事

あわせて読みたい記事

記事の一覧へ戻る→

ご相談・お問い合わせ

初回相談は60分無料です。手続きの内容と費用をご確認いただいてから、依頼するかどうかをご判断いただけます。お電話・フォーム・LINEからご相談をお申し込みください。※2回目以降のご相談は30分5,500円(税込)です。

0852-28-0336受付|平日 9:00〜18:00 初回相談 60分無料
お問い合わせする→ LINEで相談を申し込む→
お問い合わせ LINEで相談を申し込む