この記事の監修者 司法書士 岩田 剛知(島根県司法書士会 第394号)
最終更新日:2026年9月2日 ※本記事は更新日現在の法令・実務に基づき内容を確認しています。
配偶者も子どももいない。親はもう亡くなっているか、高齢になっている。兄弟はいるが、もう何年も会っていない。
そういう方から「自分の財産は、最後にどこへ行くのか」というご質問をいただきます。答えは、法律であらかじめ決まっています。
ただし、その順番を知らないまま何もしないと、思っていた相手とは違う人に渡ることがあります。誰が相続人になるのか。誰もいないとどうなるのか。渡したい相手がいるなら何をすればよいのか。民法の条文とあわせて、順に説明します。
この記事のポイント
- 独身でも相続人はいます。親 → 兄弟姉妹 → 甥・姪の順に、法律で行き先が決まっています
- 相続人が誰もいない場合は、家庭裁判所の手続きを経て、残った財産は国庫へ入ります
- 法定相続人以外の人や団体へ渡したいなら、遺言を書いておく必要があります
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1. 結論:独身でも、相続人はいます
この章でわかること 独身でも親・兄弟姉妹・甥姪が相続人になること
配偶者も子どももいない方でも、相続人がまったくいないケースは、実際にはそう多くありません。親がご存命なら親が相続人になります。親が亡くなっていても、兄弟姉妹がいれば兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合でも、その子、つまりあなたから見た甥・姪が相続人になります。ここまで誰もいないときに、はじめて「相続人がいない」という状態になります。
相続人とは、亡くなった方の財産を引き継ぐ人として、民法が定めている人のことです。誰がなるかは、亡くなった方の希望ではなく、法律の順番で決まります。遺言を書いていなければ、この順番がそのまま結論になります。
ここで多くの方が驚かれるのが、次の2点です。
ひとつは、何十年も会っていない兄弟や、顔も知らない甥・姪が相続人になりうることです。疎遠かどうかは、相続人になるかどうかに関係しません。
もうひとつは、長年お世話になった友人や内縁の相手に、そのままでは一円も渡らないことです。法律上の家族でなければ、相続人にはなりません。
こんな方は、早めに考えておく価値があります
- ✓兄弟姉妹や甥・姪と、長く連絡を取っていない
- ✓お世話になっている方や、支援したい団体がある
- ✓持ち家や田畑など、放っておくと管理に困る不動産がある
- ✓入院や施設入居のときに、頼める人が思い浮かばない
ひとつでも当てはまるなら、財産の行き先を自分で決めておく意味があります。相続全般のご相談は相続のご相談ページでも受け付けています。
2. 誰が相続人になるのか
この章でわかること 順位の決まり方と、甥姪の代襲が一代限りであること
相続人になる人と、その順番は民法で決まっています。全体の流れは次のとおりです。
第1順位は子。独身でも子がいることはあります
結婚していなくても、認知した子や養子がいれば、その子が第1順位の相続人になります。「独身だから子はいない」と決めつけずに、まず確認してください。
子がすでに亡くなっている場合は、その子(孫)が代わりに相続人になります。これを代襲相続といいます(民法887条2項)。孫も亡くなっていれば、そのまた子へと下がっていきます(同条3項)。
第2順位は父母・祖父母
子がいない場合、父母などの直系尊属が相続人になります。直系尊属とは、父母・祖父母のように、自分より上の世代でまっすぐつながる血族のことです。
父母が二人とも亡くなっていて祖父母がご存命なら、祖父母が相続人になります。父母と祖父母が同時にご存命なら、近いほうの父母だけが相続人です。
第3順位は兄弟姉妹。ここが独身の方の分かれ目
子も直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。ここが、独身の方の相続でいちばん問題になりやすいところです。
民法第889条
次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
2 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。
この2項が、独身の方にとって大事な条文です。準用されているのは887条の「2項」だけで、「3項」は入っていません。
887条2項は代襲相続、887条3項はさらにその下の世代への再代襲を定めた条文です。3項が準用されていないということは、兄弟姉妹の代襲は甥・姪の一代限りで、その子には引き継がれないという意味になります。
たとえば兄が先に亡くなっていて、兄の子(あなたの甥)もすでに亡くなっている場合、甥の子は相続人になりません。この点は、子の系統の代襲(下の世代へ続いていく)と扱いが違います。
配偶者は常に相続人になる
配偶者がいる場合、配偶者は順位に関係なく常に相続人になります(民法890条)。ただし、ここでいう配偶者は婚姻届を出した相手だけです。何十年一緒に暮らしていても、内縁の相手は相続人になりません。
ご自身の状況に当てはめる
独身の方によくある形を整理すると、次のようになります。
| あなたの状況 | 相続人になる人 | 遺留分 | 気をつける点 |
|---|---|---|---|
| 認知した子・養子がいる | その子 | あり | 疎遠でも第1順位。ほかの順位の人は相続人になりません |
| 父母のどちらかがご存命 | 父母 | あり | 親の判断力が下がっていると、手続きが止まることがあります |
| 父母は他界、祖父母がご存命 | 祖父母 | あり | 高齢のため、実際の手続きは負担になりがちです |
| 直系尊属はなく、兄弟姉妹がいる | 兄弟姉妹 | なし | 疎遠でも相続人。遺産の分け方を決めるには全員の合意が必要になります |
| 兄弟姉妹が先に他界、その子がいる | 甥・姪 | なし | 面識がないまま手続きを頼むことになります |
| ここまで誰もいない | 相続人なし | — | 家庭裁判所の手続きを経て、残りは国庫へ |
遺留分とは、一定の相続人に最低限保障される取り分のことです。兄弟姉妹には遺留分がありません(民法1042条1項)。この違いが、次の章と4章で効いてきます。
遺留分の考え方をもう少し詳しく知りたい方は、遺留分とはなにかを解説した記事もあわせてご覧ください。
3. 相続人が誰もいないと、財産はどうなるか
この章でわかること 清算人の選任から国庫帰属までの流れと、かかる時間
子も、直系尊属も、兄弟姉妹も甥・姪もいない。この場合、財産は宙に浮いたままにはなりません。民法が処理の道筋を定めています。
まず、相続人がいるかどうかがはっきりしない状態になると、その財産は「法人」として扱われます。持ち主のいない財産をそのままにしないための仕組みです(民法951条)。
そのうえで、家庭裁判所が財産を整理する人を選びます。
民法第952条第1項
前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
この「相続財産の清算人」は、以前は「相続財産管理人」と呼ばれていました。民法の改正で名前が変わっています。古い解説記事では今も旧い名前で書かれていることがあるので、調べるときは注意してください。
手続きの流れ
- 家庭裁判所へ申立て —— 債権者や特別縁故者などの利害関係人、または検察官が申し立てます。申立先は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
- 清算人の選任と公告 —— 裁判所が清算人を選び、「相続人がいるなら申し出てください」と公告します。この期間は6か月を下回れません(民法952条2項)。
- 債権者・受遺者への公告 —— 清算人が、2か月以上の期間を定めて借金などの申出を募り、財産から支払います(民法957条1項)。この公告は前のステップと並行して進むため、順番待ちにはなりません。
- 特別縁故者への分与 —— 生前に世話をしていた人などが請求し、家庭裁判所が認めれば財産が分けられます(民法958条の2)。
- 残りは国庫へ —— ここまでで渡されなかった財産は、国のものになります(民法959条)。
特別縁故者にあたっても、当然に受け取れるわけではない
特別縁故者とは、亡くなった方と生計を同じくしていた人、療養看護に努めた人、その他特別の縁故があった人のことです。内縁の相手や、長年身のまわりの世話をしてきた友人が当てはまることがあります。
ただし、請求すれば当然に認められるものではありません。条文は「相当と認めるとき」に家庭裁判所が「与えることができる」と書いています。判断するのは裁判所です。
請求の期限もあります。清算人の選任公告の期間が満了してから3か月以内です(民法958条の2第2項)。この期限を過ぎると請求できません。
つまり、世話をしてくれた人に確実に渡したいなら、この制度をあてにするのは危うい選択です。相続人も特別縁故者もいなければ、残った財産は国庫に入ります。
民法第959条
前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。
手続きには時間も費用もかかる
公告の期間だけで6か月以上、特別縁故者の請求期限まで含めるとさらに3か月です。始まりから終わりまで、1年前後、あるいはそれ以上かかると考えておいてください。
費用もかかります。裁判所に納める申立ての手数料(収入印紙)は800円、官報公告料は5,582円です。これに加えて、清算人の報酬などにあてる予納金を求められることがあります。
そして、この申立てをするのは残された誰かです。あなたの財産のために、面識のない甥・姪や債権者が家庭裁判所へ足を運ぶことになります。
逆に、めぼしい財産がなければ、誰も申し立てないまま放置されることもあります。手続きが動き出すのは、費用を負担してでも整理したい人がいる場合です。持ち家や田畑が残る方ほど、行き先を決めておく意味があります。
相続人がいるかどうかから、調べられます
戸籍をたどれば、誰が相続人になるかははっきりします。「兄弟がいたはずだが連絡先が分からない」という段階でも構いません。岩田司法書士事務所では初回60分のご相談を無料でお受けしています。→ 戸籍の調べ方を相談する
4. 渡したい相手がいるなら、遺言を書いておく
この章でわかること 法定相続人以外へ渡す手段と、兄弟姉妹に遺留分がない意味
ここまでは「何もしなかった場合」の話です。順番も行き先も、法律が決めます。
法定相続人以外の人や団体へ財産を渡したいなら、遺言を書いておく必要があります。民法は、遺言によって財産の全部または一部を処分できると定めています(民法964条)。
亡くなったあとに財産を渡す方法は遺言だけではありません。生前贈与や死因贈与という方法もあります。ただし遺言には、相手の同意が要らない、後から書き直せる、費用も比較的抑えられる、という扱いやすさがあります。当事務所でも、まず遺言から検討していただくことが多い方法です。
遺言があるかないかで、こう変わります
| 比べる点 | 遺言を書いていない | 遺言を書いておく |
|---|---|---|
| 財産の行き先 | 法律の順位で決まる | 自分で決められる |
| 友人・内縁の相手へ | 渡せない | 渡せる |
| 団体への寄付 | できない | できる |
| 相続人が誰もいない場合 | 清算手続きを経て国庫へ | 指定した相手へ渡る |
| 手続きをする人 | 相続人全員で話し合う | 遺言執行者に任せられる |
| 甥・姪の負担 | 戸籍集め・署名・押印が必要 | 執行者がいれば関与を減らせる |
遺言を書く価値がいちばん高いのは、相続人が兄弟姉妹や甥・姪だけになる方です。理由は2章で触れた遺留分にあります。兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言で書いたとおりに財産を動かせます。
一方、父母や祖父母がご存命の場合は、直系尊属に遺留分があります。直系尊属だけが相続人になるときの遺留分は3分の1です(民法1042条1項1号)。遺言は有効ですが、あとから遺留分の請求を受ける可能性があります。
自筆で書くか、公正証書にするか
遺言には主に2つの形があります。自分で書く自筆証書遺言と、公証役場で作る公正証書遺言です。
身寄りが少ない方の場合、公正証書遺言をおすすめすることが多くなります。公証人が関与するため形式の不備で無効になりにくく、原本が公証役場に保管されるため、紛失や書き換えの心配も減るからです。
形式の選び方は、自筆と公正証書、どちらの遺言にするか決める3つの基準の記事で詳しく説明しています。無効になりやすい書き方については遺言が無効になるケースの記事をご覧ください。
費用の目安は、公正証書遺言の費用の内訳の記事にまとめています。当事務所の報酬は、自筆証書遺言サポートが70,000円(税込77,000円)〜です。公正証書遺言サポートは100,000円(税込110,000円)〜で、公証人手数料は別途かかります。
費用の全体像は料金のご案内で確認できます。生前の備えをまとめて相談したい方は生前対策のご相談ページもご覧ください。
一度書いても、あとから変えられます
「いま決めてしまうのが怖い」という声をよくいただきます。遺言は何度でも書き直せます。新しい遺言を作れば、内容が食い違う部分は新しいほうが優先されます。
状況が変わったときの直し方は、遺言は書き直せることを説明した記事にまとめています。まだ気持ちの整理段階という方は、エンディングノートと遺言の違いの記事から読んでみてください。
遺言執行者を決めておく
遺言には、内容を実現する担当者として遺言執行者を指定できます。独身の方の場合、これを決めておくかどうかで、残された人の負担が大きく変わります。
執行者がいなければ、預金の解約も不動産の名義変更も、相続人が自分で動くことになります。面識のない甥・姪に、戸籍を集めて書類に署名してもらう場面が出てきます。
執行者を決めておけば、その人が手続きを進められます。司法書士などの専門職を指定することもできます。
当事務所を遺言執行者に指定していただく場合の報酬は、500,000円(税込550,000円)〜です。財産の内容や手続きの範囲によって変わるため、遺言を作る段階でお見積りをお出しします。
5. 財産の行き先以外に、決めておくこと
この章でわかること 遺言では決められない「手続きの担当」の備え方
遺言で決められるのは、財産を誰に渡すかです。亡くなったあとには、それとは別に「誰が手続きをするか」という問題が残ります。
葬儀や納骨を主宰する人は、遺言で指定できます(民法897条1項ただし書)。一方、病院や施設の精算、役所への届出、住まいの片づけと明渡し、契約の解約は財産の配分ではないので、遺言では担当者を決められません。
家族がいる方なら自然に誰かが動きます。独身で身寄りが遠い方の場合、動く人がいないまま時間が過ぎることがあります。
遺言でカバーできないことは、別の契約で備えられます
心配ごとごとに、使う仕組みが分かれています。組み合わせて備えるのが一般的です。
| 心配ごと | 備えるもの | 詳しい記事 |
|---|---|---|
| 財産を誰に渡すか | 遺言 | 遺言の形式の選び方 |
| 亡くなったあとの手続き | 死後事務委任契約 | 死後事務委任契約とは |
| 入院・施設入居の保証人 | 身元保証 | 身元保証人がいないとき |
| 日々の安否と連絡 | 見守り契約 | 見守り契約とは |
| 判断力が下がったあと | 任意後見契約 | 生前対策は何から始めればいいか |
まとめてご相談いただけます。→ 終活支援のご案内を見る
この記事は財産の行き先の話に絞っています。手続きを誰に頼むかについては、死後事務委任契約とは何かを説明した記事で、頼めること・頼めないことを分けて説明しています。
費用の考え方は、当事務所の料金のページでご確認いただけます。
不動産があるなら、名義の問題も残ります
持ち家や田畑がある場合、亡くなったあとに名義変更(相続登記)が必要になります。相続登記は2024年4月から義務化されており、期限が定められています。
相続人が甥・姪だけという状況では、この登記が進みにくくなります。誰が動くのか決まっていないためです。期限と過料の内容は、相続登記の3年ルールの記事で確認してください。費用の目安は相続登記の費用の記事にあります。
6. 何から始めればよいか
この章でわかること 相続人の確認 → 財産の把握 → 手段の選択という順番
やることは3つです。順番に進めれば、途中で迷いません。
- 相続人になる人を確認する —— ご自身の戸籍をたどり、誰が相続人になるかをはっきりさせます。兄弟姉妹が亡くなっている場合は、その子まで確認します。
- 財産を書き出す —— 預貯金、不動産、有価証券、保険、借入れ。金額は概算で構いません。まず一覧にすることが目的です。
- 渡したい相手を決めて、手段を選ぶ —— 法定相続人のとおりでよければ、遺言は必須ではありません。違う相手に渡したいなら遺言を作ります。
ステップ1でつまずく方が多いので、補足します。自分の戸籍は、本籍地のある市区町村で取れます。転籍していると、以前の本籍地の分も必要になります。
2024年3月から、本籍地以外の市区町村の窓口でもまとめて請求できる戸籍の広域交付という制度が始まりました。自分の戸籍をさかのぼる分は、これでたいてい集まります。
ただし、この制度で取れないものがあります。独身の方の相続では、ここが効いてきます。
広域交付では取れないもの
- 兄弟姉妹・甥・姪の戸籍 —— 請求できるのは、本人・配偶者・直系尊属・直系卑属に限られます(戸籍法10条1項)。兄弟姉妹は直系ではないため対象外です
- 電子化されていない古い戸籍 —— 広域交付の対象は、データで作られた戸籍だけです(戸籍法120条の2第1項)
- 郵送での請求・代理人による請求 —— 本人が窓口へ出向いて請求する方法です
参考:e-Gov法令検索「戸籍法」第10条・同第120条の2
相続人になるのが兄弟姉妹や甥・姪という独身の方の場合、いちばん必要な戸籍が広域交付の対象外になります。その分は本籍地の市区町村へ請求することになります。どこまで自分で集められるかは、無料相談で一緒に確認できます。
ステップ2の財産の書き出しは、紙とペンで十分です。通帳のコピーを集めるだけでも、後で手続きをする人の助けになります。
ステップ3は、一人で決めきらなくて構いません。相続人が誰になるかを確認したうえで、渡したい相手と方法を一緒に考えます。
7. よくある質問
この章でわかること 疎遠な兄弟・内縁の相手・寄付についてのよくある疑問
兄弟とは20年以上連絡を取っていません。それでも相続人になりますか
なります。疎遠かどうかは相続人になるかどうかに影響しません。連絡先が分からない場合、戸籍をたどって住所を調べる方法がありますが、ご自身で請求できる範囲は限られます。手続きのたびに連絡を取る必要が出てくるため、その負担を避けたい方は遺言を検討してください。
一緒に暮らしている内縁の相手に財産を残せますか
遺言を書けば残せます。逆に、遺言がなければ内縁の相手は相続人ではないため、財産を受け取れません。相続人が誰もいない場合に特別縁故者として請求する道はありますが、認められるかどうかは家庭裁判所の判断です。確実にしたいなら遺言を作ってください。
なお、住まいが賃貸で、あなたに相続人がいない場合には、同居していた内縁の相手が賃借人の地位を引き継ぐという定めがあります(借地借家法36条1項)。
借地借家法第36条第1項(抜粋)
居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、(略)その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。
ただしこれは住み続けるための仕組みで、財産を受け取れるという話ではありません。持ち家の場合にも使えません。財産を渡したいなら、やはり遺言が要ります。
お世話になった施設や団体に寄付したいのですが、できますか
遺言で指定すればできます。これを遺贈といいます。ただし、受け取る側に受入れの体制があるかを事前に確認しておくと安心です。不動産をそのまま寄付する場合は、受け取れないと言われることもあります。事前に相談しておくのが確実です。
相続人が誰もいない場合、財産は本当に国のものになるのですか
清算の手続きを経て、残った財産は国庫に入ります(民法959条)。ただし、いきなり国のものになるわけではありません。借金の支払いや特別縁故者への分与が先に行われ、それでも残った分が国庫へ入る流れです。
いま元気ですが、早すぎませんか
遺言も各種の契約も、判断力がしっかりしているうちに作るのが原則です。早すぎて困ることはなく、書き直しもできます。むしろ「そろそろ」と思ったときが適した時期です。
8. まとめ
- 独身でも相続人はいます。子 → 父母・祖父母 → 兄弟姉妹の順に決まります
- 兄弟姉妹が亡くなっていれば甥・姪が相続人になりますが、代襲は一代限りです
- 相続人が誰もいなければ、家庭裁判所の清算手続きを経て、残りは国庫へ入ります
- 法定相続人以外へ渡したいなら、遺言を書いておく必要があります
- 財産の行き先とは別に、手続きの担当を決める備えも要ります
まずはご自身の戸籍をたどって、誰が相続人になるかを確かめるところから始めてください。
あわせて読みたい
渡したい相手が決まっているなら、遺言の形式選びが次の論点です。
亡くなったあとの手続きの担当については、こちらにまとめています。
死後事務委任契約とは? 頼めること・費用・遺言との違いを見る
生前対策は何から始めればいいか? 目的と手段を整理するを見る
不動産がある方は、名義変更の期限もあわせてご確認ください。
相続登記の3年ルール、実際いつまでに何をすればいいのかを見る
判断に迷ったときは
「誰が相続人になるのか分からない」という状態のままで構いません。戸籍を一緒にたどるところからお手伝いします。準備するものは、特にありません。
相談だけで終わっても構いません。話してみて、いま何もしなくてよいという結論になることもあります。
岩田司法書士事務所では、初回60分のご相談を無料でお受けしています。松江市・安来市・出雲市・米子市を中心に、島根県・鳥取県全域に対応。オンライン相談で全国からのご依頼も承ります。
お電話:0852-28-0336(平日9:00〜18:00/土日も事前予約により対応可能)
参考にした公的資料
- e-Gov法令検索「民法」第887条(子及びその代襲者等の相続権)
- e-Gov法令検索「民法」第889条(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
- e-Gov法令検索「民法」第890条(配偶者の相続権)
- e-Gov法令検索「民法」第900条(法定相続分)
- e-Gov法令検索「民法」第951条(相続財産法人の成立)
- e-Gov法令検索「民法」第952条(相続財産の清算人の選任)
- e-Gov法令検索「民法」第957条(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
- e-Gov法令検索「民法」第958条(権利を主張する者がない場合)・第958条の2(特別縁故者に対する相続財産の分与)
- e-Gov法令検索「民法」第959条(残余財産の国庫への帰属)
- e-Gov法令検索「民法」第964条(包括遺贈及び特定遺贈)
- e-Gov法令検索「民法」第1042条(遺留分の帰属及びその割合)
- 裁判所「相続財産清算人の選任」



